2009-07-21[n年前へ]
■宇宙から地球を眺める「ひまわり」が写す月影と雲の川
7/22の日食時を、宇宙から人工衛星「ひまわり」が撮影した動画・画像が不思議に気持ち良い。特に、動画で時系列的に眺めていると、太陽に照らされた地球の上を動く雲や、あるいは、太陽と月が描き出す「月の影」が地球表面を動いていくようすを眺めていると、「精巧で科学の粋を詰め込んだ地球儀」を見つめているような心地になる。
月の影は、もちろん幻想的だ。その月の影の中は、一瞬のうちに夕焼けから夜の闇、そして朝焼けの瞬間を迎えているのかと思うと、とても不思議な気持ちになる。
そして、月の影だけでなく、東南アジアから日本列島を過ぎ、アリューシャン列島から遥かアラスカの方まで雲が流れ過ぎていくさまも、実に小気味良く見える。その雲の流れは、あるで、小さな川の流れのようだ。
…と、そんな感想だけを書き連ねていても今一つつまらない。そこで、少し見にくい「月の影(静止画)」を、もう少し見やすいように加工処理してみた。それが、右上の画像だ。日本列島を覆うほどの「月影」が実に不思議だ。
2012-05-20[n年前へ]
■「太陽(日食)観察」と「黒マルチ(黒色マルチフィルム)」
日食観察をするための「黒色メガネ」がコンビニや100円ショップに並んでいます。強い太陽の光を直射した際に、目を痛めることがないように、光を弱めるメガネです。
小学校低学年の頃、理科の授業で「太陽観察」がありました。太陽観察をするための「黒色メガネ道具の選び方・作り方」の説明を受けている時、こんな会話がありました。
「黒マルチじゃダメ?」(生徒)
「ダメです」(先生)
黒マルチというのは「黒色マルチフィルム」の略です。 畑の土の上に貼ってあったりするアレです。 当時、高原野菜の産地に住んでいたので、学校(分校)の周りには、黒マルチがたくさん貼られていたのです。
「黒マルチ」と言っても、特性はものによって違います。 共通点は、「(人が眺めることができる)可視光波長を吸収するので、黒く見える」ということだけです。
「可視光」は波長がおよそ400〜700μmです。 植物が育つには、波長400〜500μm・600〜700μm程度の光が必要です。 …ということは、育てたい植物を植えた周りの土を覆うように黒マルチを貼ると、雑草などが生えてくるのを防ぐことができるわけです。
そして、可視光より(波長がさらに長い)領域を考えてみると、波長が700μm以上の光、近〜遠赤外光を吸収してしまうタイプ「黒マルチ」は、日傘を差しているようなものですから、陽光で土が暖まることを防ぎます。 つまり、赤外光を透過させないタイプの黒マルチは、「地温上昇を防ぐ」のです。
その一方で、その逆の黒マルチ、赤外光を透過させるタイプの「黒マルチ」は、土を多少暖める効果を持つということになります。 多少、というのは「可視光を遮っている分の損失」があるからです。 「地温を上昇させること」を第一優先にするならば、「(可視光も吸収せず・透過させる)透明フィルム」を畑に貼れば、つまり畑をビニールハウス状に包んでやれば良いわけです。
「黒い色」の特性にも色々あって、植物を育てるためにも、どんな植物を何処で育てるかといったことにしたがって、どのような「黒マルチ」が使われるかが変わるのです。
それと同じように、太陽(日食)観察をするにも、目には同じ黒色に見えたとしても、目を守るために必要とされる「黒色」があったりもします。
紫外線の影響を考えなければ、日食観察には「地温を上昇させないタイプの黒マルチ(黒色マルチフィルム)」を探し・使えば良かったのだろうか?などと考えつつ、「太陽(日食)観察をするための道具選びという”入り口”からでも色々なことが見えてくる・考えさせられるなぁ…と思うのでした。
2013-12-01[n年前へ]
■2035年9月2日に「日本列島を横断していく月の影」
今この瞬間から20年以上も先の未来、2035年9月2日の10時前後に、北関東の能登半島から鹿島灘を横断するように皆既日食が日本列島を横断していきます。時速数千キロメートルの速さで、太陽の光を地表面から遮る月影が地表を高速に移動していきます。そんな2035年9月2日に「日本列島を横断していく月の影」をMitaka(国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト)で眺めてみました。
月影は、地表上を西から東へと時速数千キロメートルの速さで動いていきます。太陽の姿を全て隠すわずか直径200kmほどのピンポイントの本影領域と、それより遙かに大きく(地表に)拡がる半影領域が、太陽に照らされた地球表面を走り去っていきます(橙色の線で広く描かれた領域が半影で、限りなく狭く塗り潰されているのが本影領域です)。こんな映像を眺めると、皆既日食を見ることができる時間や場所が、本当に狭く限られているのだということに気づかされます。
ずっと先の未来に起きる「月影の日本縦断飛行」を眺めることは難しいかもしれません。けれど、もしも可能なら、こんな限られた時間や場所に佇み・景色を眺めてみたいような気がします。もしも、そんな時空間を共有することができたなら…とても幸せかもしれませんね。