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2015-04-29[n年前へ]

オランダ風景画で印象的な「画面を広く占める空」の不思議? 

 オランダ風景画を見るたび、そこに描かれている「遙か遠くまで広がる空」が印象的だった。たとえば、オランダ風景画でGoogle画像検索すると、キャンバスの2/3くらいの広さに青い空と横方向に延びる白い雲が描かれていて、その景色がとても印象的だ。それは、たとえば、日本の油絵風景画でGoogle画像検索してみた結果と比べると、その違いがよくわかる。日本の風景画では空はキャンバスの上部1/4程度を占めるに過ぎない。

 けれど、実際に平らな地形が遙か彼方まで続くオランダで過ごしてみると、オランダ風景画に描かれた「地平線」は確かにあの位置で合っていて、視界の上部2/3領域は、ほぼ空で占められているように感じてしまう。地平線は視線の高さにほぼ位置するはずだが、実際にその高さに地平線があると、(幼い時期を高い山に覆われた長野県の野辺山で育った人間としては)感覚的には、それより遙かに広い部分を空が占めているように感じてしまう。高村光太朗は、智恵子抄に「智恵子は東京に空が無いと言う」と書いたが、おそらく智恵子がオランダに来たならば、「オランダには空が有りすぎる。ほんとの空が見たい」と、遠くを見ながら言いそうな気がする。

 不思議なのは、なぜここまで日本の景色とオランダの風景で地平線の高さが違って感じられるかだ。たとえば、山が多い日本の風景を眺めるとき、10キロメートル先に標高差1000メートルの山があったとする。その山の高さは目の高さよりも6度くらい上方に位置するに過ぎない。人の視界は上下方向におよそ60度くらいだと聞くから、(日本における山の存在が地平線の高さに与える影響が)6度程度だとしたら、それはたかだか画角上で高々10パーセント程度の違いにしかならない。…しかし、それは実際の感覚とずいぶん違う。

 地平線近くに位置する月は、本来の大きさに比べてずいぶん大きく見える。それと同じように、地平線近くでは、わたしたちの感覚は角度方向を大幅に増幅させる効果でもあるのだろうか?…オランダ風景画で印象的な画面を広く占める空は、実際の感覚と極めて良く一致する。しかし、その現象と一致する説明は、頭の中でまだ行うことができない。

オランダ風景画で印象的な「遙か遠くまで広がる空」のヒミツ!?








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