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2009-12-09[n年前へ]

「結局は、自分のためにやってきたんです」 

 山際淳司「スローカーブを、もう一球 (角川文庫) 」の「たった一人のオリンピック」から。

 そして時が流れた。二十代の後半を、彼はボートとともにすごしてきてしまったわけだった。ほかのことに見向きもせずにだ。オリンピックに出るという、そのことだけを考えながら、である。
 決算はついたのだろうか。彼が費やした青春時代という時間の中から果実は生み出されたのだろうか。一つのことに賭けたのだから、彼の青春はそれなりに美しかったのだ、などとは言えないだろう。
「結局は、自分のためにやってきたんです」
 津田真男は、現在、ある電気メーカーに勤めている。ボートはやっていない。



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