2011-05-13[n年前へ]
■持ち続ける「パンドラの福袋」
角田光代「福袋 (河出文庫) 」から。
ひょっとしたら私たちはだれも、福袋を持たされてこの世に出てくるのではないか。福袋には、生まれ落ちて以降味わうことになるすべてが入っている。希望も絶望も、よろこびも苦悩も、笑い声もおさえた泣き声も、愛する気持ちも憎む気持ちもぜんぶ入っている。「福」と袋に書いてあるからってすべてが福とはかぎらない。袋の中身はときに、期待していたものとぜんぜん違う。…ほかの袋を選べばよかったと思ったりもする。それなのに私達は袋の中身を捨てることができない。
角田光代「福袋」
角田さんの小説は人生を手ばなしに肯定しない、否定もしない、あるがままの人生が描かれている。…私達は福袋の中身を選べない。捨てることもできない。…私たちにできるのは、味わうことだけだ。すべてを自分だけのものとして、一生かけて慈しみ、ひたすら愛でるのだ。
栗田有起「解説」
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