2008-05-25[n年前へ]
■続々・『理系サラリーマン 専門家11人に「経済学」を聞く! 』
『理系サラリーマン 専門家11人に「経済学」を聞く! 』を出す際に、200人の人たちに「あなたが豊か・幸せになるために必要なものは何ですか?」と尋ねてみました。右に走り書きしたような「自由」「お金」「食べもの」「時間」といった選択肢を並べ見せながら、その人が豊か・幸せになるために必要なもの、を尋ねてみたのです。
そして、amazonで表示される「お勧め本」やはてなダイアリの「お勧めページ」を算出するのと同じように、つまりはその選択肢を選んだ人の重複度合いなどを計算し、クラスタ分析をした結果の樹形図が右のようになります。右の図ではA,B,C……などのように記号で書いたありますが、もちろん、本の中でもアルファベットが書いてあるわけではなく、「お金」「睡眠」「時間」といったものがクラスタ分析・表示されているわけです。つまりは、「クイズの答え」を知りたくなったら、本書を手にとりそのページを眺めてみて下さいね、ということになります。
「貨幣とは鋳造された自由である」というのはドストエフスキーの言葉ですが、クラスタ分析の結果は、見事なまでに「お金」と「自由」の距離や、「愛」や「希望」の距離を算出しています。右の図のA,B,C,D,……といった記号が「一体どんな言葉」なのか予想をしてみて、そして回答編を書店で眺め・楽しんで頂けたら幸いです。
2008-05-28[n年前へ]
■『専門家11人に「経済学」を聞く! 』と『11人いる!』
私個人の感覚としては、『理系サラリーマン専門家11人に「経済学」を聞く!』の「11人に聞く!」というタイトルは、萩尾望都のSF漫画「11人いる!」の暗黙的なパロディです。
小島寛之先生に、「10人の経済学者がいれば、11個の経済学説がある」という話を聞きました。その時、ふと「11人いる!」を思い出しました。あの話は「ロケットに乗ったのは10人のはずなのに、なぜか11人いる!」という話でした。「11人いる!」の結末は、「宇宙では思ってもいないことが起きる。必ず想定外のことが起きる。そんな時にどうするかが宇宙では重要だ」という感じだったように思います。
宇宙大学への入学のための試験会場の宇宙船へ着いてみると、10人のハズが1人増えていた!
そんなことを、玄田有史先生に話を聞いた時にも、感じました。上の言葉の「宇宙」を「人生」に置き直したら、玄田先生が語る言葉に近いように感じたのです。あえて書いてしまえば、それは、「人生では思ってもいないことが起きる。必ず想定外のことが人生では起きる。 そんな時にどうするかを知ることが、本来の人生教育だ」というような具合です。
というわけで、経済学者が「11人いる!」と気づいた時に、何だかちょっと面白く・そして何故か当然のようにも感じたのです。
宇宙はつねに変化に満ちている概念が通用しない場合もある常に異端の11人目が存在するようなものだ。
2008-06-12[n年前へ]
■自分なりの「年表」を作って眺めて、納得してみよう
『理系サラリーマン 専門家11人に「経済学」を聞く!』で、経済学者の先生方に話を聞く中で、よく歴史を辿りながら話を聞いたように思います。「株式会社」の歴史、「消費」の歴史、「社会」の発展の歴史……色んな歴史を描き辿りました。そこで、単行本を作る時に、世界の社会背景変化や技術発展や文化の歴史などを、自分なりの歴史年表を描きながら眺めなおし、そして、講義の中で聞いた話や経済学者や事件などをその歴史に重ねつつ、読み直してみたのです。その年表を綺麗にしたものが、単行本の末尾にオマケで付けたものです。
自作年表のドラフト版が下の画像で、その一部を拡大してみたものが右の画像になります。「年表」を作りながら、歴史の中で起きた大きなことの多くは、その時代を眺めてみると、どれも何だか当たり前で必然のことなのだなぁ、と今更ながらに感じました。
たとえば、グーテンベルグが活版印刷を「発明」し、聖書が印刷され、プロテスタント系の人たちが印刷機で宣伝ビラを大量に作り、そして、宗教革命が起きていく。そんな歴史の中では、経済活動も科学技術も絵画などの文化も、どれも密接に繋がっていたんだなぁ、などと色んな事象の因果関係をとても自然に納得することができました。
