hirax.net::Keywords::「少年」のブログ



2003-09-22[n年前へ]

「夕焼けこやけ」の茜蜻蛉(あかとんぼ) 

遠い彼方に見る陽炎

夕焼け
夕焼、小焼の、山の空
負われて見たのは、まぼろしか。

夕やけ、小やけの、赤とんぼ、
とまってゐるよ、竿の先

三木露風 「赤蜻蛉」 樫の実


 先日、はてなに寄せられていた検索の一つにとても興味を惹かれるものがあった。それは
 夕焼けこやけの「こやけ」、仲良しこよしの「こよし」の意味を教えて下さい
という何とも素朴に響く質問だった。年を経た三木露風が北海道のトラピスト修道院で少年の頃を思い出しながら作ったという、童謡「赤とんぼ」はとても有名だから知らない人はいないだろうが、言われてみればその「赤とんぼ」の冒頭の「夕焼けこやけ」の「こやけ」とは確かに一体何を意味していたのだろう?

 そこで、興味をそそられながら、その質問への回答を眺めてみると、
語調を整えるための(特に強い意味はない)接頭語ではないか
という答えに続いて
 夕日が沈んで暗くなった後に10~15分すると、もう一回赤く明るく光る「夕焼け」が見える。これを「小焼け」というそうだ
という回答が返されていた。「小焼け」というものが一般的に通用する言葉なのかどうかは判らないが、それでも具体的に説得力のある説明に聞こえる。この説明のとおり、「夕焼けこやけ」の「こやけ」が日暮れ後にもう一度光るという夕焼けであるとするならば、その夕日が沈んで暗くなった後に「10~15分すると」「もう一回赤く明るく光る」という「小焼け」というのはどんな夕焼けなのだろうか。


 この「小焼け」の不思議なところは、「日没後に10~15分するともう一回赤く明るく光る」という「現象の不連続性」である。日没後にだんだんと光が強まるのでも薄まるのでもなく、まるでフラッシュバックのように不連続的に「10~15分するともう一回明るく光る」というのはとても不思議に思われる。何らかの「境界」がないことには、そんな風にパタンと何かがひっくり返されるように不連続な現象が起きるとは思えない。

 そこで、こんな風に推理してみた。「小焼け」というのは、日没後に地平線の向こうに沈んだ太陽が、私たちの頭上に浮かぶ雲を下側から照らし赤く光らせているさまを指しているのではないだろうか?地上に立つ私たちから見るとすでに日も沈んでしまった後に、だけど私たちの頭上高くに浮かんでいる雲からはまだ夕日が見えるような時に、その雲が下側から照らされて夕日の赤い光を私たちに向け反射させているさまを「小焼け」というのではないだろうか?そしてまた、夕日は太陽の角度が低ければ低いほど大気中を通過する光路長が長くなりきれいに赤くなるし、それに加えて太陽の角度が低ければ低いほど太陽光が雲に当たる角度が深くなるため雲の下側に当たる光の量が多くなる。だから、雲の高さから見た日没の時に雲の下側が一番強く赤く照らされることになり、その直前のことを「小焼け」というのではないだろうか?

 こんな推理にしたがって、簡単な計算をしてみることにした。秋の空に浮かぶ雲といいえばひつじ雲やいわし雲といった高積雲である。それらの雲の高度は私たちの頭上7~10kmといったところだろうか。その雲から見た日没というのは地上の私たちから見た日没からどの程度後になるだろう?ざっと計算をすると、その結果は雲の高度が7kmのときに約11分後、雲の高度が10kmのときに約13分後になる。私たちの頭上でなくてもう少し西の空に浮かぶ雲であればそれよりは若干遅くはなるけれど、それでも数分の違いも生まれるわけではない。つまり、私たちが日没を見た十数分後に、空に浮かんでいる雲の下側に一番強く夕日の光が差し込み、雲の下面が私たちに向かって赤く輝くことになる。

