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1999-01-10[n年前へ]

宇宙人はどこにいる? 

画像復元を勉強してみたい その1

 知人から「自称UFO写真」というのものが冗談半分(いや100%位か)で送られてきた。その写真はボケボケの画像なので何がなんだかなんだかわからない。そこで、ぼけぼけ画像を復元する方法を勉強してみたい。UFOは冗談として、画像復元において進んでいるのは天文分野である。そこで、このようなタイトルなのである。もちろん、画像復元の問題は奥が深すぎるので、じっくりと時間をかけてみる。今回はMathematicaを使って試行錯誤を行った。

 ボケ画像を復元するには、ボケ画像がどのように出来ているかを考えなければならない。そこで、ごく単純なぼけ画像を考えてみる。まずは以下の画像のような場合である。

左の点画像が右のようにボケる
画像:1
画像:2
 右の点画像が何らかの理由で右の画像のようにボケる場合だ。焦点のボケた写真などはこんな感じだろう。例えば、これはレンズの焦点合わせがおかしいカメラの画像だと思ってみる。そのカメラで風景を撮るとこのようになる。
本来、左のような風景がボケて右の写真のようになる。
画像:3
画像:4
 偶然、写真にカメラが写っているが、偶然である。別にそのカメラが焦点がボケボケといっているわけではない。今回、やりたいことは右上の写真(画像:4)を元に、左上の写真(画像:3)を復元したいということである。

 画像:1のような点画像が、画像:2のような分布のボケ画像になるとすると、次のような関係が成り立つ。

(式:1) 画像:4 = 画像:3 * 画像:2

画像:1のような点画像が画像:2になるなら、それを参照すれば、画像:3のような点画像の集合がどう
ボケるかは計算できる。つまり、それが画像:4になる。ここで、*はコンボリューションを表している。
 よくある信号処理の話で言えば、画像:2はインパルス応答である。といっても、これはごくごく単純な場合(線形シフトインバリアントとかいろいろ条件がある)の話である。まずはそういう簡単な場合から始めてみる。

 このようなごく単純な場合には

(式:2) 画像:3 = 画像:4 * (1/画像:2)

とすれば、画像:3を復元できることになる。

そこで、まずは単純な1次元データで考える。下の画像:5のようにボケる場合を考える。ここでは、ガウス分布にボケるようにしてある。

赤い線で表したパルスデータが水色で表した分布にボケる
画像:5
(式:1より) ボケ画像 = オリジナル画像 * ボケ具合
であったが、* すなわち、コンボリューションは
逆フーリエ変換(フーリエ変換(オリジナル画像) x フーリエ変換(ボケ具合))
と表すことができる。つまり、周波数領域で掛け算をすれば良いわけである。
左がボケ画像、右がその周波数領域(フーリエ変換)
画像:6
画像:7
 右のボケ画像の周波数表示を見れば低周波数の量が多いのがわかる。結局、このモデルではボケると低周波数を増やすことになる。逆に(式:2)では高周波数の量を増やすことに相当する。だから、Photoshopなどの「シャープ」というプラグインはラプラシアンを用いて、高周波を増やしてやることでボケ低減を行っている。それほど、不自然ではない。しかし、そう近い画像復元ができるわけでもない。

 それでは、試しに適当な1次元データをつくって、画像:6とコンボリューションをとってやり、ボケさせてみる。

左が原画像、右が画像:6と画像:8のコンボリューションをとったボケ画像
画像:8
画像:9
 画像:8のパルスデータは、画像:9ではボケてしまい、判別不能である。そこで、

逆フーリエ変換(フーリエ変換(画像:9) / フーリエ変換(画像:7))

= InverseFourier[Fourier[Image8] / Fourier[Image6]]; (*Mathematica*)

とやると、次のデータが得られる。

復元されたデータ
画像:10
 これがインバースフィルターによる画像復元の方法である。FIR(Finite InpulseResponse)フィルタなどだろう。ところで、

(式:2) 画像:3 = 画像:4 * (1/画像:2)

