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1999-03-30[n年前へ]

ペットボトルロケット 

天まで昇れ

-天まで昇れ-

 先日、2月21日、糸川英夫が死去した。ロケットを研究し続け、日本のロケット技術を築き上げた人である。

ISAS(宇宙科学研究所)の歴史(http://www.isas.ac.jp/info/history/index-s.html)

 そこで、私たちが簡単に打ち上げることのできる、ペットボトルロケットについて考えてみたい。ペットボトルロケットは素晴らしい科学おもちゃだ。ロケットが大気中を飛ぶときと、宇宙空間を飛ぶときの原理の違いを的確に体現していると思う。それは、ペットボトルの中に水を入れてあることだ。ペットボトル中に水を入れることで、革命的ないくつかの効果があると私は思う。挙げてみると、こんな感じだ。

  • 空気と水の粘性の違い->水の方が長時間にわたり一定の噴出量にしやすい。
  • 気体(空気)と液体(水)の圧縮性、質量の違い->
    • 空気を噴出する場合には、ロケットの前後の圧力差が推進力を支配する。
    • 水を噴出する場合には、反作用力(運動量保存)が推進力を支配する。
水の質量は摂氏4度で1000kg/m^3である。気圧が変わっても温度が変わって(0-100程度なら)ほとんど変わらない。例えば0度の時999.9kg/m^3であり、100度で958.4kg/m^3である。
 空気のほうは温度が違うと結構違う。摂氏0度で1.293kg/m^3であり、100度で0.946kg/m^3である。もちろん、気圧が違えば、それに比例して体積は大きく変わる。

 結局、空気と水とでは質量が約1000倍違う。だから、ペットボトルロケットが後ろから水を噴出する場合には、空気の場合に比べて、1000倍もの反作用力を受けるのである。つまり、ロケットは1000倍の推進力を持つことになる。ただし、空気の場合には、ペットボトル中で数気圧分圧縮されているので、質量も数倍になる。したがって、正確には1000倍の数分の一ということになるだろう。

 逆に、ロケットの前後の圧力差を考えてみる。、空気の場合には、前後で数倍の圧力差が生じるだろうが(WEBで調べると5-7倍位が通常上限のようだ)、水の場合には前後での圧力差はほとんどないだろう。だから、水を噴出する際にはこれによる推進力はほとんど働かないだろう。しかし、空気を噴出する際にはこの圧力差によりロケットは進むことになる。真空中ではこの方法では推進力はほとんど働かない。

 こういった違いをもとに子供(といっても高校生位か)に宇宙でのロケットの原理を説明すると面白そうだ。これら推進力の違いは、とても大きいと思う。

 かつては、セルロイドを使った小さなキャップロケットの時代だった。今は、ポリエチレンテレフタラート製の大型ロケットの時代に変わった。

 今日は久しぶりに雪が降った。「雪は天からの手紙である」と言ったのは、雪を研究し続けた中谷宇吉郎だった。ならば、私たちが打ち上げるペットボトルは天へと届けるロケットだ。空へ高く届くように、私たちはそれを打ち上げ続ける。いつか、私たちのロケットは天へ昇る。

1999-05-03[n年前へ]

「私と好みが似てる人」 その2 

ログ解析の6ヶ月点検

 本サイトが公に公開されるようになってから6ヶ月経った。新車でも購入してから半年経てば、6ヶ月点検があるのだから、本サイトについても6ヶ月点検を行ってみたい。

 まずは、週別のアクセス量変動を挙げてみる。

1998/12/13-1999/4/24の週別アクセス量
Overall Accesses

 アクセス数は割に順調に伸びているようである。1999/02下旬辺りにネットワーク不調とログ解析失敗などによるデータ欠損が見られるが、それ以外ではほぼ線形に増加している。1999/4上旬に増加の傾きが変化しているのはinfoseekにページを登録したことによるものと考えられる。