 そういうわけで、「小焼け」というのが「日没後に地平線の向こうに沈んだ太陽が頭上の雲を下側から照らし赤く光らせているさま」だと仮定してみると、ちょうどその現象が起きるのが私たちから見た日没後十数分後であることから、
夕日が沈んで暗くなった後に10~15分すると、もう一回赤く明るく光る
という現象を上手く説明できることがわかる。「夕焼け小焼け」の「小焼け」は、夕日が私たちから見ると地平線の彼方に沈んでしまって見えなくなった後に、それでも私たちの頭上高くに浮かぶ雲を幻のように照らしている現象だと考えると上手く説明がつくのである。

 そういえば、三木露風が最初に発表した「赤蜻蛉」の詩は「夕焼け小焼けのあかとんぼ」ではなくて「夕焼け小やけの山の空」だった。だから、三木露風が夕暮れに「見たのはまぼろしだったか」と呟いたのは元来は「赤とんぼ」ではなく「夕焼け小焼けの山の空」で、そんな風に呟くとおり、地平線の向こうの夕日を頭上の雲を鏡にして見るという、「小焼け」はまさに蜃気楼か陽炎のような現象だと考えてみるのはとても自然で、そして興味深いことだと思う。

 なぜなら、後年に「赤とんぼ」と改名したけれど、三木露風がこの詩につけた題名は「赤蜻蛉」であるからだ。詩の中では「赤とんぼ」とひらがなを使っているにも関わらず、とんぼの古名に由来する蜻蛉(とんぼ)の古名を、その漢字のとおり「蜻蛉(かげろう)」をこの詩に名にわざわざ使っているからである。つまり三木露風はこの詩を「赤とんぼ=赤い陽炎(かげろう)」と名付けたのである。地平線の向こうに隠れた夕日(太陽)が炎のように燃え上がるちょうど陽炎のような「夕焼け小焼け」意味する題をこの詩に名付けているからである。
小焼け

 そういえば、三木露風は三十三才の時、北海道で夕日の中を飛ぶ赤蜻蛉(アキアカネ)を見ながら、子供の頃を思い出しつつこの詩を作ったという。きっと、蜻蛉(かげろう)が飛ぶ夕焼けの景色を眺めながら、陽炎(かげろう)のように浮かぶ小焼けの向こうに昔をまぼろしのように思い出していたに違いない。

 秋の夕暮れに日が沈んだ後の美しい夕焼けを眺めていると、地平線の彼方に沈んだ太陽が炎のように雲に浮かび上がる「小焼け」の様子を眺めていると、色んな幻が地平線や水平線の彼方に浮かびあがってくるような気がする。三木露風が眺めたように
、昔眺めた景色がどうしても陽炎のようにふと浮かび上がってくるような気がする。雲の下が赤く照らされる様子を眺めながら、そんないつか見た景色を少し眺めてしまうのである。

2003-10-25[n年前へ]

Live on Earth 

Night and day

カムチャツカの若者が
きりんの夢をみているとき
メキシコの娘は
朝もやの中でバスを待っている

ニューヨークの少女が
ほほえみながら寝がえりをうつとき
ローマの少年は
柱頭を染める朝日にウインクする
 

 色んな朝の空を背景にして、谷川俊太郎の詩「朝のリレー」が朗読されるCMがTVで流れている。ネスカフェのコーヒーのCMである。丸い地球を太陽の光が照らして、その地球の回転に合わせて次々と世界中が朝を迎えていく様子を生き生きと描写する谷川俊太郎の詩は、地球全体を遠くから眺めつつも同時に地球上の何処かにいる一人一人の生活を近くで眺めている。遠いところからだけでなくて、近くからも地球を眺めまわす視点で「朝のリレー」の様子が謳われると、丸い地球がたくさんの人を乗せて、そして太陽に照らされながら回っている様子が心の中に浮かび上がって来るに違いない。