を見るとわかるが、画像:2が周波数領域で0になる点があったりすると、計算することができない。また、0に近いとむやみな高周波数の増幅が行われて使えない。

 そこで、この方法の修正として、ウィーナフィルターなどの最小平均自乗誤差フィルターがある。これにも多くの不自然な条件のもとに計算される(らしい)。しかし、infoseek辺りで探した限りでは、ウィーナフィルターを用いた画像復元の標準であるらしい。

この方法は先の逆変換に対して、次のように変形されたものである。Mathematicaの表記をそのまま貼り付けたのでわかりにくいかもしれない。

Noise ノイズのパワースペクトル
Signal 信号のパワースペクトル
Boke ボケる様子のインパルス応答
Conjugate 複素共役
BokeData ボケ画像
ResData1 計算した復元画像

Boke1 = (Boke^2 + Noise/Signal)/Conjugate[Boke]; (*Mathematica*)
ResData1 = InverseFourier[Fourier[BokeData] / Fourier[Boke1]]; (*Mathematica*)

である。Noise/SignalはS/N比の逆数であるから、SN比の大きいところではインバースフィルターに近づく。また、インバースフィルターの計算不能な点が消えている。

 これを使って復元してみたのが、次のデータである。

ウィーナフィルターを用いた復元
画像:11
 他にも、いろいろ変形っぽいものがあるが、とりあえず、1次元での練習はここまでにして、2次元で画像復元を行ってみる。

 まずは、ボケのフィルター(PSF=PointSpreadFunction(どのようにボケるかを示すもの)、2次元のインパルス応答)である。

ボケのフィルター(インパルス応答)
画像:12
 それでは、画像をボケさせる。右のボケ画像が全体的に暗いのは左とレンジが表示の違うからである。同じレンジにすると真っ白(真ん中辺りはちょっと灰色)になる。
左がオリジナル画像、右はボケた画像
画像:13
画像:14
 それでは、インバースフィルターを用いて画像を復元させてみる。
復元した画像
 うまく再現できている。今回はノイズも混入していないしPSF(PointSpreadFunction)もわかっているのだから、復元できて当然である。他の射影フィルタ、最大エントロピー・フィルタ、一般逆行列法、SVD法等については今回はまだ挑戦してみていない。
 その他線形の画像復元法をいくつか調べたが、ウィーナフィルターやインバースフィルターとほとんど同じような物が(素人目には)多かった。そこで、ウィーナフィルタなどとはやり方がかなり異なるものについて、いずれ挑戦してみたい。

 関係はないが、ウィナーと言えばサイバネティクスが思い浮かんでしまう。当然、ロゲルギストが連想されるわけだが、文庫本か何かで岩波版と中公版の「物理の散歩道」が安く売り出されないのだろうか?売れると思うんだけど。新書版は高すぎる。

 宇宙人はどこにいるか? そういった話は専門家に聞いて欲しい。わからないとは思うが。

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 さて、ここからは、1999.01.24に書いている。シンクロニシティとでも言うのか、今回の一週間後の1999.01.17に
日本テレビ系『特命リサーチ200X』で

地球外生命体は存在するのか?( http://www.ntv.co.jp/FERC/research/19990117/f0220.html )

という回があった。何とこの回のコメンテーターは先の専門家と同じなのだ。偶然とは面白いものだ。

1999-12-27[n年前へ]

恋の力学 三角関係編 

恋の三体問題

 今回はもちろん、

の続きである。前回は、恋の力学を二体間の単純問題に適用したが、今回は複雑系の入門編である三体問題に適用してみたい。二体間の単純問題から三体問題になることで、現実問題に近くなる。また、物語性も大幅にアップする(当社比)。

 その物語性のいい例があるので、簡単に紹介しておく。小山慶太の「漱石とあたたかな科学」講談社学術文庫の第七章に面白い話がある。- 「明暗」とポアンカレの「偶然」 - である。漱石が、明暗の中でのモチーフにしている「ポアンカレの説明する偶然」について、

