2004-03-15[n年前へ]
■巨乳ビジョン・シンドローム
「人の視覚は7メガピクセル」編
デジタルカメラの高画素化が急速に進んでいる。定価が数十万円ほどにもなるデジタルカメラであると、使われているイメージセンサの画素数は10メガピクセル(=一千万画素)近くになるし、定価が数万円の普及価格帯のデジタルカメラでも数メガピクセル(=数百万画素)であるのが普通である。そして、最近だと携帯電話に付属しているカメラでさえ2メガピクセル以上のイメージセンサを使っているものすらある。35mmの銀塩フィルムが40メガピクセル弱だから、ハイエンド・デジタルカメラの解像度はその数分の一にまで達しようとしている、ということになる。
そんなふうに、デジタルカメラの高画素化は進んでいるわけだけれど、そもそも私たち自身の「目」というのは一体どの程度の画素数があるものだろうか?最近のデジタルカメラと比べると、私たちの目には一体どの位の画素があるのだろう?デジタルカメラと同じ、「メガピクセル」を単位にするならば、人間の「目」というのは何メガピクセルに相当するのだろうか?
実は、人間の場合、デジタルカメラのイメージセンサの画素に相当するのが、目の中の網膜上の錐体(色を感じ、網膜の中心部に多くある)である。その数はおよそ700万個弱ほどもある。つまり、デジタルカメラと同じように言えば、人間の目は7メガピクセル相当ということになる。ということは、最近の数十万円のデジタル一眼レフカメラでさえ、やっと人間の目と同じ程度の画素数に達した程度なのである。普段生活をしている中では、人間の「目」の画素数なんて気にすることはそうそうないだろうけれど、人間の「目」はやっぱりスゴイのである。そして、そんな人間の「目」と同じレベルになりつつあるデジタルカメラもスゴイものなのだ。
ところで、『普段の生活の中では、人間の「目」の画素数なんて気にすることはそうそうない』と書いた。確かに、人間の「目」の画素数や配置、つまり、人間の「目」の画素、網膜上の錐体の数や配置などを気にすることはまずないかもしれない。けれど、それを意識しなくても実は目にしている機会は多いのである。
それは、例えばこんな縞模様を目にするときだ。片目をつぶって、もう片方の目だけでこの下の縞模様を眺めてみよう。すると、色の付いていないハズの白黒の縞模様の上に、うっすらと色の付いた縞模様が重なって見えてくるハズである。もしも、最初のうち判りにくいようであれば、片目をつぶったまま見る距離を変えてみれば判りやすいかもしれない。縞模様がウネウネと動く様子が見えると思う。
これは、「Brewsterの色」と呼ばれる色模様で、網膜上にある「赤、青、緑」の各色を感じる錐体の配置と「白黒の縞模様」が干渉してモアレが発生することで知覚される偽色なのである。
こんな模様というものは実は結構街中に溢れている。例えば、エスカレーターの階段部分やフェンスの金網、あるいは、マンガの効果線など、こういった規則的な模様を普段の生活の中で目にすることは実はとても多い。そんな時、私たちの目はカラフルな「Brewsterの色」を見ていることになる。見てはいるのだけれど、ただそれを意識しないことが多い、というだけである。逆にこんなモアレを意識してしまうようになると、私たちの7メガピクセルのイメージセンサが景色の中の縞模様と干渉して発生してしまうカラフルなモアレは本当に街中に満ちあふれていることに気づくのである。
例えば、規則正しい模様の服というようなものはとても多い。そして、そんな服の上でさえワタシのまなこ(心の眼かもしれないが)はBrewsterのモアレを見いだしてしまうのである。そして、規則正しい模様の服の上にさえBrewsterのモアレを見いだしてしまうようになってしまうと、これが何とも恐ろしい副作用がもれなくオマケで付いてくるのだ。それは、「巨乳ビジョン・シンドローム」という恐ろしいオマケなのである。