 この詩をTVで眺めていて思い出したのがNIGHTAND DAYというサイトである。これは、世界各地のウェブカムを経度方向一周分のサークルに並べ、いま地球に落ちている太陽の影や日向・夜や昼を見てみよう、というプロジェクト・ページである。今では、ウェブカムの画像が取得できていないらしく、残念ながら太陽の光が次々と地球上を照らしていくさまを眺めることはできない。かつて動いていた頃の様子を眺めることができるのみである。
 

 そこで、「朝のリレー」を自分の目で眺めてみたくなった私は自分用に世界各地のウェブカムを経度方向一周分のサークルに並べてみることにした。それがこの"Liveon Earth"だ。24時間で一回りする地球上のウェブカムを24(今のところ-1)個並べて、夜と昼が地球上を駆け抜けていく様子を眺めてみることにしたのである。ただ、世界中の街の景色が貼り付けてあるだけの、だけど世界の街中を遠くから近くから眺めることのできるページを作ってみることにしたのである。
 
 

Live on Earth
40 Moscow
30 HELSINKI
20 Thessaloniki
10 Koeln
0 TrafalgarSquare
10 DUBLIUN
50 Tehran
60 Prince Edward
70

Karachi
24 hours a day70 New York
100

Nong Khai
Live on Earth
80 UF
110 HongKong
90 UM
120 Taiwang
24 views an earthhirax.net100 SiouxFalls
130 Fukuoka
110 SaltLake
140 Sappro
150 Melbourne
170 Dunedin
160 Hawai
18020 San Francisco

 このページを色んな時間に眺めてみれば、丸い地球が回転していくと同時に太陽の光が照らす領域が次々と動いていくさまを目にすることができる。
 

色々な時間の "Live on Earth"

 もちろん、世界には街の灯りが見えない地域があるように、この"Liveon Earth"の上には実はアフリカや南米はないし、人のいない地域だってこの"Liveon Earth"の上では眺めることはできない。それでも、朝起きてコーヒーを飲みながら、せわしく人が歩き回る何処かの昼の街並みを眺め、昼に一息つきながら、眠りについている地球の裏側の街を眺めてみる。そして、夜眠る前のひとときに朝コーヒーを飲んでいる誰かの街を眺めてみる。地球が回っている様子を遠くから眺めつつ、生き生きとした何処かの街の誰かの様子を眺めてみるのもきっと面白いんじゃないか、と思う。
 

この地球では
いつでもどこかで朝がはじまっている

ぼくらは朝をリレーするのだ
経度から経度へと
そうしていわば交替で地球を守る

眠る前のひととき耳をすますと
どこか遠くで目覚時計のベルが鳴ってる

それはあなたの送った朝を
誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ

2003-11-12[n年前へ]

今日の教えて下さい(男性限定)あなたの窓は何処ですか? 

 「放水」をする時に何処からホースを出しますか?いわゆる「社会の窓」でしょうか?それとも、それ以外の場所(パンツをおろすとか、横からホースを…とか)でしょうか?ちなみに、あなたはブリーフ派?それともトランクス派?もし、教えて頂ける方がいらっしゃいましたら、ホースを持っている方限定で、教えて下さい。お願いします。ちなみに、まずreferrerは見ていませんので、メールで(jun@hirax.net宛に)教えて頂けるとウレシイです。