  • ラプラス -> ポアンカレ -> 漱石
という流れが考察されている。そしてまた、同様な繋がりにある三体問題についても、考察を行っている。
「明暗」の中での登場人物
  1. 津田
  2. お延
  3. 清子
達がくりひろげる物語を三体問題になぞらえて考察しているのである。そして、漱石が書くことのなかった「明暗」の物語の先を推察しようとしている。その三体問題に解はあるのか、そこに偶然は作用しているのか、あるいは偶然により、解はどのように姿を変えるのか、などである。そして、その終わりは「明暗」の津田のつぶやき「偶然?ポアンカレのいわゆる複雑の極致?なんだかわからない」という言葉で締めくくられている。

 前回の「二体間の単純問題」というのは、「無人島で男と女が二人きり」という舞台設定である。現実にはあり得ない。あぁ、しまった。こう書くと、まるで今回の「三体問題」は「無人島で男二人と女一人」という舞台設定に思えてしまう。これだって現実問題としてあり得ないような気がしてしまう(関係ない話ではあるが、「無人島で男二人と女一人」という舞台設定で始まるジョークは「アメリカ人なら男同士が殺し合い、イギリス人なら紹介されるまで口をきかないから何も起きず、フランス人なら片方は恋人で片方は愛人になり問題は起きず、日本人ならホンシャにどうしたらいいか訊く。」というオチだったように思う。うーん、言い返せない。)。

 だが、都会という砂漠が舞台であると思えば、東京砂漠に「男二人と女一人」、あるいは「男一人と女二人」といったような舞台設定は無理がないだろう。そう舞台は東京砂漠ということにしておこう。

 それでは、考察を行ってみることにする。まずは解析の条件である。「男」と「女」に関する「恋の力」は前回と同じく、

  • 「恋の力」 = 「相手の魅力」 * 「二人の間の距離ベクトル」 / 「二人の間の距離スカラー」
という力である。これに加えて、「同性に対する反発心」を今回は導入する。
  • 「同性に対する反発心」 = 「相手の魅力」 * 「二人の間の距離ベクトル」/ 「二人の間の距離スカラー」
である。そして、「恋の運動方程式」に「同性に対する反発心」を加える。それが
  • 「恋の力」-「同性に対する反発心」 = 優柔不断度 * 「恋の加速度」
である。この「恋の運動方程式」を拡張した式を、「恋と嫉妬の運動方程式」と呼ぶことにする。また、「男」と「女」のどちらを一名にするか悩むところだが、「女」にしておく。現在の日本の「男」と「女」の比率からしたらそちらの方が自然だろう。また、モテモテの「男」というシチュエーションを考えたくないのである(シャクなので)。

 それでは、以下に計算結果をグラフにして示してみる。まずは、「女」「男1」「男2」全員が同じ資質を持つ場合である。この場合、「三すくみ」状態に陥る。

  • 「女=赤」  位置=0, 速度=0,魅力=10,優柔不断度=10
  • 「男1=黒」 位置=5, 速度=0,魅力=10,優柔不断度=10
  • 「男2=青」 位置=-5, 速度=0,魅力=10,優柔不断度=10
さんすくみ状態

 この「女」を中心にして、「男」達が身動きが出来なくなった状態はよく見かけると思う。ねるとんなどでよく見かける風景である。ただし、この状態が発生している理由は「男1」と「男2」そして「女」の魅力が全く同じ状態であるからだ。

 ほんの少しでも「男1」と「男2」に有利な点があれば、この状態は一変する。次に示すのは「男1」が「男2」よりも1%だけ魅力がある場合である。その1%は理由は何であっても良い。例えば、偶然駅で出会ったなどでも良いだろう。

  • 「女=赤」  位置=0, 速度=0,魅力=10,優柔不断度=10
  • 「男1=黒」 位置=5, 速度=0,魅力=10.1,優柔不断度=10
  • 「男2=青」 位置=-5, 速度=0,魅力=10,優柔不断度=10
「男1」と「男2」の魅力のほんの少しの差が結果を左右する場合
 どうだろうか、「男1」が「男2」よりもほんの1%だけ魅力があるだけなのに、「女」は「男1」に惹かれてしまった。「男2」の悲しげな顔が目に浮かぶようである。そして、「男2」が立ち去っていく様子がありありとわかる。ガンバレ、「男2」。オレはオマエの味方だ...何か、私は「男2」に感情移入しているような気がするが、それは気のせいであろう。
 その一方、「男1」と「女」は幸せイッパイだろう。クヤシイくらいである。全く...

