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2018-09-30[n年前へ]

「和算小説のたのしみ(鳴海 風)」が面白い。 

 「和算小説のたのしみ(鳴海 風)」が面白かった。「和算小説」を専門と決めた著者が、さまざまな「和算を題材にした小説」の解説をしたのが本書である。これまでに書かれた和算小説の解説を通して、人(歴史)と和算(科学)が交差する「和算の歴史」も浮かび上がるし、何人もの作家たちが描いた物語を知ることができる。

 右下図は、本書冒頭に掲げられている「和算小説分類マップ」である。数学というX軸と人間・物語というY軸が形作る「和算小説平面」は、一見すると不可解に思われるかもしれないが、本書を読むと少し納得できると同時に、こういう散布図を冒頭頁に掲げる著者にとても興味を感じてしまう。

 読んで面白かったのが、初期の和算小説の素晴らしい代表作として挙げられていたのが、新田次郎の「算士秘伝」だったことだ。…そうか、新田次郎( 現在で言うと、電通大・東京電機大を出て、富士山気象レーダー建設責任者だった)の息子が、数学エッセイを書く藤原正彦だが、新田次郎は和算という数学についても昭和32年(1957年)に物語を描いていたのか!…つまりは、 藤原正彦はそういう環境で育ったのだな、と合点がいった。

 もうひとつ、医師である浅田晃彦(浅田光彦を連想させる)が書いた「乾坤独算民(けんこんどくさんみん)」は、1968年に第60回直木賞候補作にノミネートされた小説であるが、これはNHKの朝の連続テレビ小説にピッタリの気がする。江戸時代、数学に才能ある少女が、いけすかない数学に(だけ)才能ある年長の男性と出会い弟子入りするが…なんて、もう見事なくらいに朝ドラ趣向だと思う。

「和算小説のたのしみ(鳴海 風)」が面白い。








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