■視点
ここにいるよ
長野県の須玉にある病院で撮影した写真である。古い顕微鏡を光が照らそうとしている。顕微鏡を覗いてみたが、レンズが汚れているせいかうまく焦点を合わせることができなかった。光学系にとって焦点をいかに先鋭にするかは一番苦労するところである。
景色に焦点を合わせて、フィルムに結像させるのがカメラだ。しかし、フィルムに写っているのは単なる景色ではない。カメラの光が集まる焦点にフィルムが位置していると思い込むとわからなくなる。逆から考えてみれば簡単に判るはずだ。カメラの視点にフィルムが位置しているのだ。フィルムに景色が写っているのではなく、フィルムが景色を選び、景色を切り取っているのである。
写真に写っているのは、撮影者の視点なのである。写真を見れば、撮影者が、どこに立ち、何を見てるかが浮かび上がってくるはずである。フィルムに写っているのは撮影者自身なのだ。