OLLI トランクス族その1: 社会の窓は無視して右足の根本から、つまり右横から出す。LI トランクス族その2: チャック&ボタンすべてをはずし、パンツをその部分だけ下げる。LI トランクス族その3: ベルトでがっちり留めてあるときは社会の窓からだします。でも、基本的にはチャック+留具(?)全開でパンツをおろします。LI トランクス族その4: トランクスの窓は使わず、右横から出します。LI ブリーフ派その1 : チャックのみ全開で、ブリーフはズボン内でカラダより剥離させてちょこっとおろし、社会の窓より、あらわのホースにて放水です。で、ブリーフをエレベーティングにて終了です。 オールウェイズ、社会の窓オゥンリーです。スボン膝上ステイの状態が、私はどーも落ち着かないのです。LI トランクス族その5: スーツの時くらいは、社会の窓からだします。といっても、あんまりベルトしないので、チャック&ボタンすべてをはずしパンツをその部分だけ下げる、です。LI トランクス族その6: 自宅以外では社会の窓からです。自宅ではベルトしてても全部おろします。どうも三十路に入った頃から残尿感が気になるようになったので、タマタマになるべく負荷がかかっていない状態でしたいというのが主な理由です。でも短パンのときはそのまま右下からだったりします。右出しの多さについては「日本人は右曲がりが多い」といつかどこかで聞いたような記憶があります。LI ブリーフ族その2(7歳): ズボンのウエスト前部分をちょっとだけ下ろし、ブリーフの窓から放水。LI ブリーフ族その3(4歳): ズボンもブリーフもひざまで下ろして放水。LI トランクス族その7(28歳): ズボンはチャックのみ開ける。(ボタンは外さない)かつ、パンツはその部分だけ下げる。 私は小学生の頃まではブリーフ派だったのですが、やはり同じ方法でした。LI トランクス族その8: チャック&ボタンすべてをはずし、パンツをその部分だけ下げる。普段、チャックでなく、ボタンがついたズボンをはいていることも関係しているのかもしれませんね。LI ブリーフ(というかビキニ族?)族(31歳): ボタンのジーンズをはいていないときには,(1) ズボンの窓をあける (2) ブリーフを臍のほうから親指でずりさげて,ホースをぽろんと出す。 (3) ホースを引っ張ったりしながら調整する、です。オトナのブリーフには窓がついていないのです。いわゆる白ブリーフにはついているんでしょうが, さすがにそれははいてません。   この方法だとホースにストレスがかかるため,収納してストレスが除かれたときに「じわぁ〜」となることがあるので,大変危険です。/OL ブリーフ族はいないのか?そしてまた、いわゆるひとつの「社会の窓」は締め付けズボンの時しか使われないのか?右横派が多いのは何故だ?利き腕と関係があるのか…?世の中には判らないことがみち溢れているのだ。
 うむぅ?初めての「社会の窓」使用派はブリーフ族だ。初めてのブリーフ族が、初めての「社会の窓」派だとは。

 typo指摘ありがとうございます > トランクス族その5さん。

 しまった、「三十路に入った頃から残尿感が気になるようになったので、タマタマになるべく負荷がかかっていない状態でしたい」という意見を聞くと、年齢も聞いておけば良かったか…?
 と、思ったら4歳、7歳のブリーフ族のおこちゃま軍団を率いるお母さんからメールが。おこちゃまはさすがに右にも左にも染まっていない、ようである。4歳児に「作法」を誰がどのように教えたかも知りたいところなのである。

 小学生の頃まではブリーフ派だったという28歳のブリーフ族その7さん。やはり中学生くらいで、大人の階段を上った少年はトランクスに履き替えるのだろうか?うむー。

 初めてのビキニ族だー、と思ったら何と「オトナのブリーフには窓がついていない」という新情報が…。知らなかったぞー。それは思わずビックリだぁ。

2003-12-03[n年前へ]

イッパツ換太くんキット 

 かつて少年探偵団に憧れた人達は必ず気に入る「イッパツ換太くんキット」光学式ホイール付ミニマウス、11種類のケーブルキットを持ち運びに便利なポシェットにコンパクトに収納したお買い得なキット。クリスマス限定プレゼント用包装サービスもあるし、あぁお買い得。

2004-04-12[n年前へ]

ようこそ「辞書単語登録プログラミング」の世界へ 

ATOKではじめるperlスクリプト


 日本語を使う日本人として、PCを使っていて不便を感じることは多い。例えば、URLを入力するときには半角英文字入力モードに切り替えてキーをタイプしなければならないのに、その一方メールを書くときにはATOKの全角ひらがな入力モードに切り替えてキーをタイプし日本語を入力しなければならない。そして、そのメールを書いている途中にアルファベットのフレーズが出てくるようであれば、また文字入力のモードを切り替えなければならない。基本的にアルファベットだけを使うラテン語系の言語と違い、日本語のような多くの文字を入力するためにIMEなどのプログラムを使わなければならないとなると、どうにも不便を感じることが多い。そんな時、アルファベット文化圏に生まれなかったことを少し残念に思ったりする。
 