 また、「女」に大きな魅力があった場合には、先の「三すくみ」状態ではなく、見事な「三角関係」に陥る。これは、三すくみ状態を打破するのに十分な魅力が「女」にあるからである。

  • 「女=赤」  位置=0, 速度=0,魅力=20,優柔不断度=10
  • 「男1=黒」 位置=5, 速度=0,魅力=10,優柔不断度=10
  • 「男2=青」 位置=-5, 速度=0,魅力=10,優柔不断度=10
三角関係に陥る場合

 「女」を中心にして「男1」と「男2」が右往左往する様子が手に取るように分かる。これも世の中にはよくあるケースだろう。涙無しには見ることのできないグラフである。いや、もしかしたら、私の周りだけかもしれないが...

 もちろん、この場合も「男1」と「男2」の魅力にほんの少しでも違いがあれば、状態は一変する。今度は「男2」に「男1」よりも1%魅力が多くあるものとしてみよう。

  • 「女=赤」  位置=0, 速度=0,魅力=20,優柔不断度=10
  • 「男1=黒」 位置=5, 速度=0,魅力=10,優柔不断度=10
  • 「男2=青」 位置=-5, 速度=0,魅力=10.1,優柔不断度=10
リアルな三角関係に陥る場合

 「女」の心が「男1」と「男2」の間で揺れ動いている様子がわかると思う。「男」は「恋の力」と「同性に対する反発心の力」により、右往左往状態である。これぞ、リアルな三角関係である。この場合、果たして「男1」が勝つのか「男2」が勝つのか、よくわからない。どの時点で「勝ち」を決めるかで大違いである。また、「女」にすらその結末は予想できないのではないだろうか。「女」自身も相手を決めた本当の理由はわからないと思われる。
これは、もう複雑の極致であるが故に、何の予想もできないのである。

 ここまでの話はまるで天文学者が頭を悩ます三体問題のようである(いや、もちろんあちらが本家だが)。天文学者は天体の三体問題に頭を悩まし、我々は恋の三体問題に頭を悩ますのだ。どちらも、実にロマンチックである。

 こうして、今回の話の結末はよくわからないままになってしまった。やはり、ここは「明暗」の津田のつぶやき、

「偶然? ポアンカレのいわゆる複雑の極致?なんだかわからない」
という言葉で締めくくろうと思う。漱石は偉大である。

 さて、「恋の力学」シリーズはまだまだ続く。近日公開とはならないかもしれないが、次回作の予告をしておこう。

  • 恋の力学 運命の人編 - 偶然と必然の境界線 - (仮称)
である。

2001-12-24[n年前へ]

サンタが街にやってくる 

複数サンタクロースの巡回問題

 簡易に書き直した2011年版もあります。


 幼い頃、クリスマスの夜を清里の聖ルカ教会で過ごしたことがある。今では、「アイスクリーム」で有名になってしまった聖ルカ診療所の隣の教会だ。清里を通る小海線が蒸気機関車からディーゼル列車に切り替わった頃だった。私の住んでいた野辺山から一番近い病院がその聖ルカ診療所だった。今はどうなのか判らないけれど、あの病院の中の風景はまるで高原の療養所のようで(高原の診療所なのだから大して違いはないのだけれど)、とても不思議だった。

 さて、クリスマスの人気者と言えば、やはりサンタクロースである。世界中の子供達から待ち焦がれられ、プレゼントを配って歩くのだから、クリスマスイヴのサンタは大忙しなのである。一体、サンタクロースはどんな風にプレゼントを配って歩くのだろう、と思った私は「サンタクロースの巡回問題」について考察をしてみることにした。