私たちは、因果関係を頼りに納得することが多いように思います。ということは、自分なりの「年表」を作り、その年表を作る過程で因果関係を納得することで、よくわからないこと・苦手なことも理解しやすいのかもしれない、と思ったのでした。
2009-01-10[n年前へ]
■「アメリカの高校生が学ぶ経済学」で学ぶ
「経済」に関する本を手当たり次第読んでみた。基礎を一番わかりやすく納得することができて、しかも、基礎原理を理解するだけでなく、実際にその原理にもとづいて身の回りのことについて応用して考えることができるように感じたのが、「アメリカの高校生が学ぶ経済学 原理から実践へ」だった。アメリカの高校で使われている教科書の抄訳だというこの本はとても、わかりやすく実践的だ。こういう本を高校の時期に読んでおきたかった、こういうことは早い時期から学んでおきたかった、とつくづく思う。
我が国は、高校生に重要な経済問題を理解する基本的スキルを教えなければならない。…高校卒業までに経済学の充実した教育を受けなければ、ほとんどの成人は、経済の機能や富の創造過程における自らの役割を学ぶ機会がまったく与えられなかったことになる。
本書冒頭に掲げられている W.B.ウォルスタッドの言葉
この教科書では、「経済の基本概念」「ミクロ経済学」「マクロ経済学:制度」「マクロ経済学:政策」「国際経済学」という流れに沿って、経済学を学んでいく。授業のテキストだから、各所各所に課題がはさまれている。それは、とても具体的で実践的な問いかけばかりだ。たとえば、「今日の放課後のどう過ごすか考え、その過ごし方をしたことで得られるもの、それ以外の過ごし方をしていたら得られていただろうこと」を考えなさい、というようなものだ。
そんな、何かの選択をするときに得られるものや失うもの、あるいは、それ以外の選択をしたら得られていたはずのこと(機会費用)を考えた後に、「将来への投資」の項目では、教育レベルと男女別の平均年収の表が載っていて、それを眺めることになったりもする。
そして、「ミクロ経済学」の「需要の弾力性の推定」の項では、「購入延期が可能か」「適当な代替物はあるか」「購入には所得の多くの部分が必要か」という3つの条件を大学教育に当てはめると、大学教育の「需要の弾力性」はどうなるだろうか?ということを、高校生たちは問いかけられ考えなければいけない。
また、身の回りのモノの価格や雇用について調べる、というような課題を通して、身の回りの社会現象を実際に眺めに行ったりもする。
こんな授業を高校の時期に受けておきたかった。高校時代は遙かの昔になってしまったけれど、遅ればせながらでも、「アメリカの高校生が学ぶ経済学 原理から実践へ」を読めたことは良かったと思う。
資源は稀少である。時間も稀少である。なすべきことが山のようにあるのに、どれから取りかかればよいのかわからないことがある。いろいろな選択肢から、何かを選び出さなければならない。…ところで、どれを選択すべきなのだろうか。信じられないかもしれないが、経済学を学ぶとトレード・オフや意志決定に関する「思考法」が身につき、優れた意志決定を行う素地が育まれる。
第一章「経済学とは何か」目次 から
2009-01-15[n年前へ]
■Simulinkで経済循環モデルを作ってみる
高校生気分になって、「アメリカの高校生が学ぶ経済学 原理から実践へ」を読み直しています。読んだ時には、でわかったつもりになったのですけれど、教科書に書いてあることを自分でやってみようと思うと、これが実に難しいもののです。・・・つまり、ひとことで言ってしまえば、全然わかっていないわけです。
たとえば、ごく単純そうに見える、第4章「マクロ経済学:政策」を読み、経済活動の循環モデル、生産・支出モデルの説明を読んで、その応用を自分でしてみようと思ってみても、それがなかなかできないのです。・・・そこで、モデルベースのシミュレーションを行うためのツール、 Simulinkを使い、実際にモデル計算をすることで、項目ひとつひとつを納得しながら、読んでみることにしました。
というわけで、まずは第4章「マクロ経済学:政策」の経済活動の循環モデル、生産・支出モデルの説明から、「経済活動循環・生産・支出モデル」を単純化した上で、Simulinkのモデルを作り、そしてシミュレーション計算してみました。それが右上のSimulinkモデルと、国民総生産の計算結果のグラフです。知っている人にとっては当たり前なのでしょうけれど、まだまだ難しくてよくわかりません・・・。