その「巨乳ビジョン・シンドローム」の症状は、下の二枚の写真を見てみると判りやすいのではないか、と思う。まず、左は「規則正しい模様のある生地でできた服」を着ている女性である。そして、右の写真はそんな「規則正しい模様のある服」を眺めたときに、意図せずしてモアレが発生してしまった様子を示している。ほとんど同じ二枚の写真ではあるが、よ~く眺めてみれば服の部分にモアレが発生してしまっている様子がわかるハズだ。しかも、ある特定の一部分であることも判るだろう。
を着ている女性 | モアレが発生すると… |
…そう、規則正しい模様の服を着ている人を眺めた場合には、凹凸の激しい部分で特に顕著にモアレが発生してしまうのだ。そして、そのモアレはその凹凸具合の等高線(と同じようなもの)を示してしまうのである。もっとハッキリ言ってしまうならば、規則正しい模様の服を着ている女性なんかを眺めた場合、胸の部分の凹凸具合の等高線が意図せずして見えてしまうのである*。日夜地図を作り続けている国土地理院もビックリのバスト地図(凸凹等高線入り)が幸か不幸か見えてしまうのだ。しかも、これは凹凸の激しい部分でのみ顕著に認識されたりするがために、巨乳の等高線は容易に見ることができるけれど、微乳の等高線はなかなか見ることができない、というまさに「巨乳ビジョン・シンドローム」なのである。
残念ながら、私はオッパイ星人ではないので詳しいことは判らないけれど、真性のオッパイ星人達は生まれながらにしてこんな巨乳ビジョンのまなこ(眼)を身につけているに違いない。だからこそ、微乳の小胸さんではなくて、巨乳さんに引き寄せられていくのかもしれない。つまりは、オッパイ星人をオッパイ星人たらしめていたのは、こんな巨乳ビジョン・シンドロームだったのかもしれないのである。
そして、おそらく彼らの視力は私たちヒトに比べて遙かに高いハズだ。だから、単に規則正しい絵柄の服だけではなくて、例えば規則正しく糸で織りなされた服、すなわち、それが布製であればどんな服の上からでもこんな等高線モアレを見いだしてしまうに違いないのである。そして、その服を着ているものの胸の凹凸の等高線(もちろんその部分だけではないが)を眺めることができるに違いないのだ。
というわけで、最後に「オッパイ星人の視覚をシミュレートした画像」をでっち上げてみたのが下の動画である。これは、女性が着ている「服の持つ規則性=周期」を自動的に認識し、網膜の周期をその「服の持つ周期]近辺になるように変化させて、意図的にモアレを発生させてみたものだ。どんな模様であってもそれが「規則正しい模様を」である限りは、胸の凹凸の等高線がはっきりと見えてしまうことが実感できることだろう。
というわけで、規則正しい模様の服を着ている女性は周りの視線(オッパイ星人や幸か不幸か「巨乳ビジョン・シンドローム」にかかってしまった人間)に要注意、というのが今日の結論なのだ。そして、邪悪な心を持つ技術者が、「巨乳ビジョン・シンドローム」と同じようなアルゴリズムで動く「巨乳ビジョン・カメラ」を開発しないことを、今はただただ祈るばかりなのである。
2004-07-12[n年前へ]
■コインには2つの面がある
未来を眺めるためには、まずは過去を眺めるべき。未来は可能性の宝庫だが、過去は知識の倉庫だ。だから、今日は古い記事を眺めてみよう。
MITの最初のハッカー達の書いたプログラムは、その言語なんか関係なく、とにかく完全で、美しいものだったんだ。努力に努力を重ねて뒰ꓢ믅뻥꒲꒿꒵ꆣ쎯꒬뢫꓆ꓢꆢそれ以上改善する余地はまったくないほどにね柴田 ただ、あまりにも短く最適化してしまうと、人がそれを見たときに理解しにくいという難点がありますよねそれはそうだよ。でも、それを理解しようとする努力は、必ず報われるんだよ。努力して理解できるようになったときに、何かを学ぶことができるんだ。だから、コインには2つの面があるということさSteve Wozniakちなみに、インタビュアーである当時の柴田文彦氏は某有名事務機メーカ勤務のエンジニア。つまり、Macintoshが影響を受けたAltoを作った企業系である(現在の私の)ライバル会社のエンジニア。そして、この文章中で語られている「appleの高解像度モード」がClearTypeやCoolTypeやグレーフォント、FreeType 2にほぼそのままの形で繋がっている。「appleの高解像度モード」が作られたのが'76年のこと。他の技術はいずれも'90年代中盤以降のこと。一番早いものでさえ、20年近く後のこと。やはり、過去は可能性の元となる知識の巨大倉庫だ。