 次に、時間別アクセス量である。以下に示すのは、1999/4/18-24の時間別アクセス量である。
 これを見ると、深夜3時位にアクセス数がぐんと減ることがわかる。深夜3時位に眠りにつく人が多いのだろうか。
 そして、早朝5時過ぎからアクセス数が増えていくことがわかる。5時過ぎくらいから活動を始める人も多いようだ。そして、昼の12時辺りにひとつピークがある。これは、企業の昼休み時間にアクセスしている人達によるものだろう。次に15時位に大きなピークがある。これは、何だろうか?まさか、おやつの時間ではあるまい。企業ユーザーが一服しているのだろうか?小さい18時辺りのピークも、企業ユーザーの就業時間の終わりを示すものと思われる。
 そもそも、こういった昼間の時間別アクセス数から見えてくるユーザーというものは、時間に縛られる企業ユーザーになってしまうのだろう。

1999/4/18-24の時間別アクセス量

 さて、次はアクセス数のサイトランキングである。ただし、ここでのサイト=IPアドレスであり、ドメイン解析は行っていない。したがって、同じドメインからアクセスがあっても、IPアドレスが異なれば違うサイトとして計算している。そのため、proxyを使っているような所が、ランクインしやすいということになる。もちろん、proxyを使っていれば、実際よりアクセス数は少なくなるわけだが、今回の比較においては、明らかに同じサイトと判断される分有利なのである。
 それでは、最近4週間分のトップ10を示してみる。

1999/3/28-4/24のアクセス量における週別サイトランキング
Rank4/18-244/11-174/4-103/28-4/3
1KyotoPneTMeshNet厚木阪大レーザー核融合研KyotoPneT
2東大情報システム工学研キヤノン裾野Hewlett Packerdキヤノン裾野
3セイコーインスツルメンツオーイーシーキヤノン裾野千葉大情報数理
4Fermi-lab岡山理科大 電子工学ホンダエンジニアリングPSINet
5OCN北大 電子科学研究所ベッコアメ福岡シチズン
6アスキーNTT PC-Com 諏訪鹿児島大 情報工学東北大加齢医学研
7明治大学総合情報ネットワークワコーデジタルアーツ生協インターネット大阪
8RICOHIIJ4U藤沢インターネット九州大学医 耳鼻咽喉科
9WEB静岡龍谷大情報NetworkSystem通商産業省InfoPepper府中
10KansaiMultimediaServiceOCN千葉館山アレスネットDTI熊本

 トップ1に4回中2回も位置しているのはKyotoPneTである。このサイトは京都周りのネットワーク総合体のようだ。色々集まっている分、アクセス数が多いのだろう。
 それでは、週別にコメントをつけてみたい。
3/28-4/3 医学関係が2つランクインしている。おや、九州大学医学部耳鼻咽喉科と言えば、私の一番大好きな「今日の必ずトクする一言」で有名な「バーチャル耳鼻咽喉科」と同じサブドメインである。
4/4-10 通商産業省は公益機関のランクインが少ない中でなかなか健闘している。阪大レーザー核融合研究所はこの2週後のFermi研究所と関係あるのだろうか?
4/11-17 MeshNetの厚木からアクセスされている方が一位である。個人のアクセスというのは非常に嬉しい。この週は個人の方が多い。喜ばしいことだ。
4/18-24 常連だったキヤノン裾野が消え、RICOHがランクインしている。このあと、WEBページは会社の顔色- WEBページのカラーを考える 2 - (1999.04.26) でRICOHのWEBのデザインに苦言を呈しただけに、反応が気にかかるところである。おやおや、ASCIIもランクインしている。

 それでは、3ヶ月前に「私と好みが似てる人」 - analog Windows版用のサブドメイン解析ソフトを作る- (1999.01.24) の時に調べたドメインランキングとの比較をしてみる(こちらは、ドメインランキングであって、今回のサイトランキングとは異なる。今回の場合、同じ人がアクセスしても、IPアドレスが異なれば、違う人としてカウントしていることになる)。