 知らない人のために書いておくと、「巡回サンタクロース問題(TSP:TravelingSanta Problem)」というのは「巡回セールスマン問題(TSP:Traveling SalesmanProblem)」の特殊例である。そもそも「巡回セールスマン問題」というのは「n人の顧客の場所が与えられたとき、全ての顧客を一回ずつ経由して巡回する際に、移動距離が最小になる経路を求める。」という問題である。計算幾何分野で最もメジャーな話であって、カーマーカー特許などこれに関係するものである。つまりは、色々なものを配達する際には「配達経路を考えるのは実は結構大変なのだ」という問題なのである。
 

 これまで「巡回サンタクロース問題」を考えた人がいなかったか、と言うとそんなことはなくて、試しにinfoseekで"サンタ"AND"巡回"で検索すると、既に素晴らしい研究がなされている。それが

である。サンタクロースの行動について詳細な考察がされており、その中で「巡回サンタクロース問題(TSP:TravelingSanta Problem)」について触れている。考察大好き人種ならとても楽しめる内容である。
 

 そこで、そんなこれまでの「巡回サンタクロース問題」に関する研究を踏まえながら、「できるかな?」ではさらに「サンタクロース巡回問題」を考え、そして、できることであればサンタの隠された真実にさらに迫ってみようと思う。「サンタクロース巡回問題」の中には、サンタクロースの真実に近づく鍵が含まれている、と私は何故か感じるのである。

 まず、始めに問題提起をしてみよう。

 「果たしてサンタは一人なのか?」

 どのような事件においても(別に事件ではないが)、単独犯か複数犯かというのはとても重要な問題である。犯人が単独犯か複数犯かで証拠の指し示す意味は異なってくる。サンタは一人、と私たちは何故か思い込んでいるが、そんな先入観は正しい捜査のたまには捨てる必要がある。

 そこで、まずはサンタの歴史から調べてみると、Santaさんの起源クリスマスページ!によれば、サンタクロースの起源であるSt.Nicolausは西暦4世紀頃の人であるという。その頃の人口は現在よりもはるかに少なかった。それは、サンタの労働量がはるかに少なかったということだ。なるほど、この時代であれば、サンタは一人でも不思議ではないかもしれない。

 とはいえ、Santaさんの起源の中の色々なサンタの目撃情報を見ると、本当にサンタは一人なのか疑問を感じるのもまた確かである。色々なサンタが目撃されている、ということはサンタは実は複数犯の可能性が高いのではないだろうか?

 また、世界の人口は人口増加に示されている全世界の人口増加の様子を見れば明らかなように爆発的に増えている。ちなみに、そこに示されているグラフを対数軸にし、近似式を加えたものが以下である。
 

全世界の人口増加の近似グラフ

 St.Nicolausのいた西暦4世紀頃に比べて現在の人口は4桁、すなわち、10000倍に増えている(近似式によれば。ホントのところは知らない)。これでは、サンタクロースは年々仕事量が驚異的に増えていることを意味する。もし、サンタが単独犯であるとするならば、過労死はまぬがれそうにない。

 サンタの単独犯説に対する疑問は「サンタクロース巡回問題」からも示される。N人の顧客(今回の例ではN人の良い子供)が与えられたとき、サンタが計算しなければならない経路の総数は(N-1)!/2で与えられる。2で割っているのは「対称巡回サンタクロース問題(A家からB家間での距離と、B家からA家間での距離が同じという性質がある場合)」であるからだ。

 子供の家N=100までの場合の、サンタが計算しなければならない経路の総数(N-1)!/2を以下に示してみる。
 

子供の家N=100までの場合のサンタが計算しなければならない経路の総数
横軸=N、縦軸=計算しなければならない経路数

 どうだろうか、Nが少し増えると爆発的にサンタが計算しなければならない経路の総数(N-1)!/2が増えていくのがわかると思う。一軒多くなるだけで、ものスゴイ数の計算をしなければならなくなるのである。サンタが実際に配達して回るのも大変だが、その前に配達経路を決める計算量は実はもっと大変なのである。

 先の人口増加の割合をこれに加えるならば、「サンタが計算しなければならない経路の総数」は天文学的数字になることは明白である。

 そこで、私はやはりサンタ複数犯説が真実に近いと思うのである。サンタ複数犯説が正しいとするならば、ッ実はこの「サンタクロース巡回問題」は遥かに容易に解くことができるようになるのである。

