hirax.net::Logos::2009-07

2009-07-01[n年前へ]

「夢をあきらめないで」とは言えないけれど・・・ 

 いつだったか外国で、ふと入ったデパートの中にある本屋の一角で「すべての雲は銀の… 」を手に取った。そして、現地通貨ではずいぶん高い感じを受けつつも買った覚えがある。村山由佳の本は、それ以外に読んだ記憶はない。

 けれど、もう少し読んでみようと思う。

 誤解しないでほしいのだけれど、これは決して、「あきらめさえしなければ夢はきっと叶う」なんてことを言おうとしてるわけじゃないんです。逆に、(・・・中略)実際には世の中、叶わない夢のほうがずっと多いのにね。  だから私は、むやみに「夢をあきらめないで」とは言いません。ただ、(・・・中略)彼は、あるどうしようもない事情から長年の夢をあきらめることを自ら決意した上で、(・・・中略) ----ね? 素敵な言葉だと思いませんか?

from 聞きたい言葉 - おいしいコーヒーのいれ方IX / 村山由佳 文庫版、最初のあとがきから

2009-07-02[n年前へ]

寺田寅彦 妻たちの歳月 

 寺田寅彦 妻たちの歳月

 寺田寅彦といえば、戯歌「好きなもの いちご コーヒー 花 美人 懐手して宇宙見物」で知られるように、科学と文学の間を軽やかに往来したスーパー物理学者である。私もまた、耳の中の音や金平糖の話など日常に潜む不思議を題材にした科学エッセーを愛読してきたひとりだ。

 だが本書を読み、寅彦にもっとも似合うのはそのいずれでもなく、晩年の随筆「曙町より」にある「風呂の中の女の髪は運命よりも恐ろしい」という一節だったと知った。

最相葉月 「寺田寅彦 妻たちの歳月 」への書評

2009-07-03[n年前へ]

力は多くの場合、その人の思いを超えない。 

 北村薫の「秋の花 」から。

 力は多くの場合、その人の思いを超えない。私などが老成したようにいうのはおかしいが、若いうちは尚更だと思う。力の無さからも思いの高さからでもある。

2009-07-04[n年前へ]

おとなの進路教室。 

 ズーニー山田 「おとなの進路教室。 」から。

 自分を説明する言葉は増えた。でも、(中略)素の人間力は、どのくらいついただろうか?むしろ、弱くなった、そんな気がする。
 そこで勝負しないといけない、と私は思う。 (p.63)
 「お金」は、どこからくるか?というと、必ず、「人間」から出てきます。つまり、「一人の人間を喜ばすか、役に立つか」です。(中略)人は、口ではなんとでも言いますが、人のお財布の口は正直です。(p.120)
 いま、私が魅力を感じる人は、お金とか、地位とか、権威とか、自分にはりつける強いアイテムを何ひとつ持たず。「自分はこれからだ」ともがいている人たちだ。(p.187)

2009-07-05[n年前へ]

教科書に書いてある事だけじゃわからない 

BEGIN 「島人ぬ宝

僕が生まれたこの島の空を
僕はどれくらい知ってるんだろう
教科書に書いてある事だけじゃわからない
大切な物がきっとここにあるはずさ

2009-07-06[n年前へ]

片隅に転がる人形のように… 

 鴻上尚史の「表現力のレッスン 」中に引用されている戯曲「ビー・ヒア・ナウ」から。

 僕たちは、片隅に転がる人形のように、自分の人生を捨てながら生きていく。何種類の人形を捨ててきたのかも忘れて、その人形と過ごした幸福な日々も忘れて、僕達は、生きていく。
 だが、ある昼下がり、友人があなたを訪ねる。・・・そして、その人形が欲しいとあなたに迫る。
 その時、人形は蘇る。いとおしさに溢れて、あなたの目の前に蘇る。

2009-07-07[n年前へ]

欲しいと思ったら作ればいい。 

 「黙ってコードを書け」---欲しいと思ったら作ればいい。思うように動かなかったら直せばいい。動かして見せることの説得力が世界を変える。

Shiro Kawai

2009-07-08[n年前へ]