1: canon.co.jp (キヤノン)
2: sony.co.jp (SONY)
3: atr.co.jp (株式会社国際電気通信基礎技術研究所)
4: infocom.co.jp (日商岩井)
5: waco.co.jp (ワコービジネス)
6: odn.ad.jp (オープンデータネットワーク)
7: nttpc.ne.jp (ISP事業者向けネットワーク提供サービス)
8: att.ne.jp (日本AT&T株式会社)
9: saitama-u.ac.jp (埼玉大学)
10: kokushikan.ac.jp (国士舘大学)

 今回と共通してトップ10入りしているのはキヤノンとワコーである。前回も今回も技術系のサイトばかりである。私が技術マニアであるからしょうがないか。それこそ、「私と好みが似てる人」達なのだろう。

次は「できるかな」内の人気ランキングである。こうしてみると、

など、面白いものである。/dekirukana/java/を読んでいるのは「踊る大捜査線」をキーワードにして辿りついた方だろう。/dekirukana/snif/が人気があるのは、セキュリティー意識が高いせいか、あるいは好奇心が高いせいか、どちらだろうか?。
#reqs: %bytes:      last date: file-----: ------: --------------: ---- 4185: 18.07%: 99/05/15 07:49: /   13:  0.04%: 99/05/12 13:51:   /? 1855:  2.18%: 99/05/15 02:33: /dekirukana/java/ 1093:  1.24%: 99/05/15 07:38: /dekirukana/server/  839:  1.74%: 99/05/15 07:08: /dekirukana/snif/  789:  0.68%: 99/05/15 04:01: /dekirukana/dorae/  762:  0.58%: 99/05/15 02:36: /dekirukana/screensave/  633:  0.83%: 99/05/15 05:32: /dekirukana/photoshop/  623:  1.20%: 99/05/15 07:20: /dekirukana/whois/  577:  0.99%: 99/05/15 04:20: /dekirukana/1999/  543:  0.64%: 99/05/14 22:53: /dekirukana/tire/  501:  0.80%: 99/05/15 01:55: /dekirukana/digicame/  435:  0.52%: 99/05/15 00:51: /dekirukana/e55/  435:  1.22%: 99/05/15 02:23: /dekirukana/ufo/  427:  0.37%: 99/05/15 04:15: /dekirukana/ocilo/  392:  0.43%: 99/05/15 06:53: /dekirukana/screensave2/  373:  0.50%: 99/05/15 05:23: /dekirukana/fem2/  321:  0.63%: 99/05/15 02:49: /dekirukana/wavelet/  320:  0.56%: 99/05/15 05:28: /dekirukana/ekisyo2/  279:  0.32%: 99/05/14 22:30: /dekirukana/hamaphoto/  267:  0.37%: 99/05/14 23:25: /dekirukana/real97/  264:  0.36%: 99/05/15 02:28: /dekirukana/karaoke/  263:  0.16%: 99/05/15 02:25: /dekirukana/ocilo2/  260:  0.41%: 99/05/15 01:15: /dekirukana/moire3/  256:  0.81%: 99/05/14 21:07: /dekirukana/onkai2/  256:  0.44%: 99/05/15 01:48: /dekirukana/sacchan/  252:  0.29%: 99/05/15 05:52: /dekirukana/toolplus/  247:  0.24%: 99/05/15 03:02: /dekirukana/server2/  243:  0.63%: 99/05/15 00:17: /dekirukana/bunsukai/  216:  0.42%: 99/05/15 06:52: /dekirukana/haidi/  195:  0.06%: 99/05/15 00:24: /dekirukana/1999_2/  194:  0.41%: 99/05/15 04:05: /dekirukana/kamogawa/  186:  0.38%: 99/05/15 01:02: /dekirukana/bunpu/  185:  0.39%: 99/05/15 04:21: /dekirukana/ufo2/  185:  0.28%: 99/05/15 05:30: /dekirukana/ekisyo/  180:  0.38%: 99/05/15 07:42: /dekirukana/moire2/  171:  0.33%: 99/05/15 02:48: /dekirukana/wavelet2/  169:  0.17%: 99/05/14 20:48: /dekirukana/rocket/  164:  0.16%: 99/05/15 04:04: /dekirukana/dorae2/  160:  0.31%: 99/05/14 15:03: /dekirukana/probe/  155:  0.14%: 99/05/15 07:08: /dekirukana/tamago/  144:  0.20%: 99/05/14 21:53: /dekirukana/onkai/  141:  0.23%: 99/05/13 20:15: /dekirukana/  126:  0.26%: 99/05/15 01:34: /dekirukana/harddisk/  124:  0.18%: 99/05/15 02:03: /dekirukana/watari/  122:  0.29%: 99/05/14 20:49: /dekirukana/webcolor2/  121:  0.59%: 99/05/15 01:29: /dekirukana/moire/  118:  0.10%: 99/05/14 14:08: /dekirukana/hori/  118:  0.18%: 99/05/14 09:21: /dekirukana/bunsukai2/  116:  0.10%: 99/05/14 21:05: /daily/9904.html  105:  0.19%: 99/05/15 07:34: /dekirukana/favicon/  105:  0.24%: 99/05/15 06:29: /dekirukana/log9905/   99:  0.20%: 99/05/14 20:49: /dekirukana/webcolor/   98:  0.05%: 99/05/15 07:08: /dekirukana/photoshop2/   79:  0.38%: 99/05/14 09:58: /index_e.html   61:  0.01%: 99/05/13 18:27: /dekirukana/fem2/math/   46:  0.01%: 99/05/12 19:50: /dekirukana/fem2/math/indexlnk1.html   42:  0.07%: 99/05/12 19:53: /dekirukana/fem2/math/indexlnk4.html   37:  0.03%: 99/05/12 19:51: /dekirukana/fem2/math/indexlnk2.html   33:  0.08%: 99/05/13 18:28: /dekirukana/fem2/math/indexlnk3.html   32:  0.02%: 99/05/14 14:22: /dekirukana/toolplus/readme/readme.html   31:  0.05%: 99/05/12 19:54: /dekirukana/fem2/math/indexlnk5.html   25:  0.06%: 99/05/15 00:22: /dekirukana/harddisk/math/   21:  0.03%: 99/05/12 19:49: /dekirukana/onkai/math/ 4070: 55.84%: 99/05/15 05:52: [not listed: 34 files]
 こうしてみると、興味が発散している作者であることがよくわかる。
 次にログ解析をするのは、おそらく半年先だろう。 その時、健やかに育っているのだろうか?

