2016-03-05[n年前へ]
■ついに成功した重力波の観測波形で3Dアクセサリーを作ってみよう!
重力波観測のニュースが流れてから、重力波の(「観測されるはず」とされた)予測波形や観測波形が公開されています。そんな重力波の波形を、目の前で存在するかのように3次元的に眺めたり(右に貼り付けたアニメーション)や、Mathematicaで解析したりして、楽しんでいる人たちがいます。…地球を走り抜けた十数億年前にブラックホールが衝突して生み出した空間の振動を、そんな風に3次元空間的に体感してみるのは、確かにとても面白そうです。
というわけで、今回観測されたはずの「理論的な空間の振動」を、右のような3次元的チャートにした上で、3Dのオブジェクトファイルに変換してみました。あとは、これを各種3Dプリンタで出力すれば…たとえば金属3Dプリンタで出力してキーホルダーにでもしてみれば、いつでもどこでも素敵な重力波系形を持ち歩くことができます。あるいは、重力波系形をイヤリングにして不思議に装ってみたりするのも、楽しそうです。2016-03-12[n年前へ]
■掛け布団と毛布…上下の順番を決める「暖かく寝るための法則」ベッドルームで熱伝導を考える!?
掛け布団と毛布…上下の順番を決める「暖かく寝るための法則」ベッドルームで熱伝導を考える!?を書いた。
冬の寒い夜、「掛け布団と毛布、一体そのどちらを上にすると暖かく寝ることができるのか?」という疑問をよく耳にします。そして、その疑問に続いて「実は、掛け布団の毛布が上の方が暖かい」という答えがあったりすると、少し意外に感じたりします。…そこで、今日は「掛け布団と毛布の上下順番は、一体どう決めれば良いのか」を考えてみることにしましょう。
2016-03-13[n年前へ]
■「布団周りの温度変化」と「凍土遮水壁」の科学
掛け布団と毛布…上下の順番を決める「暖かく寝るための法則」ベッドルームで熱伝導を考える!?の計算をしてから、関連書籍や論文を色々眺めました。その中のひとつが、布文化の科学・十話―衣服学への誘いです。この書籍中で「興味深い」と感じたグラフが、右の(宮沢モリエほかの「家政学研究、 21, 99, 1974」のデータ、今の季節(春)に布団に入った後の各部分がどんな温度推移を辿ったか…というグラフです。
気温20度の状態で、体温が36〜37度程度の人間が、(外気温と等しい温度の)布団の中に潜り込むと、およそ1時間ほどで掛け布団も敷き布団も体温に近い温度まで温められます。…そして、それだけでなく、敷き布団の下の床も、外気と体温の中間程度まで温められている(その温度まで床を上昇させる熱流束が、体から周囲へと流れている)ということです。つまり、とても大雑把に、そして単純に言えば、布団が敷かれた床のある程度の内部まで、ある程度温められて温度が高くなっている状態だということになります。
これは、2011年から5年を経て、未だに続く福島第1原発「凍土遮水壁」のことを思い出させます。つまり、、原子炉建屋群の地下周囲に氷の壁を作ろうと地面を冷やしても、地球内部で天然放射性元素の放射性崩壊が生じさせる圧倒的な熱量とのシーソーゲームをせざるを得ない結果、凍土遮水壁を築くためには非常に広い範囲を冷やし続けなければならないし、そのためには経済的に見合うかどうかわからないコストを掛けなければいけないだろう…という計算です(参考:福島第1原発「凍土遮水壁」の維持電気代は年間30億円…意外に安い?それとも高い!?)。
2016-03-14[n年前へ]
■「体に密着するように見えるレオタード」と「織物と編物の違い」
