2007-12-03[n年前へ]
■「夕焼を描いた古典絵画」と「火山噴火」の研究とターナーの「戦艦テメレール号」
絵画に描かれた夕焼けの「赤み」と火山噴火の関係を研究したもの。「赤み」は絵画をスキャンした画像のRGBピクセル値から(R/G)と算出したという。「それどこのRGB?」という声が聞こえてきそうだけれど、この色々なものを繋げる遊び心がとても面白い。時の流れの中で起きたことを、絵画の中に見ようとする試みは何だか楽しい。
この研究を見て思い浮かべた絵画が、ターナーが描いた「解体のため錨泊地に向かう戦艦テメレール号」(1838)だ。帆船である船艦テメレール号を、ジェームズ・ワットの蒸気機関で動く蒸気船が曳いている。帆船は、解体地へいく途中である。古い時代の象徴である帆船が去り、蒸気船が新しい時代を牽引している。船艦テメレール号に目をやると、背景は夕焼けに見えてくる。帆船の時代が終わったことを感じさせる。また、蒸気船に目を向け、蒸気船を主役に見るとき、背景はまるで朝焼けのように見えてくる。産業革命を迎えた時代、新しく躍動する時代の幕開けを飾る絵のように、まるで見えてくる。
時代、経済や科学や文化や生活や火山の噴火や…色んな歴史を辿ってみると、そこにあるの既に過去完了形になった古いことだ。けれど、自分が知らないことだから、新鮮に感じる。
2009-10-21[n年前へ]
■「ジェームズ・ワット」のひとつの横顔
山田大隆「心にしみる天才の逸話20―天才科学者の人柄、生活、発想のエピソード (ブルーバックス) 」から。
蒸気機関の改良と普及で、功なり名を遂げたワットだったが、やがて彼を追い抜く若者が出てきた。ウェールズの鉱山機械技師の息子、トレビシックである。(中略)ワットが本質的な恐怖を感じたトレビシックの着想は、高圧蒸気機関をつくろうというものだった。
彼はトレビシックに対してさまざまな嫌がらせを開始する。(中略)「殺すぞ」と書かれた嫌がらせの手紙も数通におよび、用心棒がトレビシックに直接暴力をふるうこともあった。
ワットのトレビシック潰しに見られる、競争者を徹底的に抹殺する陰湿なところは、一時代を実力で築いた実力者にしばしば散見される。
ところで、ニューコメン、ワット、トレビシックと続く流れを見てつくづく思うのは、旧技術は後発の新技術に発展解消するのではなく、旧技術のまま朽ち果て、それを破壊する新技術がつぎの時代を築くということである。これが、技術の歴史において過酷なまでにつらぬかれている真実である。
2015-03-28[n年前へ]
■一時閉館間近の「梅小路蒸気機関車館」に行ってみよう!?
(梅小路乗車機関車館:The Umekoji Steam Locomotive Museum )が改装に向けて一時休館する…というので、春の散歩を兼ねて行ってみました。立ち並ぶ蒸気機関車に乗り込むと、機関車を操る部品の存在感に圧倒されたり、巨大な鉄の塊の質感に魅了されたりします。
意外に面白かったのが、(鉄分高い人たちにとっては当たり前そうですが)機関車を格納する車庫の上部に、機関車の煙突部分に対応する「煙突」があることでした。まるで焼き肉屋の卓上に備え付けられた排煙用の煙突のように、止まった機関車の位置に合わせて、天井に煙突が備え付けられています。
かつては、蒸気機関車が車庫に前進で入った場合でも、バックしつつ車庫に入った場合でも排煙することができるように、煙突は前後2箇所に取り付けられていたと言います。今では動くことがなくなった機関車が佇む車庫の、機関車の上に備え付けられた煙突は(安全上の理由などから)ずいぶん数が減っているといいます。
梅小路蒸気機関車館の改装後、京都鉄道博物館と名前を変えた後の建物の車庫には煙突が付いていないようで…少し寂しく感じます。