1999-11-13[n年前へ]

やっぱり、ウニが好き ! 

Dr.フラーはウニの夢を見るか?




 私は野球は特に好きでも嫌いでもないが、野球場でビールを飲むのは大好きだ。と、始めると

の間違いと思われるかもしれない。しかし、それは違う。今回は、ウニとドームハウスの共通点について、考えてみたい。ただ、かなりビールが脳みそにしみているせいか、少しドンデモ話になるかもしれない。そこは、「ビックエッグの力学」と共通である。

 私の中では、野球観戦と言えば、ビールだ。野球にはビールが良く似合う。そして、今現在も目の前にはビールがある。そして、寿司がある。といっても、スーパーで買った安物である。二つ合わせても1000円にしかならない。

「すし」と「うに丼」、合わせて1000円なり

 安物といっても、私の住んでいるのが港町だから安い、ということもある。何しろ、ほとんどのスーパーの魚売り場でイルカの肉なども置いてあるのだ。嘘ではない。ホントにホントである。私も、引っ越してきた当時はビックリしたが、本当である。アメリカの動物愛護団体が見たらびっくりの風景だろう。「イルカと人間はお友達」と言ってる人には見せられない風景だ。
 あまりおいしそうではないので、私はまだ実際に味わってはいない。しかし、地元の人の中には「よく食べる」と言う人もいる。いつか、挑戦してみたい。

 さて、上の写真で共通しているのはウニである。ウニと言えば、こんな姿をしている。

じっとたたずむウニ(リンク先は青森県営浅虫水族館)

 「海栗」と書いてウニと読むことが実に納得できる姿である。しかし、内面はもう少し違う。実は、ウニはドームにそっくりである。前回考えたドーム球場ではないが、ウニは実はドーム構造をしているのだ。「そんなことは当たり前じゃないか」と言う人もいるだろう。しかし、私はつい最近までそれを知らなかった。そもそも、骨があるとすら思っていなかったのである。