「布地と皮膚の応力ーひずみ曲線」のグラフ、言い換えると(皮膚を基準として)布地を伸ばして変形させた時に生じる応力を描いたグラフを眺めてみると…とても面白く感じます。たとえば、木綿やデニムは少し変形させようとしただけで強い応力が生じるとか(つまり変形しづらくて履き辛そうとか)、それとは逆にレオタードは(伸びる時は皮膚と同じ程度の柔らかさで)容易に変形するけれど、伸びるときと縮む時の動作の違い(ヒステリシス)が大きくて、縮む動作では(時に魅力的な)シワが発生しやすそう…とか、そんなさまが想像できます。
このグラフを眺めた時に一番面白く感じるのは、織物(木綿・デニム・羊毛)が伸度に対し生じる応力が大きな「伸びにくいグループ」で、編地(レオタードなど)が伸びに対して応力が生じづらい伸縮性豊かなグループだということです。…しかし、それも実はあたりまえ、なぜかというと「織物」と「編み物」の構造には違いがあって、(下記の言葉の定義にはあくまで部分的なものしか言及されていませんが)「織物」は比較的「伸び縮み=弾性体」として扱えるような構造で、「編み物」は「繊維間のズレ=まるで粘性のような挙動」が無視できない構造となっているからです。
織物とは、たて糸とよこ糸が直角に交わり、一本ずつ浮沈しながら隣の糸と密着して平面的に連なり、組織を作ります。伸縮性はあまり無く空間が少ない実用的な織り地となります。 実用的なものに多く使われ、丈夫な製品に使用されることが多いようです。
編み物はというと、一本あるいは数本の糸がループを作り、そのループに次の糸を引っ掛けて新しいループを作ることを連続して作った編み地です。
織物と編み物の違い…
自由自在に伸びるように見える(そして時に微妙に生じるシワが魅力的に見える)レオタードも、その編み目形状に特徴があって、そして、その編み目の3次元幾何学形状が生み出す光反射模様が、実はその魅力的な質感を生み出していたりするのかも…と想像してみるのも面白い気がします。
2016-03-21[n年前へ]
■北風が吹く初春には、秋葉原愛三ビル前交差点辺りがスカートがめくれやすい危険地帯です!?
かつて、「人生で必要な科学は、全てスカートやブラジャーで学んだ!」などとホラを吹いたというか嘘をついたせいで、数ヶ月に一度くらい「スカートがめくれやすい場所や日時を教えて下さい」とTV番組の(しかもまだ企画中の)ディレクタさんからメールが届いたりします。…そんな時のFAQとして、今日は、日本が誇る電脳都市である秋葉原を例にして、その回答例を書いてみることにします。
単刀直入に回答例を書くと、この季節…まだ北風が吹く初春には秋葉原愛三ビル前交差点辺りが「スカート」がめくれやすいです。たとえば、株式会社ゼンリンが3Dゲーム・エンジンUNITY用に提供している「秋葉原3Dマップ」を3D形状でーたとして出力した上で、さらに流体計算ソルバOpenFOAMに読み込んで(右図はOpenFOAMに読み込む前に3DソフトBlenderで編集している作業画面です)、秋葉原に吹き付ける北風が「通りを歩く人たち」にどんな力を及ぼすかを計算してみたのが次の図です。
この計算結果例からわかるのは、北から吹く風が秋葉原UDXビルをを経て、秋葉原ダイビルと住友不動産秋葉原ビルの間、秋葉原ソフマップ本店と(交差点対面の)坂口伝熱秋葉原本店(愛三ビル)との間で(実景色の写真は下図になります)、不規則そうな強烈な渦を巻いていることです。
もちろん、こうした「風の動き」は「周りの建物配置」や「風向き」などに依存します。…というわけで、その「法則」は次回以降に詳しく書いてみることにします。(続:北風が吹く初春には、秋葉原愛三ビル前交差点辺りがスカートがめくれやすい危険地帯です!?)
2016-03-22[n年前へ]
■続:北風が吹く初春には、秋葉原愛三ビル前交差点辺りがスカートがめくれやすい危険地帯です!?