自分の「掌(てのひら)の中」にあるもの 

 加納朋子の素敵なミステリ「掌の中の小鳥 (創元推理文庫) 」から。

(ひとりの子供が)「手の中に一羽の小鳥を隠し持って行って、賢者にこう言うんだ。『手の中の小鳥は生きているか、死んでいるか?』って。もし賢者が『生きている』と答えれば、子供は小鳥を握りつぶす。『死んでいる』と答えれば、小鳥は次の瞬間には空高く舞い上がるってわけさ。
-手の中の小鳥は生きている?それとも死んでいる?
 賢者はこう言ったんだ。『幼き者よ。答えは汝(なんじ)の手の中にある』ってね。
 あなたの手の中には何もないかもしれないし、逆に何だってあるかもしれない。小鳥はもう死んでいるかもしれないし、生きているかもしれない。
 あなたがどんな人間なのか、決めるのはあなた自身なのよ。

2009-07-09[n年前へ]

あぁ、神様オレは、これでいいですか? 

 ウルフルズ「暴れだす

あぁ 神様オレは これでいいですか
本当に何も わからないままで
オトナになって やることやって
ケガの数だけ 小さくなって


Ulfuls - Abaredasu
Uploaded by valemon. - Music videos, artist interviews, concerts and more.

2009-07-10[n年前へ]

つまらないものや無用なもの 

 「知の歴史―ビジュアル版哲学入門 」から。

 自然がつくるものに、つまらないものや、無用なものはない。
ジョン・ロック

2009-07-11[n年前へ]

I ask perfection of a quite imperfect world. 

 The Carpenters ” I Need To Be In Love”(日本語訳付きyoutube)

I know I ask perfection of a quite imperfect world.
And fool enough to think that's what I'll find.
The way that people come and go through temporary lives. My chance could come and I might never know.

2009-07-12[n年前へ]

何を引用するかは、自分の生き方の選択の問題である 

 轡田隆史の『「考える力」をつける本〈2〉―「自分の考え」をどう深め、どう実践するか 』から。

 何を引用するかは、自分の生き方の選択の問題であるはず。引用とは、言葉のことだけをいうのではない。生き方としての行動もまた「引用」できるのである。

2009-07-13[n年前へ]

人を暖かに、いとおしくさせるもの 

北上次郎の加納朋子「レインレイン・ボウ 」への解説。

 保育園に勤務する佳寿美、看護婦の井上緑、そして大手出版社で働く陽子。みんなが幸せな生活を送っているわけではない。がんばってはいるものの、みんなどこかで迷っている。
 これは暖かな一冊だ。いとおしくなる一冊だ。

2009-07-14[n年前へ]

「王立協会会長辞退事件」と「博士辞退事件」 

 「王立協会会長辞退事件」のファラデーの言葉と、「博士辞退事件」の夏目漱石の言葉。

I must remain plain Michael Faraday to the last.
(わたしは ただのマイケル・ファラデーでいたいのです。いままでと同じように、これからも先もずっと。)

Michael Faraday
 小生は今日までただの夏目なにがしとして世を渡って参りましたし、これから先も、やはりただの夏目なにがしで暮らしたい希望を持っております。

2009-07-15[n年前へ]

「問い」と「考え方」 

 轡田隆史「「考える力」をつける本―新聞・本の読み方から発想の技術まで 」から。

 良い問いは答えより重要だ。

数学者 リチャード・ベルマン(霧中で影あつめ
 「なぜ?」と問いかけつづけることによって、枝葉末節はせいりされて、そのそこから、「考え」の本質ともいうべきものが、ゆっくりと姿を見せてくる。
 「考え方」とは、自らに「なぜ?」と問いかけながら深さを獲得してゆく方法ではなかったのか。多くを考えて、多くを捨てる。「考え方」とは、問いかけによる「削り方」なのである。

2009-07-16[n年前へ]

リッチなフォークとビンボーなフォーク 

 「(井上)陽水だの(吉田)拓郎も、お前と同じフォーク歌手なんだろ?なんであいつらがあんなにレコード売れて金持ちなのに、お前はそんなにビンボーなの?」という赤塚不二夫の問いに対して、なぎら健壱が答えた言葉(赤塚不二夫の「人生これでいいのだ!!」―元祖ギャグの天才と愉快な仲間たちの超おもしろエピソード! から)。

