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大阪大学 2017年度前期日程「物理」を「面白い物理エッセイ」として読んでみる


 大阪大学 2017年度前期日程「物理」で、出題ミスがあったというニュースを見た。その問題文と想定正解、 さらには、その「解説」を読みました。その問題文を眺めた結果、この「問題」が「とても勉強になる「物理現象の解説エッセイ」のようで、とても面白かったので、少し感想を書いてみることにします。「ニュース」として扱われた内容としてはともかく、…少なくとも私にとっては、とても興味深い「問題」でした。

 問題内容は、壁から離れて(壁から垂直に走る直線上に)位置する音叉とマイクを登場人物として、その1次元的世界での「音波」を扱うものです。

 ネットで、(右に画像として貼り付けた)問題文の一部を抜き出したもの読んだ時、最初に想像したのは「十分に小さく点音源として扱える音叉」という文言が「全ての原因ではなかったか?」という想像です。すぐに、この想像は間違っているということがわかるのですが、「音叉」を「限りなくシンプルな振動体(面)」として考えてしまったことで、1次元として扱われる世界上の「音叉の前後」で「同じ向きの空気変位が生じる」と考えるか、それとも「音叉の前後で同じ空気密度の振動が生じる」かで、(前者なら)当初の「正答」が導かれるし、(後者なら)追加された「答え」が生まれし…というものです。
 「音叉=振動する物体の象徴」として単純に捉え、(いくつかの考えたくないことを省略するために&考えたい現象を単純・抽象化して光を当てるために)世界を1次元として取り扱おうとするならば、「(限りなく大きさ影響を無視できる)点音源の音叉」は「1次元上の振動点=3次元上の振動面」として取り扱い(考え)たくなり、そのような3次元空間内に配置された振動面の前後では、「同じ向きの空気変位が生じる」ことから、当初の正解が導かれたのではないだろうか?という予想が、一番最初に頭に浮かんだ想像でした。…しかし、そんな想像は間違っていることがすぐわかりました。

 なぜかというと、関係する出題文全文を読んでみると、「音叉という物体」の振動を、どのように扱うかについて、そしてまた変位と粗密の関係について、出題者は問題の冒頭から(常識とは言えない内容については)詳しく丁寧に解説し、テスト対象とならない単純な事項についてもやはり丁寧に確認を行っているからです。(それに対して、この解説などは問題文の一部しか読んでいない雑な説明であるように感じられます)
 つまり、2本に先が分かれた音叉が振動する時に生じる振動モード、その基本となるモードが生み出す「空気の動き」は、音叉が左右対称になる方向から見た時に、「(右に貼り付けたGIF動画のように)音叉に対して左右対称の疎密波が作り出される(変位としては逆方向の空気の動きが生成される)」ということ、あるいは、1次元世界でなくてたとえ3次元世界でも「音叉の振動は点音源として取り扱うことができる(方向によって点音源から発せられる粗密の位相は異なるけれど、1次元近似なら完全な点音源として取り扱うことができる)「ということを、問題文の前半できちんと「解説・確認」しているからです。(この「この記述があるのに問4で間違えたのが解せないんだよね。という言葉に100%同意する具合です。ただし、こうした知識を持ち、丁寧に順を追った解説まで行う出題者が壁の”反射”を取り違えるような取り扱いをするとは全く感じられません。定義の取り違えではなく、単純な忙しさなどからくるケアレスミスなら理解できるのですが・・・)
 それに対して、出題者が壁を「境界条件」どのような境界条件で取り扱うかを間違えたということは、個人的には可能性は低いことだと感じます(後で書くように、音叉の振動現象に対して、問題文の前段であれだけ丁寧に解説をされた出題者が、「固定壁」という言葉の意味を世間がどうとるかを考えなかったという田口先生の解釈は無理があるように思います。また、波動方程式として、普通に境界条件を設定して解くことができる一般的な問題であるとも思います)

 ちなみに、「手元からUの字型に中心に支持部が伸びた音叉の形」や「そのような形の音叉がこのような振動を行う」ことは、(振動吸収体である)手に持った音叉が単振動を持続して行うための必然であることは、少し考えれば想像が付きます。その形は、出したい振動モードを持続されるとともに、不要な振動モードを(音叉を掴む)手が迅速に行うための実に素晴らしい設計結果です。何が言いたいかというと・・・この物理問題は、そんな音叉にまつわる「物理現象」を溢れるくらいの十二分に知っている先生が、物理現象というものの面白さを踏まえて書いた内容であることは、間違いないように思われます。

 今回の「いわゆるひとつの出題ミスとその後の対応」に関しては、何かの「ケアレスミスや伝達ミスが重なって」生まれたものではないか?と想像します。つまりは、この「きっといろいろ考えて問題を作ったんだけど、一周回って悪問になっただけだと思います」という感想に近いのですが、「一周回って悪問になった」のではなくて、何か単純なケアレスミスが「(答えが違っている)悪問」を生み出してしまい、そしてまた何かの伝達ミスが「その後の対応」を生み出してしまったのではないか?と感じました。

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