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2009-01-03[n年前へ]
■「一つの石ころに世界を見る」
一つの石ころにも世界が含まれている。それが見えない人は、見たくない人か、盲目である。物事に対してツマラナイというのは、「自分はその物事に対してツマルある物を発見する能力をもたない」と自白するに過ぎない。
寺田寅彦
2009-01-05[n年前へ]
■「技法と思想」
「この作品はわからない」という感想を抱いたときは、「わからないのは、作家のせいよりも、自分のせいではないか」と、まず自分の能力に疑いを持つことが大切です。
井上ひさし 「野田秀樹の三大技法」
2009-01-10[n年前へ]
■川上弘美と「不安」
川上弘美がインタビュー「彼女たちは小説を書く」の中で後藤繁雄に対して口にした、少し新鮮に響く言葉。
(恋人が)どういうふうに私のことを思ってるのかというところが確認できないと、うすうすでもわからないと、すごい不安でしょうがない。
川上弘美 「いとしさとかなしさと」
2009-01-12[n年前へ]
■高等教育の無償化
さらに2006年には、国連の人権委員会は日本政府に国際人権規約13条c項「高等教育の漸次的な無償化」の批准を勧告した。同項の批准を保留しているのは、日本以外ではルワンダとマダガスカルだけである。だが、日本政府はいまだに勧告に回答していない。
OECD諸国の高等教育への支出の平均はGDPの約1%であるが、日本は0.5%と最低の水準を低迷している。これを平均値にすれば、私立をふくめた大学の授業料は無償となり、高等教育の無償化は穏当な施策といえる。
白石嘉治「コモンとしての大学」 GRAPHICATION 2009 No.160
国際人権A規約
□13条2項b 高校教育の無償化
種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む)は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること
□13条2項c 大学教育(高等教育)の無償化
高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること
2009-01-13[n年前へ]
■誰でも正義の味方になりたがる時代
バットマンの誕生は'39年。不況と戦争の真っ只中だった。「正義の味方、英雄のいない時代は不幸だが、英雄を必要とする時代はもっと不幸だ」(ブレヒト)。
日本は、誰でも正義の味方になりたがる時代にとうとう戻った。
神足裕司 「これは事件だ」
2009-01-14[n年前へ]
■作家と技法
いま、技法と書きましたが、いわゆる識者と呼ばれる人種は、この言葉を毛嫌いするようです。(中略)彼らは<作家の思想が技法を選ばせる>という切実な事実を知らないのです。もっというと、技法こそ作家の思想の結晶なのです。(中略)書芸術においては、作家の思想は魂の底で暴れ狂っている”なにものか”であって、それに名付けたり、それを言葉にしたりできるような代物ではありません。その暴れ狂っている”なにものか”を表現可能なものにするために、作家は技法という回線を敷き、その回線を通じて、その”なにものか”を自分の外へ採り出すのです。そこでわれわれ観客・読者は、作家と逆の操作を行う必要があります。作家の駆使する技法という回線を逆に辿って彼の魂の底へ降り立つわけです。このとき、われわれは観客・読者としての実力を問われます。つまり自分に思想のない人間に限って、つまり自分に思想のない人間に限って、技法という回線を辿り損ねて作家の魂の底に降り立つことができず、つい、「おもしろいけれど思想の浅さは否めない」などと口走ってしまうのです。
井上ひさし 「野田秀樹の三大技法」
2009-01-15[n年前へ]
■21世紀の消費
鈴木幸一 「まだ宵の口」 no.51
最近の若者はお金を使わないそうだ。クルマにも興味を持たず、お酒も飲まない。通信費以外、あらゆる消費によっきゅを持たなくなってしまったという。鈴木幸一は、IIJ(インターネットイニシアティブ)の設立者であり、代表取締役社長である、IIJは、日本初の商用インターネットプロバイダーである。
2009-01-16[n年前へ]
■贅沢の反対は合理なのではないか
『高級ブランド戦争』という本の感想文には、「本の最初のところに、シャネルの<贅沢の反対は貧困ではない。贅沢の反対は低俗である>というコトバが書かれているが、私は贅沢の反対は合理なのではないか、と思った」という一文が(近田春夫 「僕の読書感想文」中に)あるのだが、私は断然、シャネル説より近田説に賛成ですねぇ。
酒井順子 「私の読書日記」
2009-01-17[n年前へ]
2009-01-18[n年前へ]
■「相場師」のケインズ
「相場ヒーロー伝説 -ケインズから怪人伊東ハンニまで」から。
「(ジョン・メイナード・ケインズ)彼が残した財産は総額四十五万ポンド。今なら二十億円を超す額だ。投機の決算は『大もうけ』だった」(中略)勝海舟が言っている。「経済のことは経済学者にはわからない。それは理屈一方から見るゆえだ。世の中はそう理屈通りいくものではない。人気というものがあって、何事も勢いだからね」(『氷川清話』)勝海舟は経済学者には経済はわからないと決め付けるが、どうして、どうしてケインズは「人気」も「勢い」もわかっていた。だからこそ投機という難事業に成功したのである。
お金というのは不思議なものです。・・・ほんのわずかな知識と、特別な経験の成果として、金は容易に(そして、文字通り不当にも)ころがり込んでくるものです。
ジョン・メイナード・ケインズ 「母にあてた手紙」
2009-01-19[n年前へ]
■最も失敗した作品の中で・・・
久世 光彦 「美の死―ぼくの感傷的読書」
<<向田邦子は、小説のなかで、虚構をかりてありのままの自己を語ろうとしたが、それは不可能、すくなくとも非常に困難であることが、書きはじめてすぐにわかった。二十編ほどの小説の多くは、こざかしいだけで底の浅いものである。成功した作もあるが、それは自己を語ったものではない。むしろ向田邦子は、最も失敗した作のなかで血をしたたらせている。 (高島俊男 「メルヘン誕生―向田邦子をさがして」)>>
慧眼である。
向田邦子の言葉と言葉と文章についての本は、これ一冊あればいい。そして、もうこれ以上なくていいと思う。
2009-01-20[n年前へ]
■人は「まとまり(ゲシュタルト)」を見たがる
人は「まとまり(ゲシュタルト)」を見たがり、ゲシュタルトは他の見方を阻む。これが人の視野を狭めるのだろう。では、なぜ人はゲシュタルトを見るのか?