 それでは、複数サンタがいるときの「サンタクロース巡回問題」を考えてみよう。サンタが複数のm人いる場合を考える≠ニA「サンタが計算しなければならない経路の総数」はm*(N/m-1)!/2で示される。
 一例として、サンタが1,2,10人の場合を示してみる。
 
 

複数サンタがいるときの
子供の家N=100までの場合のサンタが計算しなければならない経路の総数
横軸=N、縦軸=計算しなければならない経路数
黒=サンタが一人
緑=サンタが二人
紫=サンタが十人

 このグラフからサンタが複数いる場合と、単独の場合とで巡回経路を考える手間が全然違うのがわかるだろう。サンタが2人いると、計算量は半分になるのではなく、ものすごく少なくなるのである。

 実際の巡回においての仕事量は、サンタがm人いれば1/mになる。しかし、その前準備はサンタがm人いれば((N-1)!/2)/(m*(N/m-1)!/2)分の一になるのだ。簡単に言えば、メチャクチャ楽になるのだ。サンタが一人では事実上サンタがプレゼントを配ることは不可能だけれど、複数犯であれば容易にプレゼントを配ることができるのだ。

 このように「複数サンタクロース巡回問題」を考えることにより、サンタは複数いることが明らかだと私は思うのだ。

 ただこれだけでは、不十分だ。全世界の子供達も年を経るに従って、爆発的に増えている。サンタが複数いるにしても、それでもやはり大変だ。サンタ達の人数も爆発的に増えていかなければ、とてもじゃないがやってられないことだろう。

 それを解決する一つの答えはこうだ。「子供が増える割合に従って、サンタも増える」と考えるのだ。子供が一人増えると、サンタも一人増えるのだ。そうすれば、何の問題もない。子供が一人現れると、サンタも一人増えるのであれば何の問題もなくなる。

 ところで、「子供が一人現れると、サンタも一人増え、サンタの数が子供と同じ比率で増えていく」ということは、子供たちがいずれサンタになるという考えが自然だとは思えないだろうか。そうだ、子供達がサンタになるのだ。子供達が大人になって、そしてサンタになるのだ。

 もしかしたら、それはサンタという名前ではないのかもしれない。普段は他の名前で呼ばれているのかもしれない。けれど、クリスマスだけはサンタという名前になるのだ。電話ボックスで着替えるちょっと情けないスーパーマンのように、クリスマスイヴだけは彼らは変身するのだ。

 こうして、サンタ達は子供の枕元にやってくる。むかし子供だったサンタ達が子供達の枕元にやってくる。そして、夢を見ている子供達が起きてしまわないように、そっと枕もとにプレゼントを置く。

 サンタなんかこれまで私の枕元には来なかった、という人たちも多いのかもしれない。けれど、きっと、そんな人たちもまたサンタになっていくのだろう、そして、その時、本当にサンタがいる、ということに気づくのだろう。
 

2002-03-16[n年前へ]

何と、女性は宇宙であった。 

今の宇宙は「熟女」なのだ

 私の職場には「オレは女性は絶対年上が良いと思うね」と断言する人達がいる。その一方で「自分より年下でなければ人じゃないスよ」という、「それは人間として如何なモノか」と問いたくなるような新入社員一派もいる。

 ある日、何かの打ち上げでビールを飲みながら、そんな「熟女vsロリ」大論争を聞いている時、私はふと思ったのである。あれ?女性の「色っぽさ」ってどんな色なのだろう?色っぽさって、そういえば何色なんだろう?ちょっと眺めてみたい気がするな〜。
 それに…、その女性の「色っぽさの色」は年を重ねると、どんな風に変化していくのだろう?「色っぽさ」はどんなカーブで成長していくのだろう?と、そんな風に思った私は、今回「女性の色っぽさ」が何色であるか、そしてそれは女性が年を重ねるにしたがってどう変化していくかを調べて、眺めてみることにした。