北風が吹く初春には、秋葉原愛三ビル前交差点辺りがスカートがめくれやすい危険地帯です!? で行った秋葉原の街中に吹く風の流れを計算した結果を、同じ視点から・同じ構図で見たGoogle Earth(Google Map)の実写画像に重ね合わせてみました。実写風景に重ね合わせながら、コンピュータの中で計算された風の動きを眺めてみると、風の気持ちや心の動き…ならぬ流体の動きが一目瞭然に見えてきて、面白いものです。
そして、下記のような質問メールの状況における、「危険地帯」が見えてくるような気がします。
数ヶ月に一度くらい「スカートがめくれやすい場所や日時を教えて下さい」とTV番組の(しかもまだ企画中の)ディレクタさんからメールが届いたりします。…そんな時のFAQとして、今日は、日本が誇る電脳都市である秋葉原を例にして、その回答例を書いてみることにします。
北風が吹く初春には、秋葉原愛三ビル前交差点辺りがスカートがめくれやすい危険地帯です!?
こんなふうに、見慣れた街並みの日常風景に(秋葉原を見慣れてる…のは一般的ではないのかもしれませんが)、直接それを見ることはできないけれど・間接的にしかその存在を知ることができないようなものを、実際に眺めることができるようにしてみると、少し新鮮に感じます。
さまざまな現象をリアルタイムにセンシングして、その計測結果を使ってリアルタイム物理計算を行い、そのシミュレーション結果を実写に重ね合わせつつ表示してくれるVR/AR/MR的な電脳メガネは…あと何年くらい待てば手に入るのだろう?と考えたりします。
2016-03-27[n年前へ]
■「氷と食塩で冷やすアイス作り実験」と「華氏や摂氏の定義」
花見に行った先で「(こども向けの)アイスを作る実験」をやっていて、それをとても楽しく興味深く眺めた。「面白かった」一番の理由は、その実験過程を説明するには、どう考えたら良いのだろう?」と考える過程が何より面白かった。
実験自体は単純で、「ビニール袋に氷と食塩を入れて、そこにビニール袋に入れた牛乳とかアイスの材料を入れて、振ると、アイスができる」というものだった。問題は「塩を入れることがなぜ効果的で必要か」ということだ。TV番組の解説なら、「凝固点降下で温度が下がるから」といった答えが用意されるのだろう。しかし…それはもちろん正解なのだろうけど、それで納得できるのは、「ものわかりが良くて”頭が良い”人」だけに違いない。
冷凍庫から出した氷はだいたいー18度〜−20度くらい。少し暖まった状態で、−15度くらいというのが普通だろう(実際に冷蔵庫から出した氷の温度を計ってみると−19度だった)。そんな氷に塩化ナトリウムを濃度を高く振りかけたとしても、(溶液の)到達温度はせいぜい−20度強程度…つまり、”氷と水と塩で到達可能な最低温度”という歴史的定義の、ほぼ0ファーレンハイト(華氏)な温度にしかならないだろう(おっと、この問題には温度の定義の歴史まで登場したぞ)。…すると、熱伝導的には−20度弱の氷が−20度強になったところで、アイスの材料を「冷やす効率」に関しては何の違いも生まれそうにない。そこで、もう少し、生じそうな現象を追いかけて想像して・考えてみる。
まず、必要事項としてありそうなことは「アイスの材料を包むビニール袋の周りにあるのが固体の氷だけだと、ビニール袋の周りに必ず空隙ができてしまい、空気を介しては、(空気の比熱や熱伝導率を踏まえると)熱伝導率的に圧倒的に冷却効率が悪い」ということだ。それに、氷の比熱とアイス原材料の比熱を考えると、アイス原材料のそれの方が2倍程度大きい程度だろう。そして、それらの温度が(単純のために)それぞれ−20度と20度くらいとすると、そして体積というか重量がおそらく同じ程度だとすると、「氷は必ず溶けざるを得ない」ということになる。さらに、これらから「アイスの周りは氷が溶けた液体が(熱伝導の効率的には)いるべきだし&ある時点からは(熱エネルギー的に)必ずいる」ということになる。
すると、この時点でようやく、ビニールの周りの温度が(氷が溶けつつある水の温度である)摂氏ゼロ度の水か(塩と氷と水が作り出す最低温度である)華氏ゼロ度の食塩水と…そのどちらである方が熱伝導的に好ましいか?という話になりそうだ。すると、当然のごとく、食塩を入れることがアイス実験的に必要だ」ということになる。
こども向け実験ってあまり見る機会が無いから面白かったけど、…もしも(こども向けでなくて)大人向けのアイス作り実験とかあったなら、一体どんな内容になるんだろうか。
2016-03-28[n年前へ]
■(他の硬貨ではダメだけど)100円玉を落とすと…チャンネルが変わる昭和のテレビジョンのナゾ!?
