加納朋子の「掌の中の小鳥」の中にこういうフレーズがある。
そこに山があるから、登る。そこに不可能なことがあるから、挑戦する。そんなことは別に英雄でもなんでもない。彼らはみんな、自分勝手で傍若無人でわがままだ。馬鹿馬鹿しくて..."できる、できないゲーム"というものを題材にした話の中の一節である。うれしくなるくらい、共感するフレーズだ。
この本も加納朋子の「ななつのこ」や「魔法飛行」と同じく、短編が連なり一つの長編になっている。そして、その中で一貫して流れているのは、タイトルにもなっている「掌の中の小鳥」というテーマだ。
ある男が、小鳥を手に持ち、相手に聞く
「この鳥は飛ぶか?」
相手が「飛ばない」と答えれば、小鳥を放し、「飛ぶ」と答えれば、小鳥を握り殺すのだ。
相手はそれに対し、こう答えた。
「その答えは、君の掌の中にある。」
私がとても大好きなWEBの「この9本の指で
」という話を読んで、何故だかこの話を連想した。
掌の中に謎を抱えて、「できるか、できないか」、と自問自答する時、「その答えは君の掌の中にある。」という声がいつも聞こえる。「できるか、できないか」、それを決めるのは私以外の誰でもない。
もちろん、「できること」より「できないこと」の方がずっと多いのだけれど。
「今は、できないけど、いつか、できるかもしれないね。」