2011-01-23[n年前へ]
■作ってみたい!?「サイエンス・クックパッド」
台所の片隅にいる片栗粉は、馬鈴薯から作られた澱粉(デンプン)からなる粉体です。ということは、砂浜にある砂と同じ粉体というわけで、プールに片栗粉を注ぎ込むと、そこはまるで砂浜のような存在になります。つまりは、その片栗粉の上は、足をとられるながらも走ったりすることができる、というわけです。
ところが、「海辺の足あと」と「液状化」で書いたように、粉体の中に液体が侵入してくると、液体が粉体間の摩擦・抵抗を下げ、まるで液体のような状態に姿を変えてしまいます。だから、たとえば、砂浜の砂は、波が押し寄せてきた瞬間に、まるで底知れぬ沼であるかのように姿を変えるのです。
波に洗われている辺りの砂は、意外に締まっているものです。波が砂を洗うたびに、砂は奇麗に整列し直され、密で丈夫な構造に姿を変えます。そのため、砂の上に体重を乗せても、砂浜はびくともせず、奇麗な平面を保ち続けます。ということは、プールに注いだ片栗粉に、さらに適度な量の水を注ぎ入れると、それは白い液体状のものに変わるわけです。
けれど、そんな足裏にある固い砂浜の感触は、波が砂を洗う瞬間にはどこかに消えてしまうのです。波が足下を洗った瞬間、足下にあるのは「固さというものが微塵もない液体」だけになり、足がズブズブと砂浜の中にめり込んでしまいます。
けれど、そんな液体に見える「片栗粉の水溶き物体」も、その物体に対して力を与え・変形させてしまえば、「部分的に片栗粉=澱粉粒子の隙間に水がいない状態」ができてしまいます。・・・ということは、粉体間の抵抗が強く、液体というより、まるで粘弾性体のような”固い”感触に姿を変えます。このような現象を("dilate"=膨張するという言葉に由来して)”ダイラタンシー”と呼びます。だから、片栗粉を水に溶かした”液体”で満ちたプールの液面を走り抜ける、ということもできるわけです。
ハインツのケチャップの粘性のナゾ?や「喉越し過ぎるビールの速さ」と「ポタージュスープのトロみやら、そんな楽しさを感じさせる食材がキッチンには転がっています。
「今ある食材で、今日は何を作ろう?」「マンネリにならないようにしたいけど・・・どうしよう?」と頭を悩ますとき、たとえば、クックパッドのようなサービスは私たちを助けてくれます。簡単だけれど、ちょっと美味しい料理のレシピを私たちに教えてくれます。
もしも、台所にある食材で、あるいは、家の中にある小道具で、勝手に変な実験レシピを提供するサービスがあったら、どんな毎日になるだろう?と想像します。「クックパッド』ならぬ「サイエンス・クックパッド」があったとしたら、家の中はさぞかしエキサイティングで新鮮なことばかり起きる実験場に変わるに違いありません。キッチンをマッドサイエンティストのラボに変えてしまう、そんなサービスがあったら、どんな世界になるのでしょうか。