2010-02-23[n年前へ]
■南海泡沫事件で1億円失ったアイザック・ニュートンの名言
三井住友銀行コンサルティング事業部 編集・高橋 進「スローライフのマネー学―ゆっくり生きよう、しっかり殖やそう 」から。
「バブル」の語源となった「南海泡沫(サウスシー・バブル)事件」は、1720年の英国で発生しました。
…万有引力の法則を発見した天才ニュートンは、当時の株価バブルに踊って、大枚2万ポンド(現在の1億円に相当)を失っているのです。
ニュートンは、暴落以前に一度は投資から手を引いたのですが、バブルに踊る大衆の熱気にあおられて、再度買いに走って大失敗。
「私は物体の運動は測定できるが、人間の愚行を測定することはできない」という名文句を後世に残しました。
「南海泡沫(サウスシー・バブル)事件」とニュートン・ラグランジェといった科学者がいた時代背景を一目で確認してみたい人は、「理系サラリーマン 専門家11人に「経済学」を聞く! (Kobunsha Paperbacks Business 17) 」の巻末1を見ると良いかもしれません。
2010-03-07[n年前へ]
■「hirax.netサーバ(マシン)売ります」と「トービンのq」
hirax.netサーバを新サーバ構成に入れ替えた(仮想化PC上で動作させるように替えた)ことに伴い、ここ2年ほどhirax.netの中核を担っていた(しかも、ここ一か月は全てを担っていた)「キューブPC」を廃棄(不燃物として毎週一回の回収日に捨てることができる程度の大きさですから)、ないし、売却しようと思っています。つまり、「hirax.netのサーバ(マシン) for Sale」「hirax.netサーバ(マシン)売ります」ということになります。
この「キューブPC」は、小型のキューブタイプの"WINDY TIPO"というベアボーンPCで、Pentium 4 2.4GHz、2GB RAMの300GB HDというスペックです。ハードディスクの中身には、hirax.netで稼働させていた各種WEBアプリケーション(ソース)、および、そこから呼び出していた連携用(各種言語による)自作ライブラリ・アプリケーションなどが全て含まれています。
それだけなら良いのですが、このPCには、アクセスログなども含まれています。さらに、ファッション雑誌WEBアプリではアクセス元の都市解析と流行分布解析、なども行っていましたし、顔処理画像処理アプリでは、抽出顔画像からの年齢解析・顔中の色分布解析・地域ごとの化粧方法の差異解析・顔タイプ情報の蓄積・嗜好解析等をバックエンドで行っていました。つまり、破棄ないし売却する前に、完全に破棄しなければいけないデータも含まれているのです(ある期間より過去のデータに関しては、すでに、全て削除しています)。
WEBアプリケーションのソースは、(ハードウェアを売るなら)オマケにつけても良いかななどとは思いますが、(データ抹消ミスをしないためには)ハードディスクをひとまず完全消去してしまうのが、私の手間は一番手間が少なくて済みそうです。また、Pentium 4 2.4GHz、2GB RAMの300GB HDという程度のスペックのPCでは、普通に動くような状態でも、買いたいという人が現われるかどうかすら怪しいような気がします。ましてや、電源を入れると、いきなり各種WEBサーバーが起動してしまうような状態では、買い手が現れるとは思えません。
そんなことを考えているうちに、ふと「トービンのq」を思い出しました。
ジェームズ・トービンという金融経済学者が主張した”トービンのq”っていう理論があります。トービンのqというのは、すごく単純な分数で、分母が「その会社とまるまる同じものを、もうひとつ作るのにいくらかかるかという再取得費用」で、分子が「株を全部買い占めるためにいくらかかるかという株価総額」というものです。
この分数qの値は、1より大きいのが原則なんです。つまり下部を全部買い占めてその会社を手に入れるほうが、単にハコモノを作るよりも、ずっとお金がかかるということです。
小島寛之@「理系サラリーマン 専門家11人に「経済学」を聞く! 」 (参考書評)
