2016-02-03[n年前へ]
■「小保方さんと若山教授」と「コミュ力と若い世代への期待」
小保方さんの回顧録がベストセラーになっているらしい。小保方さんを担ぐ意見は全くもって理解できなかった。しかも、科学教育業界にそういう意見が多く、かなりビックリした。…けれど、あの事件が起きた流れは、3つのことから、とても納得できるようになった。
納得できるようになった理由のひとつは、「リアル・クローン」という若山教授の実兄が書いた本を読んだこと。この本は、STAP騒動の遙か前の話を書いたもの。「リアル・クローン」でも(若かりし)若山教授は(ハワイを舞台にして)いくつかの問題に巻き込まれるのだけど、それは英語力の不足から「当然の主張」をしなかったためと感じられた。そしてまた、ある種の経験(自分自身が「そんなことはできない」と思われることを信じて成し遂げた経験)を持つ若山教授なら、「怪しいと感じられることをする若い人」に対して批判的なことは言わないようにする・受け入れるようにするだろうな…と感じられた。
(納得できるようになった)理由の2番目は、STAPの当時、小保方さんのインタビュー音声(20〜30秒あたりから)を聴いたこと。なるほど、これはとても自然で印象的な「コミュ力・自己主張力」がある。こういう切り返しができる人に一目おくようになる気持ち・流れは、とても良く理解できる。
そして、理由の3番目は、神戸理研が次世代の可能性を要求していた…と聴いたこと(お酒を飲みつつ聴いていたので全く正確ではないけど)。
これだけ条件が揃えば、けれど「若い世代への期待」とか「コミュ力の不均等」なんて普遍的にいつでも起こることだけど、こういう事件は起きるよなぁ…と納得するに至った。舞台背景を踏まえて、あの登場キャラクターを集めたとしたならば、STAP事件は必然(もしくはかなりの高確率)で起こったような気がする。そしてまた、「教育」という未知の可能性に期待を掛ける(そして性善説で動く)業界で、小保方さん支持の奇妙なバイアスが強かったことは、それは必然だったのかもしれない…と思う。(小保方さんを、コミュ力や可能性以外で支持する気持ちは、今も全く理解できないけれど)
2016-02-19[n年前へ]
■『フランス国立図書館 体感する地球儀・天球儀展』は面白い!
今日から五反田のDNPミュージアムラボで始まった、BnF × DNP ミュージアムラボ 『フランス国立図書館 体感する地球儀・天球儀展』を観に行った。とても、個人的にとてもさまざまな視点から面白かった(素晴らしかった)ので、取り急ぎ簡単なメモ書きをしてみることにする。
遙か昔から、広い宇宙の中に丸い地球が存在する、ということは周知の事実だった。「平らな地球」なんていう考え方は、少なくともヨーロッパ的世界観から言えば、19世紀に作られた伝説で、すでに地球は丸いと、多くの人が経験的に知っていた(海の水平線の向こうに船が消えるときのようすや、月食時に月が三日月になるようすなどから、当然のごとく丸い地球は認知されていた)。
空に浮かぶ星空は、(太陽や惑星を除けば)丸天井のように相互の位置関係を変えず、一年周期で巡ってくるように見える。その中に丸い地球が囲まれているらしい…というわけで、当然のごとく(丸い地球を描いた)地球儀と(周囲に浮かぶ星空を固定的に描いた)天球儀という一対の存在が生まれる。17世紀、ヨハネス・フェルメールが「地理学者」や「天文学者」に描いたのは、そんな地球儀と天球儀だった。…とはいえ、地球と宇宙の関係を、もう少し具体的な模型として表した「アーミラリ天球儀」のような存在は、いわゆる天球儀と地球儀の間を繋ぐ存在として不可欠のものである。
さて、『フランス国立図書館 体感する地球儀・天球儀展』は、大日本印刷(DNP)がフランス国立図書館(BnF)の地球儀・天球儀コレクションを3Dデジタル化したものだ。具体的には、回転ステージの上に(台座から外した)地球儀や天球儀を載せて、それを配置を変えつつデジカメで(1台のカメラに対して左右におよそ80度の角度で配置された点光源下で、おおよそ500枚ほど)撮影し、それらの画像をステレオフォトメトリック的に三次元座標や色を復元したようだ。ちなみに、情報復元に用いられるカメラの撮影画角は、照明とカメラの位置関係(と対象物が球形状であること)を考慮して、(地球からしてみると)緯度経度にしてプラスマイナス20度弱程度の領域が用いられていた。つまり、(その程度の画角の)かなりの重複を含む500枚程度の画像群から、3次元的な画像を時でたるアーカイブしたものである。