情報処理 Vol.50 No.1 Jan 2009 p.88, 池田文人・田中秀樹
2009-01-24[n年前へ]
■「リソース(資源)は無限だ」という前提!?
新聞を読んでいると、こんな文章に出会った。内田樹教授が書くこの文章、"グローバル資本主義の「リソース(資源)は無限だ」という前提"というのは本当なのだろうか。いや、そもそもグローバル資本主義というのは、どういったものなのだろうか。
ゼロか100かという変革の主張の根底には、グローバル資本主義の「リソース(資源)は無限だ」という前提がある。マーケットもシステムも無限だから・・・
内田樹 「耕論」 2009/01/25 朝日新聞
2009-01-25[n年前へ]
■久世光彦の書評
本人がどのように考えているかはわからないけれども、斎藤美奈子の書に関する雑文は女性的だと思う。そして、久世光彦のそれは男性的だと思う。女性的・男性的と言っても、それは、たとえば男性的=マッチョというような意味ではなくて、むしろそれとは全く逆の意味だ。つまり、斎藤美奈子は鋭く強く、久世光彦の文章は繊細で後悔交じりの匂いがする。
人のことは言えないと、いつも自分を戒めながら、ついつい面白くて<書評>を書いて十年になる。人のことを書くのは面白いことなのだ。会ったこともないのに、その人と親しくなれたような気がする。ほんの少しだが、その人の肌に触れたようにも思う。だから私は、解説はしない。筋も書かない。私は<書評>で、その人に熱心に話しかけるだけだ。ーそれでもどこかで、余計なお世話をやいているような、後ろめたい気持ちが残るので困る。
久世光彦 「美の死―ぼくの感傷的読書 」
2009-01-26[n年前へ]
■なぜ私は変節したか?、市場原理主義の急先鋒だった中谷巌氏
「構造改革」の急先鋒として知られた三菱UFJリサーチ&コンサルティングの理事長、中谷巌氏。細川内閣や小渕内閣で規制緩和や市場開放を積極的に主張。市場原理の重要性を声高に説いた。小渕内閣の「経済戦略会議」における提言の一部は小泉政権の構造改革に継承されており、構造改革路線の生みの親とも言える存在だ。その中谷氏が昨年12月に上梓した著書が話題を集めている。 タイトルは『資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言』。「構造改革」を謳い文句に登場した新自由主義の思想と、そのマーケット第一主義の結果として現出したグローバル資本主義(米国型金融資本主義)を批判した書である。所得格差の拡大、地球規模で進む環境破壊、グローバルで進む食品汚染、崩壊する社会の絆――。これらはグローバル資本主義という「悪魔のひき臼」がもたらした副産物であると説く。
前書きには「自戒の念を込めて書かれた『懺悔の書』」とありました。中谷教授と言えば、米国型資本主義や市場原理主義の急先鋒というイメージが強い。どうして新自由主義やグローバル資本主義に疑問を持つようになったのでしょうか。
2009-01-27[n年前へ]
■斎藤美奈子「話を聞かない男、地図が読めない女」
斎藤美奈子の「趣味は読書。」 の188頁、「話を聞かない男、地図が読めない女」に対しての感想から。
この手の本は、思想的には必ず保守で、論旨は必ず荒唐無稽だ。もちろん、だから売れるのである。人々の価値観は概して保守的だし、正しい科学の知識もお呼びじゃない。彼らが望んでいるのは「あなたの性格はこう」「あなたの人間観家はこれでうまくゆく」とだれかに力強く断言してもらうことだけなのだ。で、ある人は霊能者のもとへ走り、ある人は占いに凝り、ある人は疑似科学に救いを求める。20世紀が科学の時代だったなんて、信じられない。勝利したのは、科学の装いを凝らした迷信だけだったんじゃない?
斎藤美奈子 「趣味は読書。」 p.188 「話を聞かない男、地図が読めない女」
2009-01-28[n年前へ]
■生き残る「適性」
中桐有道の「「ゆでガエル現象」への警鐘―あなたは大丈夫ですか?」 第一章 「すべての事象は常に刻々と変化する」 p.13より。
生き残るのは、種の中でもっとも強い者ではない。 種の中でもっとも知力の優れたものでもない。 生き残るのは、もっとも「変化」に適応する者である。
チャールズ・ダーウィン
2009-01-29[n年前へ]
■太田光代と「有吉佐和子」
爆笑問題の所属する「タイタン」の社長、爆笑問題の太田光の結婚相手、太田光代の「逆風満帆」から。
心のよりどころになっていたのは、有吉佐和子の小説「悪女について」だった。(中略)波瀾万丈を楽しんで生きる主人公に、光代は自分の半生を肯定された気がした。何度読み返したことだろう。光代のバイブルになった。
2009-01-30[n年前へ]
2009-01-31[n年前へ]
■他人に何かをしたいっていうのは・・・
「彼女たちは小説を書く」より。
他人に何かをしたいっていうのはあんまり思っちゃいけないことと思うけど。コントロール願望につながりかねないから。
赤坂真理「言わなかったこと、言ってもいいこと」