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2010-07-02[n年前へ]

吉行淳之介と山田詠美の「せつない話」 

 山田詠美が集めた「せつない話 (光文社文庫)」 を読んだ。頁をめくると、まず初めに冒頭を飾っているのが、吉行淳之介の「手品師」という話で、とても新鮮だった。新鮮だった理由は、日暮れた夜の街を描く吉行淳之介の描写がとても気持ち良かったことと、その内容を「吉行淳之介」が描き、「山田詠美」がそれを「せつない話」という題目で収録した、ということだった。面白いのは、吉行淳之介と深い関係にあった、宮城まり子による選集にも、やはり、この「手品師」は入っているということだ。

  この「手品師」という短編には、女性に対する何とも複眼的な眺め方がされていて、とても素直であったり、あるいは、冷めた客観的であったり、結局のところ、切ないけれど愛を向けた描き方がされている。宮城まり子や山田詠美は、一体、この物語をどのような心地で読んでいたのだろうか?

 この短編を読んだ後は、蒸し暑い夕暮れの路地を歩き、路地裏の飲み屋に入りたくなる。何か一皿頼み、そして、冷えた酒を飲みながら、通りを歩く人を眺め、眺めた人に、きっと恋をしてしまうに違いない。



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