2011-07-22[n年前へ]
■「下を向いて落ちている花」と「上を向いて落ちている花」
台風が近づく雨の中、道路の上に白く大きな花がたくさん落ちていることに気づきました。興味深いことに、その白花はほぼすべてが下向き、俯(うつむ)くようにして落ちていました。雨に濡れた路面に落ちる数多くの白くて大きな花を写真に撮ったのが、下の写真です。たくさんの花びらが、ほぼすべての花びらが、花びらを下に向けて落ちている・茎を空に向けて落ちていることを少し不思議に感じる風景です。
このようなさま・このような結果を生み出すような仮説はいくつも作ることができます。たとえば、「この花の形状から導かれる重心と空気抵抗のバランスにより、路面に落ちる花は必ず下を向いている」とか、「路面に落ちる時には上を向いているものもあれば・下を向いているものもある…けれど、濡れた路面と花の付着力は下向きの場合の方が接触面積が多いために強く、風が吹く状況下では、次第に(落ちた花は)結果として付着力が強い”下を向いた状態”のものが多くなる」といった…たくさんの仮説を作ることができます。
そういえば、寺田寅彦は「椿の花がうつ向きに落ちている」ことを、随筆中で度々言及したように思います。(ある状況下では)上を向いて落ちている花種もあれば、下を向き落ちている花種もあるかもしれなく。その違いを生む形状やメカニズムを考えることは、何の役に立つのかはわからなくとも、少し魅力的です。
今朝も庭の椿が一輪落ちていた。調べてみると、一度うつ向きに落ちたのが反転して仰向きになったことが花粉の痕跡からわかる。
「曙町より(2)」寺田寅彦
自分用に「花辞典」を作るなら、そんな辞典を自分の手で作るなら、開花時期や色といったものだけでなく「下を向いて落ちている花」と「上を向いて落ちている花」といった区別も書き入れようと思っています。…ところで、この花の名前は何でしたっけ?
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