なるほど、「PC売値/パーツ代総額」が1を下回ることなんて、あり得ないですものね。hirax.netのサーバ・マシンの場合、意外なことに、ハードディスクやメモリをバラして売ってしまった方が(ソフト部分には値段がつかないでしょうし)、高額になるような気がします。そうすれば、メモリ代金だけでも数千円程度にはなるように思います。しかし、一括で売ろうとすると、買い手すら現れないような気もするのです。売り手からすれば、「あり得ない状態」ですが、「買い手」からすれば「要らないものは要らない」わけですから、しょうがありません。
これは、まさに「トービンのq」が1を切っている状態です。PCパーツ代・それらを組み合わせたPC上で動くシステムトータルでは買い手が現れず売買が成立しないのにも関わらず、サーバ・システムを「切り売り」すれば値段がつき、全体よりも高い価格になる…という状況です。
建物とか設備とか機械とかを全部そろえて、さらに、同じような能力の人間を雇ったとしても、(中略)働く人たちの間で共有された情報や蓄積された経験、あるいは、築いた信頼関係と言った「企業のなかにあるプラスアルファの価値」が株価に反映されているわけです。
小島寛之
目には映りにくい「働く人の間のつながりといった社会的な価値あるもの」も、高い株価というカタチできちんとその価値が目に見えるモノにされているんだ、と実感してきました。徒然なるままに、ノートPCに向かい、心に浮かんだことをそこはかとなく書いてみました。、「hirax.netサーバ(マシン)」は「トービンのq」が1以下の状態でそのまま売るか、バラして「切り売り」するか、どうするかを考えているところです。
2010-03-08[n年前へ]
■仕事仲間との「給料の比率」 (初出:2006年03月21日)
「(漫才の)ネタを書く側をSE、そうでない人をプログラマとして、人気コンビに例えて、ギャラ比率をレポート(考えよう)」という記事を読んだことがあります。仕事を一緒にする人、けれど仕事の内容は違う人の間では、一体どんな割合でギャラを分けているものなのだろうか?というレポートです。その記事を読んだとき、ウォームビズに関する計算を行い、そして記事を書いた時のことを思い出しました。
編集者と一緒に、計算内容の修正・デバッグ作業をしたときのことです。私たちは、メール越し太平洋越しに、こんな言葉を交わしたような気がします。「何だか大変な仕事になってしまいましたねぇ…」
「この仕事量だと、いくらぐらいの報酬をもらいたいと思いますか?」
「あと、私たち二人(編集者の方と私)の間で、ギャラの分け前は一体どんな感じだったら納得します?」
その後、「(ギャラの分け前は)半々でいいんじゃないでしょうか? たいていの場合は、下っ端エンジニアの方が”しきり役”より報酬って安いですけどね」と私が書けば、つまり、「いいんじゃないでしょうか」と言いながら…半分寄こせと要求する私に対し、「いやいや、ふつう、選手の方が監督より年俸は高いでしょう?それに、こういった業界では、筆者の方がしきり役(編集者)よりギャラが安いということはありえないんです…」と、大人の編集者は淡々と書かれたりするのです。
異なる仕事をする人の間で、「報酬の分け前がどんな感じだったら納得できるか?」というのは難しい問題であるように思えます。基本的に、長く仕事を一緒にしたい人との間では、難しいことは考えず等分にするのが一番気持ち良いような気がします。二人なら半分に、三人なら三等分に・・・というのが、心地良いように思います。
こんな時、なんだか難しいことを考えようとする時には、経済学者 石川経夫の言葉を、今一度眺め直してみることにしましょうか。
この世は不公平なものだが、
それぞれが努力すればそれに見合ったものを
みんなが得られるようになる社会を
どうすれば実現できるだろう、
ということを愚直なまでに考えるのが経済学だ。
2010-05-16[n年前へ]
■hodrick prescott excel add-in
The Hodrick Prescott Filter Add-In was written by Kurt Annen. This program is freeware.
■Hodrick-Prescott フィルタのナゾ!?