 フォークにはリッチなフォークとビンボーなフォークがあって、一度どっちかを選ぶともう変えられないんです。

2009-07-17[n年前へ]

馬鹿を直す必要はない。利口を直したほうがいいのだ 

 武井俊樹「赤塚不二夫のことを書いたのだ!! 」の中に紹介されている、赤塚不二夫が「プレイボーイ」の「人生相談」で語った言葉。

 「ただ馬鹿っつったって、本当の馬鹿じゃなきゃ駄目なんだからな。知性とパイオニア精神にあふれた馬鹿になんなきゃいけないの。立派な馬鹿になるのは大変なんだ。だから、馬鹿になる自信がなかったら、ごく普通の利口な人でいたほうがいいよ。要するに、馬鹿を直す必要はない。利口を直したほうがいいのだ」

2009-07-18[n年前へ]

「自分が選ぶであろう道を絶対に反対しないと思われる人」 

 小倉千加子「シュレーディンガーの猫―パラドックスを生きる 」の「絵巻物にされた未完の物語~小和田雅子さんのメッセージ~」から。

 人は決断に迷うとき、自分が選ぶであろう道を絶対に反対しないと思われる人と物理的に距離を縮めていく。

2009-07-19[n年前へ]

「欠点」と「美点」 

 寺田寅彦の「柿の種 (岩波文庫) 」から。

 自分の欠点を相当よく知っている人はあるが、自分のほんとうの美点を知っている人はめったにないようである。欠点は自覚することによって改善されるが、美点は自覚することによってそこなわれ亡(うしな)われるせいではないかと思われる。
 もし、「この一文について論ぜよ」というレポート課題を与えられたら、一体どのようなことを考え・書くだろう。

 「欠点」は自覚すると、改善はされても消えることがなく、「美点」は自覚すると、姿なく消えるのだろうか。欠点と美点は、1枚のコインの裏表のような関係にあることが多い、とも思う。寺田寅彦を洞察をこの一文に重ねてみると、そこから一体どんな推論ができるのだろうか。

2009-07-20[n年前へ]

"tube"という言葉は1950年代に生まれた 

 "tube"とは。 from 「バック・トゥ・ザ・フューチャー―名作映画完全セリフ集 (スクリーンプレイ・シリーズ)

 1950年代には「エド・サリバン・ショー」「アイ・ラブ・ルーシー」「パパは何でも知っている」など名番組が次々と誕生しました。(中略)そして当時の若い人たちは受像機のことを"tube"と言うようになりました。すなわち「ブラウン管(ドイツの物理学者、カールブラウンが発明した)」です。

 「あなたの"tube"」は何ですか?

2009-07-21[n年前へ]

50%のうまくいく可能性を四捨五入しちゃえば… 

 加納朋子の「ななつのこ (創元推理文庫) 」から。

 結局、世の中なんて、うまくいくか、いかないかのどっちかよ。まあ統計学的にみて、五十パーセントはうまくいくわけですよね。四捨五入しちゃえば、十割だわ。

2009-07-22[n年前へ]

占いに頼る人々 

 小倉千加子「シュレーディンガーの猫―パラドックスを生きる 」の「占いに頼る人々」から。

 この世は偶然性に満ちている。(中略)早く気づく人ほど占いに頼る。それが、女性である。男性であれば芸能人や政治家などの「他者依存的」職業の人である。そして男女を問わず「親」である。親は、自分の能力や努力や意志でコントロールできない、自分よりも寿命の長い存在を産むため、世界の不確定性をより強く実感するからである。
 すなわち、占いに頼る人々とは、被暗示性の強い非科学的精神の持ち主というより、むしろ合理性のない社会に、獣道を探すように合理性を探求しようとしている人々なのである。だからこそ、占いは、ありとあらゆる方法で科学的合理性を身にまとおうと、科学的根拠を謳う。

2009-07-23[n年前へ]

