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2009-02-19[n年前へ]

ボックスシート 

人生という名の列車  少し長い距離を走る列車には、二人がけの席が対面式に向かい合う「ボックスシート」がある。そんなボックスシートに座るとき、どの席に座りたいだろう。窓側だろうか、それとも通路側だろうか。新たな景色が遠くから迫ってくるようすが見える(列車の進行方向に向かう)側の席だろうか。それとも、そばを通り過ぎたものが、段々と遠ざかっていくのが見える(列車の後方を眺める)側の席だろうか。

 以前は、遠くの小さなかすかなものが大きくはっきりと見えてくるののが、そしてそれが明瞭になるさまを眺めるのがとても大好きだった。だから、いつも列車の進行方向が見える席に座っていたように思う。

 しかし、ふと気づくと、最近は列車の後方が見える側の席に好んで座ることが多くなっている。横を通り過ぎたときにはよく見ることができなかった景色が、小さくなっていくようすを眺めることが、そんな遠くへ過ぎ去っていく景色を見ることの方が気持ちよくなってきたような気がする。

 もしかしたら、それは動体視力が落ち、老眼が進んできたせいかもしれない、とも思う。若い頃は、視力が良くて、遠くの小さな景色が近くまで迫ってくるさまも全部見えていたけれど、今では近くのものは見えなくて、速く動くものも見えなくて、遠くのものしか見えなくなりつつあるせいかもしれないとも思う。……けれど、こんな風にも思う。

きっと僕は尋ねられたんだろう
生まれる前 どこかの誰かに
「未来と過去 どちらか一つを
見れるようにしてあげるからさ
どっちがいい? どっちがいい?」
そして僕は過去を選んだんだろう
RADWIMPS 「オーダーメイド」

 走る列車は人生に似ている。そして、私が乗っている列車は、もう中間地点を過ぎた走っているのだろう。マラソンで例えれば、中間往復地点を過ぎた辺りを走っているように思う。未来よりも、過去の方が長いくらいの場所を、今は知っているのかもしれない。

 そして、それに応じて、「ボックスシート」に座る時の好みが変わってきたのかもしれないと、ふと考えた。



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