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2010-05-26[n年前へ]

「陰日向に咲く」 

 ずっと観たいと思っていたけれど、ずっと観ないでいた、「陰日向に咲く」を観た。

 物語というのは、こういうものなのかと思う。そして、映像というものはこういうものなのか、と知る。

文字を綴(つづ)った文章で、描かれる対象が小刻みに入れ替わってしまえば、その意味を追うことができないものになってしまいそうだ。しかし、それが映像ならば、私たちはそこに写る映像の印象とともにそれを見分けつつ、そして、それと同時に、それをひとつに溶け合った大きな物語として感じることができるようになる。

 物語の縦糸を紡ぐのは、人と人とが出会うことの奇跡。偶然オレオレ詐欺の電話に出た老婆と心を通わせ、自らの過去と向き合うことになるシンヤ。寿子は、シンヤと共に母のかつての恋を追う過程で、自らの殻を破っていく。鳴子は雷太との、リュウタロウはモーゼとの出会いをきっかけに、新しい生活に足を踏み入れる。そして、みゃーこを一途に応援し続けるゆうすけにも、思いがけない「再会」が…。

 小さな出会いが重なり合い、やがて忘れかけていた家族の絆や初恋の切なさが浮き彫りになっていく。そして、彼らが明日への一歩を小さく踏み出す瞬間に見せる清々しい表情。そこに待ちうけるのが必ずしも「日向」でないことはわかっていても、人生に無駄な出会いなど決してないと、深くうなずかされるはず。



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