地球を囲む星空は、天球儀という「外側と内側をひっくり返して眺める形態」で表現するのは不自然極まりない。そこで、今回は、ヘッドマウントでスプレイであるHTC VIVEを使った5分弱の展示を行っている。これはとても素晴らしい。地球を包み込む星空を、球として外側から眺めるのは、やはり不自然極まりない。だから、今回の展示は、このVR展示を眺めるためだけに見に行っても良いと思う(ただし、上下方向と左右方向の遠近感の違いが一致しておらず…おそらくレンダリングソフトのアルゴリズムに単純な問題があるようにも思われた。ついでに言うと、HMD展示の近くにある、大画面ディスプレイを使った両手でのジェスチャー認識を必要とする展示は、ユーザーインターフェイス的に最悪なので、改善するか・もっと単純だが有効な展示に入れ替えるべきだ)。
(展示自体とは全く関係無い部分で)とても驚いたことが、(地球儀や天球儀を台座から取り外してデジタルカメラで撮影する)500枚という枚数だ。作業ビデオを観ていると、回転ステージに載せての撮影においてずいぶんと手作業が多ように見え、(偏見100パーセントで書くと、長時間の労働を決して好まないようにも思える)フランス国立図書館の学芸員とともに長時間の撮影時間を要するように思われた。こうした展示には現れていないものの、そうした撮影時間を可能にしたビジネス的な契約もとても興味深かった。
何はともあれ、JR五反田駅から徒歩五分ほどの距離で、完全予約制でじっくり・ゆっくり眺めることができて、そして無料の展示会なので…興味ある人はぜひ行ってみると良いと思う。本当に素晴らしい展示会だと思う。
2016-02-20[n年前へ]
■フェルメールが描いた「地球儀」「天球儀」をペーパークラフトで作ってみよう!?
昨夜、五反田DNPミュージアムラボで開催中のBnF × DNP ミュージアムラボ 『フランス国立図書館 体感する地球儀・天球儀展』を観ました(フランス国立図書館 体感する地球儀・天球儀展』は面白い!)。これは、これまでの歴史の中で、さまざまな貴重な「地球儀や天球儀」を大日本印刷(DNP)がデジタル・スキャニングして、それらの3Dデータをさまざまな方法で展示するとともに、オリジナルも並べて眺めることができる。…たとえば、17世紀のオランダ画家ヨハネス・フェルメールが「地理学者」や「天文学者」で描いた「地球儀」や「天球儀」を眺めることができる…という素晴らしいものでした。
その展示が、あまりに新鮮で楽しかったので、今日はこんなことをしてみました。まず、DNPがスキャンしたデジタルデータを3D的に(WEBブラウザ上で)眺めることができるフランス国立図書館(BnF)のデジタルアーカイブサイトGallicaにアクセスします、するとブラウザを介して、自分のコンピュータの中に(DNPが作成した)デジタルデータが保存されます。このデジタルデータを使って、たとえば、フェルメールが描いた「地球儀」や「天球儀」を正六面体のペーパークラフトとして、自分の掌の上に乗せて眺めることができるようにしてみました。ペーパークラフト作成用PDFはこちらです。*(「組み立ててみたよ!」という奇特な方がいらっしゃいましたら、組み立てた写真を「展示用」に送って頂けると嬉しいです。)
ちなみに、フランス国立図書館(BnF)のデジタルアーカイブサイトGallicaでのWEB表示では、地球儀や天球儀の3次元形状も(その3次元データが使われている効用をWEB表示上で識別することは困難ですが)用いられています。そこで、フェルメールが描いた地球儀の形状を3次元的に眺めてみると、たとえば右のようになります。紙を貼り合わせて作ったことによる、表面の凹凸などが手に取るように感じられるかと思います。
つまり、Gallicaからは3次元的な形状や色に関するデジタルデータを手に入れることができるわけです。それらのデジタル・データを使えば、たとえばヘッドマウントディスプレイやデジタルプラネタリウムでバーチャルリアリティ表示をして眺めることもできるでしょうし、フルカラー3Dプリンタを使うなら、オリジナルと似たようなものを自分の手元に複製品として作り出すこともできることになります。…さてさて、「色々やってみたい!」と思いませんか?**
*テクスチャの座標変換は”ざっくりと”行ったので、適切な位置でない部分もあるかもしれないですが、正六面体として表す程度には問題無いと思います。キューブマッピングするテクスチャデータを幾何学変換して、正二十面体展開による精密バージョンのペーパークラフトなどを作ってみるのも、面白そうですね。