 もしかしたら、私のようにウニの内面を知らない人もいるかもしれない(そんな人はいない、という声も聞こえそうだが)。そこで、ウニの骨の写真を示してみる。下に示すのが、色々なウニの骨だ。

色々なウニの骨

実物はとてもきれい。日本古来の木工細工のような穴がとてもきれいである。

 これは少し前に、宇宙科学研究所の黒谷氏の実験室を見学(ただ邪魔しただけという気もするのであるが)する機会があり、そのとき頂いたものである。最初に見たときは、「目からウロコ」であった。まさか、あの針の山の下にこんな頑丈な殻が存在しているとは、思わなかった。
 写真ではわからないかもしれないが、骨には小さな穴が極めて規則的に開いている。それが、日本古来のとても出来がいい木工細工のようである。光に透かしてみると、うっとりするようなきれいさである。内部に強い光源でもおけば、プラネタリウムやミラーボールみたいに細い光線を放射する、きれいなアクセサリーができそうだ。
 ところで、「何故、宇宙科学研究所の実験室にウニが?」と思われる方は、WEBで検索でもかけてみると良いかもしれない。「宇宙生物学」という面白い実験分野があるものだ。
 例えば、無重力の中で生物がどのような挙動を示すか、などの研究をしたりするらしい。飛行機にのってそういう実験を繰り返すわけである。遊園地のフリーファールやバンジージャンプ、そして、ジェットコースターでさえ、駄目な私には地獄のような研究分野である。

 さて、上の、ウニの骨の姿はまさにドームそのもの、とは思えないだろうか? そう、似ているのだ。 そっくりなのだ。試しに、このドームなどを見れば納得できるだろう。

富士山頂のレーダードーム

 これは、富士山頂の厳しい環境を耐えるために、極めて安定なドーム構造が用いられているのだ。三角形のパネルが組み合わさるドームハウスは極めて頑丈である。ウニも、同じように頑丈なドーム構造の骨格を持っているのである。レーダードームは富士山頂で頑張っているが、宇宙科学研究所のウニは色々なところへ連れて行かれて、厳しい実験に耐えているのである。

 こういった、ドームと言えば、R.バックミンスター・フラー博士のドーム理論だろう。フラー博士とドームハウスのスケッチ図を示してみる。

Fuller博士とドームハウスのスケッチ

この姿はまるで富士山頂のドームみたいである

 よく、環境適応性の高さを謳うことの多いドームハウスであるが、もしかしたら、ウニがその祖先であるかもしれない。もしかしたら、フラー博士は「海の中でじっとたたずむウニの夢を見て」ドームハウスを思いついたのかもしれない。
 アメリカ人であるフラー博士がウニを食べたとは思えない、という人も多いだろう。それは確かにその通りである。しかし、フラー博士はかなりの変人である。変人ならば、ウニを食べまくっていたとしても、おかしくはない。
 普段は「何を馬鹿な発想だ」と思うことだろう。しかし、ドーム球場の野球を見ながら、脳みそがビールとウニで満たされてしまうと、「そうだ、フラー博士はウニが大好きなのだ!そうに違いない!」と確信してしまうのだ。
 仮に、フラー博士がウニに影響されていないとしても、ウニはフラー博士がドーム理論を考えるずっと太古の昔から、ドーム構造をしていたのである。ならば、「元祖はやはりウニなのだ!」と言ってしまって良いだろう。太古から厳しい環境を耐えつづけてきたウニは、今や宇宙へ飛び出し、さらに厳しい環境の中で活躍しているのである。



2000-05-02[n年前へ]

モアレがタネの科学のふろく 

うれし、懐かし、学研の科学


 先日、友人夫妻で面白いものを見せてもらった。そこで、すかさずオネダリをして手に入れてきた。それが下の写真のものである。
 

6年の科学 1998年1号 トリックトランプ「マル秘」超魔術13

 これは学研の科学の学習教材である。「科学の学習教材」というよりは、「科学のふろく」といった方が通りが良いかもしれない。この写真のものは「6年の科学 1998年1号 トリックトランプ「マル秘」超魔術13」である。これを私にくれた友人(妻の方)は「学研教室」の「先生」をやっているので、こういう面白いものを持っているのである。

