2010-02-09[n年前へ]
■「記憶の中の瞬間」と「スローモーション動画作成サービス」 (初出:2006年02月01日)
最近では、ビデオカメラを持っていることが普通になっているのでしょうか。
たとえば、結婚していて子供もいるなんていう方の場合、かなりの高い確率でビデオカメラがあったりするのかもしれません。生まれたばかりのお子さんが「小さな手を広げている姿」、「運動会でトラックを走っている勇姿」、そんな風景を撮影するために、ビデオカメラを買ったという方々ををよく見かけます。
少し前まで、といっても二十年近く前までは、「大事な一瞬をカメラで静止画として記録する」のが一般的でした。しかし、今は、動画記録可能なカメラも安く便利になっているために、「ちょっと良いなと思った景色を動画で記録する」ことも、ありふれた日常の1シーンになっているように思います。
それでも、(動画を記録する)ビデオカメラではなくて、一瞬を捉える静止画を撮影する(スティル)カメラを使い続ける人、動画より静止画を好む人も多いように感じます。そういった人たちがまだまだ存在し続ける理由は色々あるのでしょう。たとえば、そんな理由の一つがこんなことです。
それは、「一瞬ならともかく、ある程度の時間の”良い瞬間”を撮影するのは結構難しい」なんていう理由かもしれません。あるいは、「動画はデータ量が多くて扱いづらい」なんていう理由もあるかもしれません。…そして、理由の一つに、「人の記憶がそれほど”豊か”でない」ことがあるのではないか、と私は思うことがあります。
人の記憶の中では、「長い動画を保存しておく」ことはできなくて、せいぜい「一瞬の風景を記憶しておく」ことしかできないのではないか。だから、「長い動画」を見たとしても、記憶の中の景色とは一致させることはできないのではないだろうか。そして、「一瞬の画像」では、「今イチ感」もあるけれど、「一瞬の風景」の方が(動画よりも)むしろ記憶の中の景色と一致して「懐かしい感じ」を強く呼び起こすのではないだろうか?と思ったりするのです。
そんなことをふと思い出したキッカケは SONY BRAVIAのコマーシャル映像です。「サンフランシスコの坂の景色を背景に、数え切れない色とりどりのスーパーボールが弾み駆けていく、坂を跳ね降りていくスーパーボールや、一緒に飛び跳ねるカエル、建物の影からボールたちを振り返る男の子などが写されたスローモーション映像」を眺めたせいです。
ほんの一瞬の風景が「スローモーションの走馬燈のように長く見える景色」になる、それは「記憶の中の景色」と実に良く似ているのではないだろうか、と思ったわけです。「記憶の中の景色」は動いてはいるけれど、それは普通の「時間が普通の”速さ”で動いている動画」とは少し違って「”ほんの一瞬の時間”が長く引き延ばされたような動画」なのではないだろうか、と思ったのです。
だから、それはビデオカメラで撮影された動画よりも、まだ(静止画像を撮影する)スティルカメラによって記録された写真の方に近いのではないだろうか、とふと妄想をめぐらせてみたのです。だから、スティルカメラを好む人も多いのではないだろうか、と考えてみたのです。
だとしたら、「スローモーションの走馬燈のような景色」を撮影することができるビデオカメラがあったら、「記憶の中の景色」と同じような景色を撮影することができるかもしれません。つまりは、「高速度に風景を撮影し、それをゆっくりと再生することができる」高速度カメラがあったとしたら、記憶に忠実な景色を撮影することができるかもしれない、とふと思ったのです。…とはいえ、高速度カメラなんてそうそう買えたものではありません。安くても、普通は100万円くらいのお値段になってしまいます。それでは、そう簡単に買えるわけがありません…。
しかし、最近「普通のビデオカメラで撮影した動画や通常のビデオ動画などから、スローモーション動画を作る」というサービスを知りました。 例えば この動画(.wmv形式) から こんな品質のスローモーション動画(.wmv形式) を作成するようなサービスです。こんなサービスを使えば、値段が高い「高速度カメラ」を使わなくても、記憶に忠実な景色を再現することができるかもしれません。生まれたばかりのお子さんが「小さな手をゆっくりと広げていく瞬間」や、「お子さんが運動会で地面を蹴って走っている瞬間」のスローモーション動画を作成してみるのはいかがでしょうか。
もしかしたら、それはまさに「記憶の中の瞬間」と同じ景色になるのかもしれません。