2012-10-24[n年前へ]
■「ぷるん」や「ぷりん」や「たるん」のヒミツ
「このふたつの差異に関する物理的見解が聞きたい」という「つぶやき」への回答例。
"なぜ、おっぱいは「ぷるん」で、おしりは「ぷりん」なのか。いずれもまるくてやわらかいという点では共通なのに。"「ぷるん」は振動継続時間が長い場合のオノマトペで、一方、「ぷりん」は振動が一回程度を差すオノマトペです。同じ弾性率の物体では(このタイムスケールでは粘性体としての性質は無視できます)、厚みが振動継続時間の目安となります。だから、おっぱいは「ぷるん」で、おしりは「ぷりん」なのです。
したがって…当然のごとく、「おっぱい」の厚みが少ないケースにおいては、おっぱいも「ぷりん」となりますし、少々脂肪が多めの方の場合には、おしりも「ぷるん」となります。
”さらに厚みのあるおっぱいや二の腕を表現する「たゆん」は「ぷるん」よりも振動時間が長いのに加え、振動幅が大きい要素も入っているのでは?”…それは、とても良い質問ですね。
"P"あるいは”B”といったいわゆる子音は(非常に強い)両唇破裂音ですから、高周波数の振動を表現する擬音となります。振動周波数が高いと、同じ弾性率であれば「振動幅は短い」ものです。
つまり、"P"や"B"で表現されるオノマトペと比較すると、その他のオノマトペは一般的に低周波であって、それは(同じ弾性率のものであれば)振動幅が大きいものを指す、ということになります。
さらに言えば、固有振動周波数を思い浮かべてみれば、振動幅が大きいということは、(同じ弾性率のものであれば)その物体が大きい・長いということになります。だから臀部も胸部も非常に大きな方の場合は「ぷるん」でなく「たるん」と表現するのが自然なものになるということもおわかりかと思います。
2012-11-29[n年前へ]
■「オシッコが捻れて見える」のは尿道の異方性と表面張力が原因だ!?
寒くなってくると、自然とトイレが近くなってきます。 一日になんども、「放水作業」をするようになると、「オシッコが空中で描き出す形状」が気になり始めました。 たとえば、オシッコの放水速度が低いときには、(右上写真のような)捻れた輪ゴムのような形状になっているように見えます。
そして、ひとたびオシッコの速度が増してくると、捻れた輪ゴムのような形だったはずのオシッコが、グ~ンと長~く伸びた形状に姿を変えます(右図参照)。とはいえ、そんな風にオシッコの捻れの周期は変わると言っても、オシッコの姿は結局のところ、トルネードというかスクリューのように、グルグルと捻れた姿であることには変わりありません。
…この「おしっこ」の捻れ形状は一体どのようにして生まれているのでしょうか?そんな、ことを考えて、メモ書きしてみたのが下の写真です。
「おしっこの放水口」の断面は、完全な円ではありません。少なくとも、…いや大幅に扁平・潰れた形状になっているように思います。その扁平形状に、さらに放出時の速度異方性が加わって、おしっこは大きく潰れた楕円状の断面となり、尿道から空中に飛び出ていきます。
さらに、その楕円状のオシッコが表面張力に導かれるまま、楕円形状の「引き延ばされた部分と縮んだ部分」を交互に入れ替えることで(それに初期の異方性が加わることで)、あたかもオシッコがスクリュー&トルネードのごろとく捻れ進んでいくように見えるのではないだろうか、と考えたのです。
そんなわけで、トイレに行くたび観察を続けているのですが、まさか「普通の放出口は完全円形なのが普通で、オシッコがトルネード形状に見えるのは異常」という「意外な真実」が隠れていたりしないだろうか…と、そんな恐怖に小便をし終わった後、ひとりブルってみたりするのです。
2013-06-26[n年前へ]
■向きを変える古代エジプト「死の神像」の秘密!?