 しかし、短所と長所は紙一重の表裏一体のものである。短所と長所が表裏一体というからには、どんな視点から眺めるかで、その表と裏は短所にもなれば長所にもなるハズである。IMEなどの日本語入力システムを使わなければならない不便さも、少し考え方を変えてみればきっと何かの便利さにも姿を変えるハズである。例えば、「グーグル」なんていう言葉を"
www.google.com"と辞書に単語登録してさえおけば、入力の手間を少し省くことができる。つまりは、日本語入力システムがブックマーク代わりになったりもする。つまり、日本語入力システムを単なる「よみ→漢字」という変換を行うデータベースにしておくのではなくて、「名前→URL」という変換を行うデータベース代わりに使うと便利であったりする。
 

 そんな考えをさらに進めて、少し前にATOK数式処理プラグインなんていうものを作ってみた。JUSTSYSTEMの日本語入力システムATOKに数式処理機能を追加することで、数式計算を日本語入力と同じような感覚でできるようにしてしまうというツールを作ってみたのである。つまり、日本語入力システムを使えば「ひらがなの読みを入力すれば漢字が表示される」のと同じように、「数式を入力すればその計算結果が表示される」というものを作ってみたわけだ。日本語入力システムを使わなければならない不便さを、それを使えば、「どんなに算数が苦手な人であっても、誰もが天才算数少年になることができてしまう」という短所・長所変換システムを作ってみたのであった。

 もう少し言い換えると、「有限の『よみ』を有限の『漢字』に対応させる」といったような「有限のデータベース」だけではなくて、「(色んな無限のパターンがある)数式→(色んな無限のパターンがある)計算結果」という無限のデータベースに日本語入力システムを変えてみたわけである。今回はそんな考えをさらにさらに押し進めて、ATOKの機能を必要以上にムダに機能拡張してみたい。
 

 というわけで、今回は「数式」ではなく「perlスクリプト」プラグインを仕立ててみた(最新バージョンはperlだけでなく、ruby,awk,何でもござれバージョンになっています)。「数式」も「perlスクリプト」も結局は「プログラム言語」であって何ら違いはない(ATOK数式処理プラグインではクリップボードを変数として使うこともできる関数でもあった)わけだが、色々なことを実現しようとするならばperlの方が高機能であるに違いない。そこで、Windowsにインストールされたperlの機能をATOKから使うことができるプラグインを作ってみた。「そんなもの何の役に立つ?」「無意味にムダじゃないの?」と思う人が多いだろうし、その疑いは必ずしも外れてはいないのだが、とりあえず少し使い方の説明をしてみることにする。

 例えば、まずは「perlスクリプト・プラグイン(最新バージョンはperlだけでなく、ruby,awk,何でもござれバージョンになっています)」を使って、これまでの「数式処理プラグイン」と同じようなことをしてみることにしよう。ソフトウェアをインストールした後でATOK上で半角英数で入力中に、まずは
 

print sin(3)/5

と入力して「AMET変換」すると、
 

0.0282240016119734

という風に計算を行った結果が出力される。もちろん、これまと同じように入力語句の末尾に"="を付けて
 

print sin(3)/5=

と入力して「AMET変換」すると、
 

print sin(3)/5 = 0.0282240016119734

というように、入力スクリプトとその実行結果(計算結果)が共に出力される。なんと、これでATOKユーザーならばperlの数式処理機能を全て文字入力中に使うことができるわけである(perlがインストールされていれば)。
 
 

