2011-10-06[n年前へ]
■”点と点を結んで行くと浮かびあがる”スティーブ・ジョブス
もう、二十数年前、大学生だった頃、こんな言葉を京都市近くに位置するある大学の学園祭で聴きました。
「数字がバラバラに書いてあって、その数字を順番になぞっていくと最後に絵ができる"Connecting Dots"ってパズルがあるじゃない? バラバラだったりしても、途中で間違っているように思えたりしても、それでも色々と続けていって…いつか最後に何か浮かび上がってきたりしたら、それで良いのかな?って、時々思ったりするの。その言葉を聞いて以来、「無数の点を無我夢中に辿る"Connecting Dots"というパズルは、何かのシンボルであるかのように感じられるようになりました。
今日は、ふとこんな"Connecting The Dots"を作ってみました。数百個の数字をてんでバラバラにばらまくプログラムを書き、そして、それらの数字をただひたすらにエンピツで繋ぎ・線で結び、数限りない数字をつなぐアニメーションを作成してみました。
そう、「自分の後ろを振り返ってみれば、そこには自分が通過した点がいつの間にか繋がっている」のです。
It was impossible to connect the dots looking forward when I was in college. You can't connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future.
あなたたちには、自分の進む先にある点たちを、前もって結ぶことなんてできません。あなたたちにできるのは、自分が進んできた道の後ろを振り返ってみると、そこに点が結ばれていた…ということだけなのです。だからこそ、通過する点たちがいつか何らかの形で結びついていくということを、あなた方は信じなくてはいけない・信じるべきなのです。
朝方にapple.com を眺め、感慨深い思いに襲われます。けれど、不思議に「悲しいという気持ち」よりも、「やれることを、やれるうちにやろうじゃないか」という気持ちにもなります。…それは"Stay Hungry. Stay Foolish."という合い言葉を聞いた時のような心地です。
"Stay Hungry. Stay Foolish." It was their farewell message as they signed off. Stay Hungry. Stay Foolish. And I have always wished that for myself. Stay Hungry. Stay Foolish.
このアニメーション描画には、 Hongbo Fuらによる線画アニメーション・ビューアが用いられています。
2012-10-23[n年前へ]
■巡回セールスマン問題の答が描く「一筆書きアート」
一年ほど前、「数百個の数字をエンピツで結んでいくアニメーション」を作ってみました(”点と点を結んで行くと浮かびあがる”スティーブ・ジョブス)。
この"Connecting the dots"な一筆書きラクガキ…「散らばっているたくさんの点たちを結んでいく絵」は、ペン先が何回も・何度も同じような場所を往復しています。つまり、右往左往が繰り返される、あまり効率的でない「描き方」です。
もしも、たくさんの点が散らばっている時、それらの点を「一番効率的に」「最も最短で描く」にはどうしたら良いでしょう?…ということを考え始めると、それは「巡回セールスマン問題」という問題に変わります。
巡回セールスマン問題(じゅんかいセールスマンもんだい、Traveling Salesman Problem、TSP)は、都市の集合と各2都市間の移動コスト(たとえば距離)が与えられたとき、全ての都市をちょうど一度ずつ巡り出発地に戻る巡回路の総移動コストが最小のものを求める(セールスマンが所定の複数の都市を1回だけ巡回する場合の最短経路を求める)組合せ最適化問題である。
巡回セールスマン問題
"TSP ART"(=巡回セールスマン問題的アート)と画像検索すると、数多くの街を廻るセールスマンのように、たくさんの点群を結ぶという作業を、最も効率的に行った「たくさんの一筆書き」アートを見ることができます。画像の「濃い部分」に「”たくさんの点”」がばらまかれているようにした上で、それらの点を最も効率的に結んでいくのがTSP Artです(参考:TSP Art)。
この巡回セールスマン問題的アート(TSP Art)を描くのは結構大変です。何しろ、たとえば16階調で256×256の絵を描こうとすると、16×256×256…つまり1万048千576の点を「辺り一帯」にばらまいて、その1万048千576もの点を最も効率的に移動するにはどうしたら良いか?という超大規模な巡回セールスマン問題を解かなければならないからです。
しかし、巡回セールスマン問題的「一筆書きアート」は大変でありつつ、とても素朴で魅力的です。こんなラクガキ、何だか少し描いてみたくなりませんか?
2015-06-21[n年前へ]
■NP困難?な「点を結んでいくと絵が浮かび上がる」新ルールのコネクティング・ドット
点を結んでいくと(たとえば数字の順番にしたがって点を純に繋いでいくと)、次第に一枚の絵が浮かび上がってくる…コネクティング・ドットが好きだ。なぜかというと、意味なくばらまかれた点を、ひとつひとつ、今いる点から次の点へとただ辿っているうちに、いつの間にか何かしらのものが描かれていく、というのが人生そのものみたいで面白いからだ。
そんなコネクティング・ドットで、たとえば明暗の階調(グラデーション)豊かな絵を細かな場所ごとに表現しようとすると、ひとつの問題に行き当たる。それは、濃い部分は密集した線で描かれることとなり、当然のように、そうした部分には(線を繋ぐための)点が密集する。…すると、密度バラバラにばらまかれた点群は、それだけで「何が描かれているか」わかってしまう(下左図)。そして、それどころか、その点群を線で結ぶと、絵はわかりにくく・汚くなってしまうのだ(下右図)。
そこで、 Bob Bosch and Tom Wexler たちが考え・行った研究が When the Mona Lisa Is NP-Hard(モナリザがNP困難になる時)に紹介されている。彼らは、新たなコネクティング・ドットの「ルール」、「規則正しく配置された点群を、一筆書きしつつ通過しながら、目的の絵に一番似るような全景を描き出すルートで通っていく」というものを考えてみたのだ。たとえば、左下のような規則正しい「格子点」の上を、目的を思い浮かべながら描いていくと、右のような一枚の絵が浮かび上がってくる。
本当は、意味なくランダムに見える点群を、ただ目の前の次の点へと辿った結果として、一枚の絵が浮かび上がってくる方が(人生に似ていて)好きだ。…けれど、人によっては、自分の目標を心に描きつつ、無味乾燥とした格子点の上に、自分の足で何かを描いていこうとする人もいるかもしれない。そんな人の好みを考えると、こんなコネクティング・ドットも面白いかもしれない、と思う*。
* しかも、記事タイトルにもなっているように、そんな「描きたい画像に一番近い(格子点の)辿り方を見つける」ということはNP困難な問題で、そんな人生を計算通りにするのはおそらく不可能だろう、と考えてみたりするのも面白いと思う。