花見に行った先で若い学生さんと話していると、彼女のお父さん(どうやら1960年代後半生まれくらいらしい)が「昔のテレビは、近くで硬貨をじゃらじゃらと落とすとチャンネルが変わったものじゃ」と話していたという。しかも「そのリモコンを誤動作させることができる硬貨は、100円玉限定だった」と語っているらしい。…この不思議な話、探偵!ナイトスクープ的な謎を昨日(twitterで尋ねつつ)調べてみた。 すると、まずわかったことは、そのテレビはおそらく昭和46年(1971)発売の三洋(サンヨー)が発売した超音波式リモコンの初代ズバコン(もしくは二代目)だろうということだった。三洋が出したTVリモコンたるズバコンは、特定周波数の超音波を頼りにリモート制御をするので誤動作が多く、発売されたもののいくつもの問題を起こした機種である。…なにしろ、”硬貨や鍵をチャラチャラさせる音などでもリモコンが勝手に動くなどという重大な欠陥が・・・その誤動作で切ったはずのテレビが留守中に勝手につき、加熱で火事になりかけたという苦情があった。これは国会でも取り上げられるほどの問題になった”というくらい、日本のワイドショーを賑わしたテレビ・リモコンなのである。
初代ズバコンは右上写真のような感じの超アナログリモコンで、この機種は誤動作が非常に多く、およそ1年あまりで市場から消えたらしい。そして、三洋ズバコンの(次の写真のような)2代目は超音波を周波数変調することで誤動作を防いだはずだったが…誤動作をゼロにすることはできず(しかし結構売れたので)やはり誤動作に悩まれたらしい。
問題は、なぜ「そのリモコンを誤動作させる硬貨は100円玉限定だった」と彼女のお父さんを振り返らせるに至ったか、だ。それは、純粋に物理的問題として考えるべきだろう。
…当時は、500円玉なんて無い時代だから、1,5,10,50,100円玉くらいを考えれば良いだろう。すると、まず、アルミニウム製で(他の硬貨に比べて密度が数分の一程度と)低い1円玉では超音波発生量は、少ないだろうということがわかる。なぜかというと、固有振動周波数は(記憶が確かなら)大雑把には密度のルートに反比例するからだ。
そして、残りの5,10,50,100円玉を考えると、銅にニッケルを混ぜた(あるいは時代的にはその前の使われていた、銀が入った)100円玉が一番密度が高い。つまり、銅に錫や亜鉛を混ぜた5円玉や10円玉より密度が高いし、同じ素材の50円玉よりは、穴が開いていない分だけ、低周波の(周期が長い)固有振動は生じにくそうに思える。…ということは、100円玉同士がぶつかる状態が一番超音波が発生するのが自然だろう…ということになる。
という話をしていたら、iPhoneアプリで硬貨がぶつかった時の音波周波数分布を試し計測をしてくれた人がいる(右画像)。これは、超音波帯に決して感度はないiPhoneマイク(&回路)で解析した結果だけど、先入観100パーセントな目で見れば、100円玉は確かに高周波が多そうだと感じられてしまうデータでもある。