**このデータを使って3Dコンピュータグラフィクスレンダリングした結果は「天球儀」宇宙に浮かぶ「ホンディウスの地球儀」になります。
ライクスミュージアムの「作品画像は自由に使っていいよ。うちはオリジナルがある」という話。…だけど、将来は違うんじゃないかな、と思ってる。作品”画像”データが遙かに詳細にできる数年先の未来、多分「作品”画像”」は強く流出防止管理される。(twitter)
「数年後のWEB美術館の細かな実装方法」に個人的な興味がある。微細な三次元形状やSV-BSSRDF程度なら、数年後には測定することができるようになっているだろう。その時、それをWEBで表示する実装は「どうやるだろうか?」 (twitter)
ひとつは(データ圧縮や必要部分送信といった細かい方法はさておき)3DデータとSV-BSSRDFをクライアントに送信し、デバイスやインタラクションに応じてクライアント側で表示するというやり方だ。しかし、この方式は… (twitter)
しかし、この方式は「3次元構造や見た目を復元するに十分な情報をローカル保存することが可能」となる。数年後の未来には、そのデータがあれば、(それが中国か世界のどこかはわからないけれど)出力できるプリンタもあるだろう。すると… (twitter)
…そんな時代に、ライクスミュージアムは、「データは自由に使っていいよ」戦略をとるだろうか。それとも、(おそらくどこかの企業が提供するだろう)囲い込みクライアントソフトを使い、クライアント側にデータが渡らない表示方法をとるだろうか?(twitter)
2016-02-21[n年前へ]
■「天球儀」宇宙に浮かぶ「ホンディウスの地球儀」
五反田DNPミュージアムラボで開催中のBnF × DNP ミュージアムラボ 『フランス国立図書館 体感する地球儀・天球儀展』で展示されていたデジタルデータを操作できるようになったので(参考:フェルメールが描いた「地球儀」「天球儀」をペーパークラフトで作ってみよう!?)、今日は宇宙に輝く「星座を描いた天球儀」空間の中で、ぼんやりと浮かぶ「ホンディウスの地球儀」のさまを、レンダリングして眺めてみることにしました。
かつて、天に浮かぶ星空は、(人間が観察する程度の時間レンジなら)その位置を全く変えないことから、神に近い「完全」な「球」な世界だと考えられていたと言います。それに対して、人間が暮らす世界は完全からはほど遠く、だから『地球には(球とは形状的に大きな違いがある)山や谷といった凹凸がある』と考えられていたといいます。…そんな歴史背景も踏まえて、こんな動画を眺めてみると面白いかもしれません。
2016-02-26[n年前へ]
■ネフェルティティ胸像のKinect 3D盗撮…真実は「3Dレプリカを撮影したデータ」
ベルリンの美術館で展示されている「ネフェルティティの胸像」を、ドイツ人アーチスト2人がコッソリMicrosoft Kinectを美術館に持ち込んだ上で隠し撮りし、ネフェルティティの胸像の3Dデータをクリエイティブ・コモンズ・ライセンスで公開したというニュースが流れている。しかし、その一方、「Kinect使って盗撮スキャンしたって絶対ウソだ!」という話も流れている。…これはもちろん、自分たちでKinectで3Dデータを撮影したというのは「ウソ」に違いない。アーチスト達が公開している「盗撮撮影のようすを写したビデオ」を眺めた上で、「彼らがアーティストがホントに自分たちで撮影(3Dデータ取得)した」と信じられる人は…少ないはずだ。
この元データ、最初は「美術館の許可の元にフラウンホーファー研究機構の文化財用3DスキャナシステムCultLab3Dでスキャンしたもの(スキャンの様子)が、(美術館の許可の元に)公開されたか、あるいは、フラウンホーファー研究機構もしくは美術館から流出したもの」だと考えた。…しかし、3Dデータ自体を眺めたり・関連リンク先を眺めると、今回の3Dデータは(2011年のreplica Workshop of the National Museums of Berlin で限定100個配布された)3Dスキャンして3Dプリントした複製品を、さらにDAVIDの3Dスキャナで形状測定したデータが人の手を経て流れている可能性が高いように思われる。理由のひとつは、オリジナル形状と今回の3Dデータを比較してみると、今回の3Dデータは2011年のreplica Workshop of the National Museums of Berlinで配布されたレプリカの方に形状が近いということである。そして、もうひとつの理由は、3D複製のコピー、つまり孫コピーなら、その流出を妨げるルールは(おそらく)無いだろうというものである。