2008-12-24[n年前へ]
■「プリンタで偽造したナンバープレート」と「速度取り締まり機の撮影波長」
スラッシュドットで「レーザープリンタで光沢紙に車のナンバープレートを出力し、スピード違反取締りカメラを騙す」という記事を読んだ。この記事を読んでふと疑問に感じたのが、「プリンタで偽造したナンバープレート」をどの程度鮮明に「速度取り締まり機」で撮影することができるか、ということである。
なぜかというと、レーザープリンタで使われるインク(トナー)は赤外光をほとんど吸収しないからである。カーボンブラックを使った黒いインクは赤外線を吸収するが、それ以外のマゼンタ・シアン・イエローといった色インクは赤外線をほとんどそのまま透過させてしまう。右下の図が、光の波長と透過率を示したグラフである(ディジタルハードコピー技術 P.119)。赤外線で眺めてみれば、カラーインクはほぼ透明に近いということがわかるだろう。
一方、速度取り締まり機、オービスは赤外光で走る車を撮影する。つまり、カラーインクが光吸収しない波長領域で、ナンバープレートを見るのである。・・・ということは、もしもナンバープレートに描かれた「緑色の文字」をイエローとシアンのインクで描いたなら、それはオービスにとってみると「淡い色の文字」にしか見えそうにない。
実際には暗い緑色を描くために黒インクも使われるだろう。しかし、もしも、イエローとシアンだけを使ってプリントしたなら、そのナンバープレートに描かれた文字は、オービスにはほとんど判別できない(透明)色になってしまいそうだ。人間が見ると、白地に緑色の(それほど不自然でない)ナンバープレートに見えるにも関わらず、である。
一体、「プリンタで偽造したナンバープレート」は「速度取り締まり機」で眺めてみると、一体どのように見えるのだろうか。どのくらい違って見えるのだろうか。
自分の目で見たものと他人の目が見るものが違うように、自分の目で見るものと機械が同じとは限らない。機械にはどんな風に見えるのか想像してみて、そして、検証してみることが大切なのだろう(参考リンク)。
2008-12-28[n年前へ]
■「プリンタで偽造したナンバープレート」と「速度取り締まり機の撮影波長」 実験編 Part.1
「プリンタで偽造したナンバープレート」と「速度取り締まり機の撮影波長」で、「赤外光をほとんど吸収しない通常のカラーインクで、ナンバープレートの緑文字を描いたなら、赤外線領域で撮影する速度取り締まり機・オービスからは非常に淡く見えそうだ。一体、プリンタで偽造したナンバープレートを速度取り締まり機で眺めてみたら、一体どのように見えるのだろうか」 と書きました。・・・疑問に思うだけで何もしないのはつまらないですから、実験をしてみることにしました。
まずは、デジカメを改造します。デジタルカメラの撮像素子の前には赤外線を通過させない赤外線カットフィルタ(シート)が張られていますから、その赤外線カットフィルタを取り外してみます。
そして、赤外線を撮影することができるようになったそのデジカメのレンズ前に、今度は赤外線だけを通過させる可視光カットフィルタ(右図)を貼り付けてみます。すると、「赤外線だけを撮影できるデジタルカメラ」ができあがります。このデジカメを使えば、「赤外線で見た車のナンバープレート」を撮影することができるわけです。
とりあえず、今日は、ホワイトボードに黒色ペンと緑色ペンでプリンタで偽造したナンバープレートを模した絵を描いてみました。それが、一番上に貼り付けた写真です。そして、そのナンバープレートの絵を赤外線だけで撮影してみたのが右の写真になります。
右の写真を見てみると、黒色ペンで描いた部分はハッキリ見えますが、緑色ペンで描いた部分はほとんど透明になってしまい、ナンバープレートの数字がほとんど見えなくなってしまうことがわかります。少なくとも、ホワイトボードとホワイトボード用色ペンで描いた「(いかにもバレバレですが)偽造ナンバープレート」は、速度取り締まり機・オービスからは識別することができなさそうです。