2009-11-07[n年前へ]
■11月7日に「生きる」
各作家たちが書いた名作短編集「きみが見つける物語 十代のための新名作 休日編 (角川文庫 あ 100-103) 」の恒川光太郎「秋の牢獄」から。
いつかあれに捕まる日が来ると思うから、それまではなるべく楽しんでおこうと寄り集まったり、旅行したりしているような気がするのだ。
もしも北風伯爵が存在せずに、11月7日がただひたすら永劫に続くとしたらどうだろう。私はやがて行動する気力を失い、朝起きたら、睡眠薬を買いに行き、あとは一日中眠るだけの日々を続けるようになる気がする。
私はもう充分に、楽しんだし、悲しんだし、苦しんだのだ。
ふと気付くと、今日は11月7日でした。これは、本当に不思議なくらいの偶然でしょう。それと同じように、不思議なくらい、この短編は「何か」が心に残り続ける物語です。
2009-12-09[n年前へ]
■「結局は、自分のためにやってきたんです」
山際淳司「スローカーブを、もう一球 (角川文庫) 」の「たった一人のオリンピック」から。
そして時が流れた。二十代の後半を、彼はボートとともにすごしてきてしまったわけだった。ほかのことに見向きもせずにだ。オリンピックに出るという、そのことだけを考えながら、である。
決算はついたのだろうか。彼が費やした青春時代という時間の中から果実は生み出されたのだろうか。一つのことに賭けたのだから、彼の青春はそれなりに美しかったのだ、などとは言えないだろう。
「結局は、自分のためにやってきたんです」
津田真男は、現在、ある電気メーカーに勤めている。ボートはやっていない。
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