 残念ながら、付録の一部だけで、中身が全部揃っているわけではない。それに加えて、本誌もない。そこで、手元にある材料からトランプトリックを想像しなければならない。しかし、その想像しなければならないところが、また面白いのである。手品の「タネ」を想像し、実際に検証できるのだから、楽しくないわけがない。

 こういう理系心をくすぐる、懐かしいものというのは色々ある。以前登場した、学研の電子ブロックもそうであるし、雑誌の「子供の科学」もそうだ。そういった中でも、この学研の科学のふろく(学習教材)はその最たるものだろう。こういった、科学の付録は学研のサイト内の

でいくつか眺めることができる。私が持っていた(すぐなくしたけど)ものもいくつか掲載されている。

 さて、今回の「6年の科学 1998年1号 トリックトランプ「マル秘」超魔術13」のネタ探しをしていると、面白いものを見つけた。それが下の写真である。何にも書いてないトランプに半透明シートをかけると、アラ不思議、ハートの5が現れるのである。
 

何にも書いてないトランプに半透明シートをかけるとアラ不思議
ハートの5が現れる

 この「魔法のトランプ」のタネはもちろん「アレ」だ。「できるかな?」にもよく登場してきた「モアレ」である。これまで、

という感じで「モアレ」を調べてきたが、それをネタに使ったトランプ手品なのである。私がモアレを考えるときには、違うものの「ネタ・Seed」として眺めることが多いのであるが、こういう手品の「タネ」として扱われているものを見ると、新鮮で面白い。

 このトランプの表面の模様を拡大してみるとこんな感じになる。これは「ハートの先端部分の拡大写真」だ。赤い線によるハーフトーンパターンが変化している部分(実はハートマークの先端部分)があるのがわかる。この模様は結構細かく、400線/inchくらいである。
 

ハートの先端部分の拡大写真

 このようなトランプに、黒い斜線が描かれた半透明シートをかぶせると、モアレが発生して模様が見えるわけである。下の写真が、トランプに半透明シートをかぶせたところである。半透明シートには実は黒い斜線模様が描かれていることがわかる。
 

このようなトランプに、
黒い斜線が描かれた半透明シートをかぶせると、
モアレが発生して模様が見える

 そして、トランプの模様と半透明シートの模様の間でモアレが発生して、その結果として「5」
の文字が浮かび上がっているのがわかると思う。

 このトランプのタネのような画像を自分でも適当に作ってみることにする。やり方はとても簡単である。ハーフトーン模様を作成して、模様を書いて、模様部分だけハーフトーンを変化させてやればいいだけである。そして、元のハーフトーンと重ね合わせてやれば、模様が浮き上がるのである。こういう細工をしないと読めない画像を使って、何か面白いことをできるかもしれない。
 

同じような画像の例
A ハーフトーンを作成する
B 模様を書いて、模様部分だけハーフトーンを変化させてやる
C AとBを重ね合わせるとアラ不思議(子供にとってはね)

 一応、モアレはデバイスに依存するか?(1998.11.20)の時のように今回も二つの画像の重ね合わせの時に、線形性が成り立つ場合と、成り立たない場合の比較をしておく。
 

上の画像の重ねあわせにおいて、線形性が成り立つ場合と成り立たない場合の比較
線形性が成り立つようにして
先のAとBを重ね合わせてみたもの
上の画像を平滑化したもの
線形性が成り立つ場合には、モアレが発生していないのがわかる
ちなみにこれが先のCを平滑化したもの
つまり、非線形性を持つ場合
この場合にはモアレが発生する

 今回の場合も当然、線形性が成り立つ場合にはモアレが発生しないのがわかると思う。今回のトランプ手品も、半透明シートとトランプの模様の間の重ね合わせの非線形性を利用していたわけである。
 この線形性と非線形性の重ね合わせの違いも利用してみれば、もっと新しい何か面白い手品やおもちゃのネタになるかもしれない。インクジェットプリンターの淡色インクと、濃いインクの違いを利用して何か面白いトリックはできないだろうか?