 これまでも、「できるかな?」ではさまざまな抽象的なもののイメージ(=画像)をネットワーク上から多数集めそれらの色分布を調べることで、それらの抽象的なもののイメージ(=印象)を目に見える形にしてきた。だから、ある程度は「色っぽい」というのがどんな色だかは想像がつく。例えば、下は「心の色はどんな色?」で調べた「笑顔・童話・心・エロ」の色である。
 

「心の色はどんな色?」で調べた「笑顔・童話・心・エロ」はこんな色

 こんな風に、ネットワーク上から多数の画像を集めれば、抽象的なものであっても「目に見える色」にすることができる。ましてや、女性の色っぽさなどは、もちろんもとより「色っぽい」というくらいだから、「目に見える色」にするのは簡単なことだ。いつもと違うのは、女性が年を重ねるにしたがって「色っぽさ」がどう変化していくかを調べるので、ちょっと定量的に扱ってやらなければならないだけである。

 そこでまずは、HiraxNetMosaicMakerに多数の画像の「色の平均値」を出力するウィンドーを付けたてみた。

色の平均値(Lab)出力ウィンドーが付いた"HiraxNetMosaicMaker"

 そして、いつもと同じように「GuruguruImage+Iria+HiraxNetMosaicMaker」トリオでさまざまな女性の画像を収集し、その「色っぽさ」を調査することにしてみた。ネットワーク上からいつものようにゴッソリ集めた画像は全部で6種類である。まずは、年齢に応じた女性の呼び名である

  1. 幼女
  2. 少女
  3. 熟女
  4. 老女
という四種のイメージだ。「少女」と「熟女」の間を何て呼べば良いか判らなかったので、その二つの間はずいぶんと離れてしまった。しかし、そもそも「少女」や「熟女」が何歳くらいだかはよく判らないので今回の第一次調査ではこのままにしておきたい。そこをハッキリさせると、「むきーーー!」って怒る人も多いだろうし…。

 また、上の四つのような年齢だけではなくて、さらに「何らかの属性が付加されている」

  1. 女子大生
  2. 淑女
という二つのイメージもさらに調査してみた。「二十歳前後の問を修めている女性=女子大生」の「色っぽさ」と、「品位のある、りっぱな婦人(新明解国語辞典)=淑女」の色っぽさを調べてみるのである。この二つがあまりに「色っぽい」という結果が出るようであれば、今回の調査方法の妥当性が疑われる、ということである程度のエラーチェッカーになるわけだ。

 さて、早速調査した結果を眺めてみることにしよう。下の表が色んな女性の「色」と「色っぽさ」を示した結果である。ちなみに、ここで「色っぽさ」というのはa*a+b*bを示している。つまり、どれだけ「色っぽい」かを示す数値である。
 

色んな女性の「色」と「色っぽさ」
La*b*色っぽさ
幼女79.51.41.54.21
少女76.02.33.920.5
熟女76.73.84.635.6
老女74.32.93.923.6
女子大生76.91.63.414.1
淑女79.32.33.215.5

 そして、この数値を見ながら、下のLab色空間とそこに配置した「笑顔・童話・心・エロ」のイメージを眺めてみよう。すると、例えば熟女の「色」がa*=3.8,b*=4.6と群を抜いて高く、「心」度も高いが「エロ」度も高い、となるのである。そして、その結果「色っぽさ」は他の倍以上の値を示しているのだ。そう、熟女が一番色っぽいのである。先の「オレは女性は絶対年上が良いと思うね」という一派が大喜びしそうな結果が出てしまったが、別に私は彼らからワイロをもらっているわけでないのである。
 

Lab色空間とそこに配置した「笑顔・童話・心・エロ」のイメージ

 次に、これらの女性の「色っぽさ」をそれぞれ相当する年齢位置に配置して、女性の「色っぽさ」の年齢カーブを示してみたものが下のグラフである。

 すると、生まれてそれほど時間が経っていない幼女は実に「色っぽくない」が、年を経て少女を過ぎる頃にはやがて色づいてくることがよく判る。そして、熟女となる頃には、まさに「熟した女」としか言いようがないくらい、その「色っぽさ」は最高潮に達するのである。そして、さらに年を重ねると、「色っぽさ」は薄まるが、それでも少女よりはまだまだ色っぽい、という事実が目に見える形で私たちの前に姿を現すのだ。
 