経済オンチ解消のため、まずは景気動向を眺めてみようとふと思い、景気データを解析する手法について調べてみました。その作業をする中で、景気データから周期成分を取り除き、トレンド成分を導く手法の"Hodrick-Prescott filter"が気になり、頭から離れなくなりました。
"
Hodrick-Prescott filter"というのは、離散的な時系列データy(t)が与えられたとき、そのトレンド成分をτ(t)とすると、下記のような評価関数を最小化するようにτ(t)を定める、というものです。ちなみに、y(t)、および、τ(t)は、景気データを対数(log)値で示したものになります。
この式を眺めれば、第二項は二階微分を中心差分でとり、その結果をデータ全域にわたり積分したものだということがすぐわかります。つまり、(景気データを対数軸で示したときの)直線からのズレ・ジグザグ度合いです。その直線からのズレ度合いに定数λを掛けたものです。ちなみに、このλは離散データが三か月ごとのデータであれば、(多くの場合)1600が使われます。もしも、サンプリング間隔が密になれば、二階微分の結果が小さくなるので、それを補うように大きな値が用いられます。また、サンプリング間隔が疎であれば、二階微分の結果は大きくなるということで、ラムダには小さな値が用いられます。たとえば、サンプリング間隔が1年なら、(多くの場合…は以下省略します)λは100が用いられますし、月ごとのデータであれば、14400が用いられますが、これは「二階微分値に対し自乗をとっている」ことを考えれば(その自乗分に比例定数λを合わせようと思うなら)、なるほど、と思えるはずです。
また、第一項目は、トレンド成分と実データのズレ=取り除きたい周期成分、をデータ全域にわたり積分したものです。ということは、このHodrick-Prescott フィルタは、「実データにトレンド成分がなるべく沿うようにした上で(第一項)、トレンド成分がなるべく対数軸上で直線になるようにする(第二項)」というものであることがわかります。そして、その第一項目と第二項目に対するバランス(評価関数の重み)が、第二項に掛けられてるλで与えられる、というわけです。λが大きければ、「実データから”周期成分”を大きく取り除く=対数軸上で直線になるようにする」ことになりますし、ラムダが小さければ、「対数軸上での直線からのズレが大きくなってもいいから、実データに沿う=”周期成分”をあまり取り除かない」ということになります。
解説論文を読んだ印象は、この式のλは「米国景気データをもとにした合わせ込み(上手くつじつまがあうようにλを設定する)」で求められた結果であり、また、「対数軸上で景気動向は直線になる」という前提(背景)のもとに作られている、という具合です。(参考:「トレンドとサイクルの分解」の「実際には単位根の問題や成長率を問題にすべき点から、対数階差を原系列データにほど こしてから分析すべき」という辺り)
このHodrick-Prescott フィルタが頭から離れなくなったのは、「Hodrick-Prescottフィルターをかける前の変数変換」という、専門の先生による記事を読んだからです。この記事では、Hodrick-Prescottフィルタは「そのままの値」にかけるのか、「対数変換した値」にかけるのか、それは「対数変換した値」が一般的だろう、と説明された上で、
そのままの値にH-Pフィルターをかけた結果と対数変換した値にH-Pフィルターをかけた結果は基本な形状は変わらないはずですが、スケールが変わってしまうので注意が必要ではないかと思います。と書かれています。この説明を数式できちんと理解することができず(私は経済オンチであるのと同時に数学オンチでもあるので)、頭をひねっているのです。
疑問を何とか形にしてみると、それはHodrick-Prescottフィルタの評価関数が「対数軸上で景気動向は直線になる」という考えのもとに作られているの(ように見える)に対し(しかも、評価関数の第二項目は単に景気のトレンドを(与えられた軸で)直線にしようとする働きしか持たないにも関わらず)、線形値に対してHodrick-Prescottフィルタを掛けた場合、「対数軸上で現した場合に景気動向が直線になる」ようなトレンド成分が得られるのだろうか?本当に「基本な形状は変わらない」のだろうか?という疑問です。この評価関数を最小化しようとした場合に、対数軸でも線形軸でも「基本な形状は変わらない」のはどうしてだろう?という疑問です。
きっと、式を追いかけてみれば、あるいは、いくつかの例を解いてみれば、この疑問は解消する(理解できる)はず…と思えます。というわけで、とりあえず、この「Hodrick-Prescott フィルタのナゾ!?を解く(きちんと理解する)」ことを、メモ帳のTo Doリストに書き入れておこうと思います。