 さて、先の知人夫妻は共に「先生」である。なので、時折子供に「どうやって教えるか」という話になることがある。子供という「タネ」をどうやって育てていくか、という話である。子どもが人から言われたことでなく、自分で調べて何かを覚えるにはどうしたら良いか、などだ。もちろん、それは「先生」もまた同じである。人に言われたことを鵜呑みにするのではなく、自分で「実感する」のはむしろ子どもより「先生」の方が難しいかもしれない。

 私も先日あるメーリングリストで

「先々」のある(製造業に携わる)子ども・青年などわずかでしょう
という言葉を見てしまって以来、そういったことについて色々と考えてしまうことが多いのであるが、こういう「タネ」つながりについて考えているのも面白いかもしれないな、と思うのである。
 

2000-05-13[n年前へ]

ミウラ折りの落書き紙 

思ったことを折り込めて

 十年位前のことだったと思う、「知人の先生がこんなのを作ったんだけど、興味あるだろう?」と父が不思議な冊子を私にくれた。冊子と言っても、それは一枚の紙を折り畳んだ小さな小さなものだった。ちょっと面白い折り畳み方をされたその紙には、その折り畳み方の説明とその「折り畳み方」の応用が書かれていた。もちろん、その冊子の作者は宇宙科学研究所の三浦教授で、そしてその冊子の折り畳み方はあの有名な「三浦折り」である。

 三浦折りの折り目を示してみると、例えば下の図のようになる。一目見てわかるように折り目が直交していない。そのため、それぞれの折り目が独立でなく、全ての折り目が同期しているのである。言い換えれば、一つの折り目を開こうとすると全ての折り目が開いていくし、一つの折り目を閉じようとすると全ての折り目が閉じていく。だから、例えば、折り目の端っこと端っこを掴んでただ引っ張れば全ての折り目が開き、そして折り目の両端を縮めれば自動的にパタパタと折り畳まれていくのである。

 また、折ってみるとわかるのだが、この三浦折りは折り目が少しづつずれて重なるのである。折り目というのは厚みが他の部分に比べて厚いために、折り目が重なるとその部分だけがどうしてもかさばってしまう。しかし、この三浦折りであればそんな折り目が重ならないので、折り畳んだときにかさばらないのである。
 

三浦折りの折り目

 だから、太陽電池パネルなどをこんな三浦折りを使って折り畳むと、折り畳んだときにはかさばらないし、その展開や収納は隅と隅をただ引っ張ったり縮めたりしさえすれば良い、というわけで良いことずくめというわけだ。詳しくは、宇宙科学研究所のここ辺りを読んでもらうことして、参考までにそこの画像にリンクを張っておく。
 

2Dアレイ(2次元展開アレイ)システム
( http://www.isas.ac.jp/j/enterp/missions/complate/sfu/2dsa.htmlから)

 ところで、十年前に父からもらった「三浦折りの冊子」を捨てるはずはないから、部屋のどこかに隠れているとは思うのだけれど、何処かに隠れてしまっていて、見つけることができなかった。私の部屋が三浦折りのようになっていて、部屋の隅から隅までを全て引っ張り出すことができたら、きっとすぐにでも見つけられたのだろう。しかし、残念ながら私の部屋は三浦折りではないのである。だから、私の色々なモノや本が散らばった部屋に隠れている「三浦折りの冊子」はそう簡単に見つけられるわけもない。
 

 そういえば、ふと何かが心に思い浮かぶことも日頃よくあることである。しかし、思い浮かんだその時に書き留めておかないと、すぐに記憶の何処かに隠れてしまって忘れてしまうことも多い。これもまた、私の記憶が三浦折りだったらよいのだろうけれど、幸か不幸か私の記憶システムは三浦折りではない。私の記憶や考えたことが三浦折りのようにパタパタ開かれていくのも見てみたい気もするけれど、隠しておきたいような夢や気持ちもあるだろうから、やはり私の記憶システムが三浦折りでない方が良いのだろう。
 

