江國香織 「十五歳の残像 」から。
長塚さんが聡明なひとなのはすぐにわかった。最初にした写真撮影で、カメラに向かう姿がとても美しかったから。
そうなのだ。私たちは今の長塚京三さんを見る。それが全部。聡明なひと、というのはつまり、絶望の認識のあるひと、ということなのだろう。
ただし、長塚さんの言葉にはとても肯定的な響きがあって、…私はちょっとほっとした。ほっとするのも変だけど。 「モノトーンのひと――――長塚京三さん」