マンチェスター・ミュージアムに置かれた、エジプト像「死の神像」が何故か独(ひと)りでに回転していた!?という記事(”The turn of the mummy: God of death statue starts SPINNING on its own in Manchester museum... but is this a sign that there really is a curse of the Pharaohs?”)を読みました。そして、ガラス陳列棚の上に置かれたエジプト像が数日の間に回転していくさまを写した動画を見ました。
まず疑いたくなる「理由・原因」は、何らかの震動源がガラス棚の表面が微振動させ、エジプト像の重心バランスや底面形状などに起因して回転するに至った…というところでしょうか。
試しに、監視カメラで撮影された動画を解析して、エジプト像部分の「輝度」と「時間的な差分(フレーム間の差分)」をグラフにしてみると次のようになります。このグラフは、横軸が(ほぼ2昼夜の)時間を示し、縦軸は輝度(および輝度の時間差分)で、黒線で描いた線が輝度つまり構内の明るさで、赤線で示した線は「時間的な差分(フレーム間の差分)つまり像の動きの量を簡易的に示したもの」です。黒線が(縦軸で)上部に位置する時=「構内が明るい時」で、下部に位置する時が「構内が暗い時」です。そして、赤線の上下動がない時は、エジプト像が止まっている時です。
動画を見てもわかりますが、上のグラフを眺めてみても、「構内が暗くなくなり・人が訪れない時間が訪れても」、しばらくの間、エジプト像が回転し続けていることがわかります。そして、しばらく停止し続けた像が構内が明るくなると同時にまた回転を始めています。
これは、照明が点けられると同時に動き出し、照明が消されてしばらくすると動作が停止するようにスケジューリングされた何らかの震動源、たとえば、空調などがあるのかもしれません。そして、そういったものが生じさせる振動が、古代エジプトの「死の神像」を回転させているのかも…と想像したりします。
…あるいは、この建物のどこかに欠陥があって、些細な振動を増幅させていて、その建物の危険性を古代エジプトのフォラオが「死の神像」を介し私たちに伝えているのかも!?
2016-12-13[n年前へ]
■街通りを歩きながら…列車中で…似合う「飲料類」を決める振動動特性のヒミツ
街の通りを歩きながら、あるいは列車の中で1人飲み物を飲みたくなることがある。時にビール、あるいはコーヒー、その時の気分に応じた何かを手に持つカップに注いで飲んでみたくなる。とはいえ、カップから飲み物がこぼれたりするのはイヤだ…という人は、この論文 "Damping of liquid sloshing by foams: from everyday observations to liquid transport" を読んでみると面白いと思う。
場所や状況に応じた飲み物を、その時の気分だけではなくて、その場所の「振動や揺れ」に応じて選びたい!と考える人に役立つこの論文は、飲み物の上面に浮かぶ「泡(foam)」が、どのように飲み物自体の揺れ・振動を抑える効果があるかを示している。液上面に泡がわずか数ミリメートルあるだけで、液面の揺れが数分の1に治まるようにすることができる現象解析をした論文だ。
石けんや洗濯洗剤で「泡のかたまり」を作り、息を吹きかけたり・指で突き動かしたりすると、ブルブル震えて大きく揺れる。けれど、それと同時に、揺れがだんだん治まっていくことにも気付かされる。それはもちろん、たくさんの泡が「動き」を妨げるよう・緩やかにするよう抵抗として働くからだ。
揺れが激しいところでは、きめ細やかな泡が厚く重なるギネスビールが似合う…とか、もう少し揺れが治まればピルスナービールが似合う…とか、(泡を持たない)コーヒーでは揺れが少ない落ち着いた場所が似合うとか、そんなことがわかる論文は、読んでみると面白いと思います。
2018-01-09[n年前へ]
■大阪大学 2017年度前期日程「物理」を「面白い物理エッセイ」として読んでみる
大阪大学 2017年度前期日程「物理」で、出題ミスがあったというニュースを見た。その問題文と想定正解、 さらには、その「解説」を読みました。その問題文を眺めた結果、この「問題」が「とても勉強になる「物理現象の解説エッセイ」のようで、とても面白かったので、少し感想を書いてみることにします。「ニュース」として扱われた内容としてはともかく、…少なくとも私にとっては、とても興味深い「問題」でした。