 とはいえ、やはり後で思い出したいこともたくさんあるわけで、そんなことは思い浮かんだらすぐに何かに書き留めておかなければならないだろう。落書き帳か何かに、思い浮かんだことをすぐに書き留めておけば良いわけである。適当な落書き帳に書き留めれば、思い浮かんだことを忘れてしまっても安心である。
 しかし、頭に何かが浮かぶ瞬間というのは、時間や場所を選ばないだろうから、そんな落書き帳はいつも持ち歩かなければならないだろう。となると、いつも持ち運ぶためにはコンパクトでなくてはならないし、そんな落書き帳を広げる作業は簡単に素早くできなければ不便である。だとしたら、その落書き帳はまさに三浦折りを使うべきではないだろうか? というわけで、私は自分用の「落書き紙」をミウラ折りを使って作ってみることにした。

 というわけで、作ってみたのがこの「できるかな?」特製「落書き紙」である。折り畳んだ状態は三浦折り特有のちょっと不思議な重なり方になり、見た感じのデザインも割に良い感じだと思う。そして、これが「できるかな?」特製「落書き紙」折り畳みのようすである。

両端を動かすだけで、パタパタと自然に開いたり折り畳まれていくようすがよく判ると思う。
 
「できるかな?」特製「落書き紙」
 実際の大きさは掌にすっぽり隠れるサイズ。 裏表紙は表紙を裏返したデザイン。それは、考えたり思ったりしたことにはきっと表も裏もあるだろう、という気持ちの現れなのである。

 
 

 ここにPDFファイル化した「できるかな?」特製「落書き紙」を置いておくので、興味のある人はぜひプリントアウトして三浦折りを実際に試してみると面白いと思う。このPDFファイルは開くときにパスワードを聞いてくるが、"hirax.net"といれてやれば開くことができる。

ちなみに、この「できるかな?」特製「落書き紙」の表と裏を見てみるとこんな感じになる。裏表紙は表紙をそのまま裏返したデザインにしてある。それは、考えたり思ったりしたことにはきっと表も裏もあるだろう、そしてそれは表裏一体で単に裏表の関係なのかもしれない、という気持ちの現れなのである。
 
「できるかな?」特製「落書き紙」の表と裏
(表)
(裏)

 この「できるかな?」特製「落書き紙」の作り方であるが、まずこのPDFファイルを長手綴じで両面印刷をする。そして、上下左右マージンが不揃いであれば、端部を少し切り取る。実際に折り畳んだ後であれば、そのどの程度不揃いなのかがわかりやすいから、端部を切り取る(切り取らなくても良いが)のは一番最後でも良いだろう。
 そして、表の面の折り線に沿って、次の写真のように折り畳んでいくのである。
 

「できるかな?」特製「落書き紙」の作り方
1. まず、表面の折り線に沿って長手方向に折る。この写真で見えてるのは表の面。

2. 次に斜めの折り線に沿って、折り目をつける。こちらはただ折り目をつけるだけで、折り目の向きには意味は無い。
3. 2で付けた折り目を部分的にひっくり返しながら、全面を折り畳んでいく。
4. 「できるかな?」特製「落書き紙」のできあがり。

  さて、この三浦折りの「できるかな?」特製「落書き紙」は折り畳めばとても薄く小さいから、ポケットに入れていつも持ち歩いて、心に浮かんだことなどを書きとめて持ち歩くのに最適だと思う。そして、この落書き紙の裏や表に、思ったことの表から裏までを書き留める。そして、そんな思い・考えの切り抜き・断片、を小さく折り畳んだまま伝えたい人に手渡してみて、折り畳まれたもの達がその人の掌の中でパタパタと現れてくるのも、それはそれで不思議に新鮮な感覚だろう。例えば、ちょっと不思議な「三浦折りのラブレター」なんて、不思議でいい感じだと思うんだけれど… 駄目かなぁ?
 




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