2015-11-27[n年前へ]
■Ricoh ThetaSで全天周/HDR/立体動画の撮影に挑戦してみる その1
周囲360度、もう少し正確に言えば立体角にして約4πステララジアンの全天周を撮影することができるRICOH RICOH THETA S の撮影動画を、よりリアルに拡張してみたくなりました。そこで、「HDR(High Dynamic Range)」「立体(奥行き)」という2つの軸、つまり、明るさの幅と階調性および3次元的な距離感を、複数のThetaSを組み合わせて撮影する実験を始めました。
本来、ThetaSは2台の魚眼撮影を表裏にコンパクトに組み合わせることで、全天周撮影を可能にしているところに特徴(および特長)があります。それに対して、HDR撮影や立体撮影を行いたい場合は、役割が異なる複数のカメラを概略球面状に配置するような構成にしたくなります。そのため、多数のThetaSを組み合わせて全天周/HDR/立体動画を撮影しようとすると、「非常にバランスが悪い」構成になってしまいそうです。そこで、今回は、最小限のRicoh ThetaS2台をコンパクトに使い、全天周/HDR/立体動画の撮影に挑戦してみることにしました。
使うシステムは、右画像のように2台のThetaSを配置した機材です。ひとつは2台のThetaSを3脚上に鉛直に配置したもので、もうひとつは水平に配置したものです。このような配置にした上で、HDR撮影を行いたい場合には、各ThetaSの露出条件を変えつつ動画撮影を行い、異なる2種の露出による動画を組み合わせてHDR全天周動画を撮影します。また、それぞれのカメラから撮影された画像の「視差」から、奥行き情報(距離マップ)を作成することで、3次元情報も持った全天周動画を作りだそう、という狙いです。
- 水平配置:正面(前方)および背面(後方)に対しては、各カメラで撮影された映像をそのまま左右の目用の画像として用いれば、自然な立体動画を撮影することができます。ただし、(左右にカメラが配置されているため)左右方向には他カメラが写っていて、全天周撮影が一部阻害されているというデメリットがあります。また、左右カメラから視差(距離)情報を得ることができるのは、正面・上面・下面・背面を”黄道”状にとりまく領域で、左右方向には距離を(理想的な場合ですら)得られない方向があります。また、HDR撮影する時には、左右カメラが担うべき露出役割には、特に必然性はありません。ひとことで言うと、「前後方向には(HDR撮影を行わなければ)安易に立体視ができる」システムです。
- 鉛直配置:鉛直上下に配置することで、上部カメラには全く「他カメラにより遮蔽される領域(ケラレ)」はありません。また、景色というものは一般的に、上部と下部で明るさが大きく異なっているのが普通です。たとえば、星空と街の夜風景、あるいは、明るく輝く太陽や雲と、木陰に隠れた暗い領域…つまり、この構成では上部カメラと下部カメラの露出条件には必然性が生まれます。また、上下部カメラから直接立体視をすることはできませんが、鉛直方向2台のカメラの視差から距離情報を得ることができる方向は、水平方向360度の領域です。距離情報を知りたいのは、周囲水平方向に近いところにある物体であることも多いですし、「頭上方向には無限遠の距離に空があり、足下には地平線まで続く地面がある」という仮定を用いたりすることができます。こちらの構成をひとことでいうと、「変態的構成だけれども、最小限の構成で最大の効果を得ようとする(けれど頭でっかちの計画っぽい)システム」です。
というわけで、これらの機材を11月の満月の時期、タイのスコータイ・チェンマイ・バンコクに持ち込んで、遺跡やお祭りや街風景を撮影してみることにしました。(続く)