問題内容は、壁から離れて(壁から垂直に走る直線上に)位置する音叉とマイクを登場人物として、その1次元的世界での「音波」を扱うものです。
ネットで、(右に画像として貼り付けた)問題文の一部を抜き出したもの読んだ時、最初に想像したのは「十分に小さく点音源として扱える音叉」という文言が「全ての原因ではなかったか?」という想像です。すぐに、この想像は間違っているということがわかるのですが、「音叉」を「限りなくシンプルな振動体(面)」として考えてしまったことで、1次元として扱われる世界上の「音叉の前後」で「同じ向きの空気変位が生じる」と考えるか、それとも「音叉の前後で同じ空気密度の振動が生じる」かで、(前者なら)当初の「正答」が導かれるし、(後者なら)追加された「答え」が生まれし…というものです。
「音叉=振動する物体の象徴」として単純に捉え、(いくつかの考えたくないことを省略するために&考えたい現象を単純・抽象化して光を当てるために)世界を1次元として取り扱おうとするならば、「(限りなく大きさ影響を無視できる)点音源の音叉」は「1次元上の振動点=3次元上の振動面」として取り扱い(考え)たくなり、そのような3次元空間内に配置された振動面の前後では、「同じ向きの空気変位が生じる」ことから、当初の正解が導かれたのではないだろうか?という予想が、一番最初に頭に浮かんだ想像でした。…しかし、そんな想像は間違っていることがすぐわかりました。
なぜかというと、関係する出題文全文を読んでみると、「音叉という物体」の振動を、どのように扱うかについて、そしてまた変位と粗密の関係について、出題者は問題の冒頭から(常識とは言えない内容については)詳しく丁寧に解説し、テスト対象とならない単純な事項についてもやはり丁寧に確認を行っているからです。(それに対して、この解説などは問題文の一部しか読んでいない雑な説明であるように感じられます)
つまり、2本に先が分かれた音叉が振動する時に生じる振動モード、その基本となるモードが生み出す「空気の動き」は、音叉が左右対称になる方向から見た時に、「(右に貼り付けたGIF動画のように)音叉に対して左右対称の疎密波が作り出される(変位としては逆方向の空気の動きが生成される)」ということ、あるいは、1次元世界でなくてたとえ3次元世界でも「音叉の振動は点音源として取り扱うことができる(方向によって点音源から発せられる粗密の位相は異なるけれど、1次元近似なら完全な点音源として取り扱うことができる)「ということを、問題文の前半できちんと「解説・確認」しているからです。(この「この記述があるのに問4で間違えたのが解せないんだよね。という言葉に100%同意する具合です。ただし、こうした知識を持ち、丁寧に順を追った解説まで行う出題者が壁の”反射”を取り違えるような取り扱いをするとは全く感じられません。定義の取り違えではなく、単純な忙しさなどからくるケアレスミスなら理解できるのですが・・・)
それに対して、出題者が壁を「境界条件」どのような境界条件で取り扱うかを間違えたということは、個人的には可能性は低いことだと感じます(後で書くように、音叉の振動現象に対して、問題文の前段であれだけ丁寧に解説をされた出題者が、「固定壁」という言葉の意味を世間がどうとるかを考えなかったという田口先生の解釈は無理があるように思います。また、波動方程式として、普通に境界条件を設定して解くことができる一般的な問題であるとも思います)
ちなみに、「手元からUの字型に中心に支持部が伸びた音叉の形」や「そのような形の音叉がこのような振動を行う」ことは、(振動吸収体である)手に持った音叉が単振動を持続して行うための必然であることは、少し考えれば想像が付きます。その形は、出したい振動モードを持続されるとともに、不要な振動モードを(音叉を掴む)手が迅速に行うための実に素晴らしい設計結果です。何が言いたいかというと・・・この物理問題は、そんな音叉にまつわる「物理現象」を溢れるくらいの十二分に知っている先生が、物理現象というものの面白さを踏まえて書いた内容であることは、間違いないように思われます。
今回の「いわゆるひとつの出題ミスとその後の対応」に関しては、何かの「ケアレスミスや伝達ミスが重なって」生まれたものではないか?と想像します。つまりは、この「きっといろいろ考えて問題を作ったんだけど、一周回って悪問になっただけだと思います」という感想に近いのですが、「一周回って悪問になった」のではなくて、何か単純なケアレスミスが「(答えが違っている)悪問」を生み出してしまい、そしてまた何かの伝達ミスが「その後の対応」を生み出してしまったのではないか?と感じました。