2010-03-29[n年前へ]
■飲んでいることを忘れたいから酒を飲むという「星の王子さま」に登場する問答を。
角田光代の「酔いがさめたら、うちに帰ろう。 」(鴨志田穣)への書評から。
なぜ酒を飲むのか、飲んでいることを忘れたいからだという、「星の王子さま」に登場する問答を幾度も思い浮かべた。
いってはいけない場所は避けて生きる。それが正論だが、人生は正論にはおさまらない。生きることはかくも理不尽である。それでもこの小説が絶望に彩られていないのは、「帰りたい」、そう切望する場所を、理不尽な「僕」が諦(あきら)めることをしないからだろう。
「酔いがさめたら、うちに帰ろう。 」の「僕」は、とても理不尽で不器用で、その理不尽で不器用な「僕」が生まれてからの話、そして、「彼女」と描く-西原理恵子-のもとに、やはり限りなく不器用に「帰る」までの話である。「帰る」ことができた一節には、「帰りたい」と切望したその場所の大きさと魅力が透けて見えてくる。
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