それにしても、このインタビューの原文の台詞を知りたい。
2004-10-24[n年前へ]
■HMD+WindowsCEのウェアラブルPCが59800円
ヘッドマウントディスプレイとWindows CE機がセットになったウェアラブルPC登場!で、値段は59800円ナリというニュース。ヘッドマウントディスプレイは、解像度640×480ドットのフルカラー表示に対応。60cm前方の13インチモニタに相当する画面サイズ。 from 趣味と物欲
2005-01-01[n年前へ]
■「あいだみつを年賀状」と「手抜き年賀状」
送りつけてみたくなる「あいだみつを年賀状」(from 3年B組金八先生)を眺めながら、年賀状を作り始めました。例年のように、「届いた年賀状にのみ年賀状を出すシステム」を採用しています。このシステムは年賀状の作成作業が増大することがなく便利なのですが、「人間的にはいかがなものか」なのかもしれません。
今年は、白黒プリンタでの印刷なので、白黒版画つながりでエッシャーの「昼と夜」 - 夜から昼へ向かう鳥(酉年ですし)を「低」解像度(Resolution)で出力したイメージ - を採用してみようかと思ってます。
2005-03-11[n年前へ]
■読みやすい「文字」フォント
textfile.org経由で「Windowsでも綺麗なフォントを」眺めた。心根はMac大好き人間の私ではあるが、この手のフォント表示を見るたびに「綺麗」と「読みやすさ」は違うだろうなぁ、と思う。日本語フォントに対して、ClearTypeが無効となるサイズ指定を小さくしたり、ビットマップ・ファイルを外してしまったりすると、「綺麗」かもしれないけれど「読みやすく」はないよなぁ、と思う。
日本語文字はアルファベットに比べて非常に細かい。また、文字の特性上、縦方向の解像度が(横方向と同等以上に)高い必要もあり、ClearTypeのような技術はそれほど有効ではない。例えば、下に12pt.のSH G30-P・ARISAKA・MSゴシックで「高解像度」と表示したときの液晶の点灯状態(上列)と、それをグレースケール化したもの(下列)を示してみる。「デザインとして眺める画像」ではなく「文字」として読もうとする限りにおいては、ここで示したSH G30-PやARISAKAの(縦方向の)潰れは可読性を大きく損なってしまっていることがわかる。横線と横線の間がちゃんと空かずに中間調になってしまったり(読みやすさに必要なコントラストを得られなかったり)、それどころか隣り合った横線と横線がくっついてしまっていたりする。ClearTypeを適用するには、12pt.というサイズですら日本語の場合には(少なくとも縦に)細かすぎる。
もしも、文字の展開解像度を縦横同一で行わず、表示デバイス縦横の表示解像度に応じた縦横それぞれの解像度で文字を展開し表示するならば、(ClearTypeそのものではなく)ClearTypeのような技術を(大きい文字でない)日本語に適用するのも良いだろう。しかし(展開解像度が縦横同じである)現在のところは、デフォルトの「日本語の場合、非常に大きな文字にしかClearTypeなどは適用しない」という設定が至極真っ当だと思う。そして、小ポイント用のビットマップフォント、言い換えるなら小ポイント文字を作成する際の「フォントのヒント情報」のかたまりを使わないというのは、「読みやすさ」を考えるなら非常にもったいない話だと思う。 もちろん、「文字」でなく「単にデザイン」だと言うのであれば…、全く別だと思うが。