「女性の色」を調べることにより、女性の「色っぽさ」のカーブを調べてみたもの

 また、このグラフの女性の「色っぽさ」のカーブを試しに二次関数で近似してみると、

「色っぽさ」=-0.015 x (年齢)^2 + 1.4 x (年齢) + 2.3
となる。試しにこれをhiraxの「色っぽさ」成長近似関数(暫定版)と呼ぶことにしよう。この式さえ知っておけば、再び飲み屋で「熟女vsロリ」大論争が勃発した折りには、この式を片手に、「きみいくつ?えっ、にじゅうごー!?自分より年下でなければ人じゃない?それは違うよ。少なくとも君が45歳くらいまではね。」と冷静にアドバイスしたりすることができるわけだ。

 ところで、このグラフ中の「女子大生」と「淑女」を眺めてみると、平均的な女性の「色っぽさカーブ」から大きく外れて「色っぽくない」ことが判ると思う。そう、学問に打ち込む女性も淑女も「色っぽい度」は低いのである。当たり前である。エラーチェッカーとして入れた「女子大生」と「淑女」の調査結果からも、今回の調査方法も世間のあり方も間違っていないことが見てとれるのである。
 

 また、今回多数採集した「幼女・少女・熟女・老女」をそれぞれ平均化してみた「色」を下に示してみた。これが各女性達の「色っぽさ」=「色」の変化チャートなのだが、あなたはこの中のどの色に「色っぽさ」を感じるだろうか?
 

女性達の「色っぽさ」=「色」の変化チャート
左から「幼女・少女・熟女・老女」の色
幼女     少女    熟女   老女

 さて、こんな「女性の色っぽさ変化チャート」を眺めていると、先日発表された「あの研究報告」を連想してしまう人も多いに違いない。そう、先日米ジョンズ・ホプキンズ大学の2人の天文学者が約20万個の銀河の光を全て平均化した結果、すなわち「宇宙の色はこんな色」と発表したあれである。「多数の何かを集めて平均化して、そのものの色を目に見える形にする」という方法論も、そしてそれがちょっとした遊び心でやるというところも、今回の話とよく似た(だけど大違いの)あの研究報告である。

 あの研究報告の「宇宙の色」と今回の「女性の色っぽさ」ではそれを求める方法もよく似ているが、驚くべきことに何とその結果もうり二つなのである。ちなみに、下が彼らが報告したIIIE gammaを用いて変換した場合の「宇宙の色」の変化チャートである。ビッグバンから今日、そして遙か未来までの宇宙の色の変化を示したものだ。
 

III E gammaを用いた「宇宙の色」の変化
ビッグバンはまだまだ青いが、今日の宇宙はまさに熟女の「色っぽさ」である

 そう、先に示した女性達の「色っぽさ」=「色」の変化チャートと瓜二つなのである。女性の色の変化は「宇宙の色」の変化そのものなのだ。「元始、女性は実に太陽であった」と平塚らいてうは「青鞜」の創刊の辞に書いたが、それは素晴らしく正しかったのである。そして、女性は太陽どころではなくて、何と、女性は宇宙であったのだ。そして、今日の宇宙は(私の勝手な偏見から言えば)ちょうど熟女の「色っぽさ」なのである。今の宇宙はまさに「熟れ頃」なのである。こんな私の研究成果をもしも平塚らいてうに知らせることができたら、一体彼女は何と言うだろうか?う〜ん、平塚らいてうが何というかは判らないが、ルパン三世の峰不二子であれば、きっとこう言うに違いない。

…男ってバカね。

2002-05-29[n年前へ]

おめでとー -> はるか 

 電子情報通信学会の業績賞、広澤春任・平林久が - 電波天文衛星「はるか」の開発とスペースVLBIの実現 - で獲得。おめでとー。お祝いだー。(リンク



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