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2010-02-09[n年前へ]

「恋愛旅人」と「頁の折り目」 

 角田光代 「恋するように旅をして 」(旧題「恋愛旅人」)から。

 小学校の高学年が一、二年で学ぶことを、二十歳をすぎた私は十年以上かけて学びつつある。アジアとヨーロッパの区別。大陸の区別。そこで生産される製品と、そこで生きる人々。人々の持つ歴史と、彼らの食べる日常食。差別ということ。和解ということ。

 古本で「恋するように旅をして 」を買い、列車の中で頁をめくる。読み進めていると、端に折り目のある頁が、いくつかあった。

 私の前にこの本を読んで、頁の端を折った誰かは、一体どの言葉に惹かれたのだろう。頁の端っこをどちらの面に向けて折り、そして、どの言葉を記憶しておこうと思ったのだろうか。

 本を読みながら誰かが感じたことの痕跡が、頁を折った跡の向こうに見える。その人の感じた道のりを、ふと辿ってみたくなる。その気持ち・心の動きは、少し、恋愛に似ている。



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