 また、クリップボードにテキスト形式のデータが入っていれば、その内容が入力されたファイルがperlスクリプトに引数として渡される。だから、例えばクリップボードに
 

いろはにほへと
ちりぬるをわか
よたれそつねな
らむうゐのおく
やまけふこえて
あさきゆめみし
ゑひもせす

なんていうデータが入っている時に、ATOKの文字入力で
 

$i=1;while(<>){print qq/$i: $_/;$i++}&

と入力(末尾の&は出力結果が長くなるときのおまじない)して変換すると、クリップボードにコピーされていたデータを
 

1: いろはにほへと
2: ちりぬるをわか
3: よたれそつねな
4: らむうゐのおく
5: やまけふこえて
6: あさきゆめみし
7: ゑひもせす

と行番号付きで出力することができる。

 つまり、ATOKを使う限りにおいては、どんなアプリケーションであってもperlの機能を使うことができるわけだ。上の行番号を出力した例のように、メモ帳からでもあるいはノートパッドからでもperlの機能を使った機能拡張をすることができるわけだ。メモ帳ですら、perlの正規表現を駆使した整形処理をすることができるようになるのである。
 

 えっ?こんな「perlスクリプト」を入力するのはメンドくさい?こんな"$i=1;while(<>){printqq/$i: $_/;$i++}&"なんていうプログラムを毎回毎回入力できるハズがない? うーん…何のためのATOK何のための辞書変換、何のための日本語入力システムだろうか? …そう、こんな「perlスクリプト」はただ辞書に単語登録しておけば良い。「ぎょうばんごう」なんていう「読み」で"$i=1;while(<>){printqq/$i: $_/;$i++}&"という文字を登録しておけば済むのである。すると、最近のATOKであれば予測入力すらできてしまうから、二回目からは「ぎょう」という辺りまで入力したときにはすでに「perlスクリプト」が表示されているハズなのである。これがATOKではじめる「辞書単語登録プログラミング」なのである。これからの時代は「入力予測システム」「プログラム・データベース」「クリップボードを用いたファイル不要のプログラミング」という実にお気楽環境なのである。
 

 そのお気楽プログラミングでどんな便利が手にはいるかというと、例えば「じこく」という「読み」に
 

($s,$m,$h,$d,$o,$y,$w,$i)=localtime;print qq/$h:$m:$s/;

というような、文字を登録しておけば、「じこく」でAMET変換すると
 

0:18:16

という風に時刻を表示させることもできるし、例えば
 

ねん = "($s,$m,$h,$d,$o,$y,$w,$i)=localtime;$y+=1900;print qq/$y\//;"
がっぴ = "$s,$m,$h,$d,$o,$y,$w,$i)=localtime;$o++;print qq/$o\/$d/;"
じかん = "$now=localtime;print qq/ $now /;"

なんていう風に登録しておけば「ねん+がっぴ」を変換すれば
 

2004/4/12

になるし、「じかん」であれば
 

 Mon Apr 12 00:22:27 2004 

というように自動入力することだってできるのである。
 

 もちろん、system関数だって使えるわけだから、他のプログラムの機能を使うことだってできる。もちろん、他のプログラムの機能を使うまで行かなくても、他のプログラムを起動だけさせるなんてことだって簡単にできる。例えば、「でんたく」なんていう読みには"system(calc)"というような文字を辞書登録しておけば、「でんたく」と入力しperlスクリプトを表示させた後に変換を行うと、電卓が起動するようになる。
 

 上に挙げたものは、とても簡単なサンプルに過ぎない。おそらく、perlを使いこなす人たちであれば、色んなperlスクリプトで色んな機能をATOKに追加していくことができるに違いない。
 

 というわけで、今回はこんな「ATOKperlスクリプト・プラグイン」のご紹介をすることで、ATOKではじめる「辞書単語登録プログラミング」の世界へようこそと宣言をしてみたい、と思う。Windows上でATOKを使っていて、perl使い、という人がどれだけいるかは判らないが、一行プログラミングならぬ「辞書単語登録プログラミング」も面白いかも、と小さく呟いてみたいと思うのである(ちょっと弱気)



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