配られたカード 

 ランディ・パウシュ「最後の授業 ぼくの命があるうちに 日本語字幕付きDVD付き版 」から。

 配られたカードを変えることはできない。変えられるのは、そのカードでどのようにプレーするかだけだ。

2009-07-24[n年前へ]

矢野顕子「ひとつだけ」 

 矢野顕子「ひとつだけ」

欲しいものは たくさんあるの

2009-07-25[n年前へ]

此処では喜劇ばかり流行る 

 向田邦子「阿修羅のごとく―向田邦子シナリオ集〈2〉 (岩波現代文庫) 」のパート1の最終話「虞美人草 」から。

あのね、漱石の「虞美人草」の、ケツ
おしまいンとこ。何てのか知ってる?
「此処では喜劇ばかり流行る」

2009-07-26[n年前へ]

合理性が省くものとは何か 

 赤坂真理「モテたい理由 (講談社現代新書) 」から。

 しかし、合理性が何を省くかというと、時間であり、感情とその成熟である。

2009-07-27[n年前へ]

「人材」と「人財」の違いって・・・? 

 「人材」と「人財」の違いって・・・?

 この「材」という字は、中国語で「木」のようにまっすぐ才能を伸ばすという意味があります。一方、「財」のほうは、「木」ではなく、「貝」、すなわち元々は「お金」のことです。
同じ漢字でも、中国では全く違う意味ですね(^^; 人材は人才とも書いて、才能がある人と言う意味です。 人財は中国では、人とお金両方を言ってます。 だいたい、目的よくない人の事を指してます。
 まっすぐに伸びる「木」のような才能、「人材」のほうが、人を大切に扱っているように思うのですが…如何でしょうか。日本では全く逆の考え方もあるようですね。「人は材料じゃないよ。豊かな暮らしを作り出す財産、宝物だよ」と。

2009-07-28[n年前へ]

見かけの特性にごまかされない眼力 

 小林芳直回路の回り道―ASIC設計のセンスを磨く散策のとき (CQ BOOKS)」から。

 オーディオでも電子機器でも、本当に重要なのは波形伝送である。スペックには測定しやすい周波数特性が書かれているが、現実的な性能を示すのは群遅延特性とかトランジェント特性であることが多い。
 見かけの特性にごまかされない眼力がほしいものだ。

2009-07-29[n年前へ]

阿修羅像の身の丈 

 向田邦子「阿修羅のごとく―向田邦子シナリオ集〈2〉 (岩波現代文庫) 」の「解題」から。

 余談であるが、「阿修羅のごとく」のタイトルロールに流れた、天平時代の傑作のひとつ興福寺所蔵の阿修羅像は、慎重153センチ。向田邦子とほぼ同じ背丈である。

 余談だが、西暦2000年1月に岩波現代文庫が記した「岩波現代文庫の発足に際して」は、21世紀に立つ私たちにとっては、必見の文章であると思う。

 新しい世紀が目前に迫っている。しかし20世紀は、(略)

2009-07-30[n年前へ]

身体がつないできた記憶 

 赤坂真理「モテたい理由 (講談社現代新書) 」から。

上体をリーンアウトにしてバランスをとる。(中略)シンプルな物理学を体で信じる幸せ。オフロード車の2ストロークエンジンが燃やす、エンジンオイルの甘い匂い。
 心がなんとかつくろおうとした物語でなく、身体がつないできた記憶。そんな意味のなさに私は助けられていたのかも知れないと思うことがある。

2009-07-31[n年前へ]

「広告」と「情報」の違い。 

 「スラムダンク」好きの人は、一度、読んでみると良いかもしれない。

 ボクは高校大学時代、広告に強く憧れた。
 佐藤尚之「明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法 (アスキー新書 045) 」から。
 消費者が検索した言葉に対応して、そこに消費者のニーズに近い一行広告を載せるもので、それはまさしく「その消費者のニーズに最適化されたコミニュケーション」である。
 たとえばグーグルのアドワーズなどその典型である。
 それは広告ではなく、単なるインフォメーションなのだ。相手の心を動かすことはできない。
 広告とは相手の心を表現で動かすものでないといけない。