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2011-09-04[n年前へ]

「虹色のバラ」と「国際特許というハッタリ」 

 染料を混ぜた水に切り花を挿すと、その花はその染料の色に染まります。そのため、ちょっとした細工をすれば、右のような虹色に彩られたバラを作り出すこともできたりします。また、バラは比較的日持ちするという理由で、こうした美しいバラは通信販売されていたりもします。

 通信販売サイトを眺めていると、「色の染め上げ技術には、国際特許が取得されています」という言葉が書いてありました。また、"Wikipediaの"Rainbow Rose"を見ると、同じような文言が並んでいます。

 TheIn 2004, they developed a method of adding color to the petals of chrysanthemums and applied for a worldwide patent.
 なにやら、ホラ(ウソとも言う)の香りがプンプンします。「国際特許」なんて存在しないよね?とか、”Worldwide Patent”って何それ…?といった当然の疑問が頭の中に浮かんでくるわけです。特許というものは、(EU含む)国別それぞれに分かれています。「国際特許」なんてものは存在しないのです。存在しないものを「取得」していると書いているということは、これはウソ(営業上のハッタリ)か、何かの勘違いである、ということになります。

 そこで、もう少し調べてみると(こういう調査は事件調査と少し似ています)、Rainbow Roses の製造・販売元である River Flowers が特許申請した件というのは、PCT国際出願制度を利用した”WIPO Patent Application WO/2007/055565” "METHOD AND APPARATUS FOR COLORING FLOWERS, AND CLEAVING ELEMENT, HOLDER AND ASSEMBLY OF CLEAVING ELEMENT AND HOLDER"のようです。PCT国際出願制度というのは、各国に特許出願する手続きを簡略化する制度ですが、あくまで「出願への入り口」とも言うべき手続きに過ぎません。実際に特許を取得するまでには、「各国語での特許申請」やら「(日本で言えば)審査請求(特許を審査して下さいという手続き)」などを進めていかなければなりません。

 しかも、WIPO Patent Application WO/2007/055565のステータスを眺めてみれば、出願国内(欧州特許庁)ですら「出願取り下げ」となっています。出願国ですらそういう状態ですから、その他の国は言わずもがな…です。

 という具合で、やはりウソくさい「国際特許を所得している」”applied for a worldwide patent”という売り口上は営業上のハッタリ・ウソだったのだな、ということがわかるわけです。

 現状のWikipediaは、自己宣伝による書き込みが多くされたものとなっていますから、"Wikipediaの"Rainbow Rose"も製造メーカー自身が作成したものなのでしょう(あるいは、販売元のビジネス・トークを真に受けた誤解が書かれているのかもしれません)。

 それはさておき、虹色のバラは不思議な趣があって、少し魅力的です。「虹色の綺麗なバラ」と「国際特許というハッタリ」は似合わないような気もしますが、美しい花は一筋縄ではいかないトゲを持ち・何かしらのウソで自らをを彩り飾っている…というのも、またひとつの真実であるようにも思います。そんな風に考えてみれば、「不思議な美しさを感じさせるバラ」と「国際特許というウソとハッタリ」は、実はとても似合っているのかもしれません。



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