2012-05-20[n年前へ]
■「太陽(日食)観察」と「黒マルチ(黒色マルチフィルム)」
日食観察をするための「黒色メガネ」がコンビニや100円ショップに並んでいます。強い太陽の光を直射した際に、目を痛めることがないように、光を弱めるメガネです。
小学校低学年の頃、理科の授業で「太陽観察」がありました。太陽観察をするための「黒色メガネ道具の選び方・作り方」の説明を受けている時、こんな会話がありました。
「黒マルチじゃダメ?」(生徒)
「ダメです」(先生)
黒マルチというのは「黒色マルチフィルム」の略です。 畑の土の上に貼ってあったりするアレです。 当時、高原野菜の産地に住んでいたので、学校(分校)の周りには、黒マルチがたくさん貼られていたのです。
「黒マルチ」と言っても、特性はものによって違います。 共通点は、「(人が眺めることができる)可視光波長を吸収するので、黒く見える」ということだけです。
「可視光」は波長がおよそ400〜700μmです。 植物が育つには、波長400〜500μm・600〜700μm程度の光が必要です。 …ということは、育てたい植物を植えた周りの土を覆うように黒マルチを貼ると、雑草などが生えてくるのを防ぐことができるわけです。
そして、可視光より(波長がさらに長い)領域を考えてみると、波長が700μm以上の光、近〜遠赤外光を吸収してしまうタイプ「黒マルチ」は、日傘を差しているようなものですから、陽光で土が暖まることを防ぎます。 つまり、赤外光を透過させないタイプの黒マルチは、「地温上昇を防ぐ」のです。
その一方で、その逆の黒マルチ、赤外光を透過させるタイプの「黒マルチ」は、土を多少暖める効果を持つということになります。 多少、というのは「可視光を遮っている分の損失」があるからです。 「地温を上昇させること」を第一優先にするならば、「(可視光も吸収せず・透過させる)透明フィルム」を畑に貼れば、つまり畑をビニールハウス状に包んでやれば良いわけです。
「黒い色」の特性にも色々あって、植物を育てるためにも、どんな植物を何処で育てるかといったことにしたがって、どのような「黒マルチ」が使われるかが変わるのです。
それと同じように、太陽(日食)観察をするにも、目には同じ黒色に見えたとしても、目を守るために必要とされる「黒色」があったりもします。
紫外線の影響を考えなければ、日食観察には「地温を上昇させないタイプの黒マルチ(黒色マルチフィルム)」を探し・使えば良かったのだろうか?などと考えつつ、「太陽(日食)観察をするための道具選びという”入り口”からでも色々なことが見えてくる・考えさせられるなぁ…と思うのでした。