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2017-01-21[n年前へ]

「入金」を意味する「チャージ」の歴史 第1話 

 現代の日本では、「入金する」ことを「チャージ」と表すことが多い。たとえば、何かを買ったり・使ったりすることができる権利や口座など、あるいは、そういう用途のカードに再入金を行うことを「チャージ」と表現することが多いように思う。

 ところが、それを英語で表現しようとすると、それは「チャージ」ではない、というワナがある。「再入金する」ということを表すために、top-upとかadd valueとは言うけれど、chargeと言ってしまうと「課金する」「支払いを(さらに)求める」といった意味になってしまう。つまり、意味が逆になってしまう。

 この「意味の逆転」が生じるに至った歴史・主要因として、まず一番疑いたくなるのがJR東日本が2001年から提供している乗車カード・電子マネーサービスであるSuica(スイカ)だ。それまでに、再入金できないプリペードカードはすでに広まっていたが、Suica(スイカ)は、再入金可能かつ広まったプリペードカードの先駆けだった。

 その「Suica(スイカ)サービス開始」のプレスリリース、2001年9月4日にJR東日本が出したプレスリリースでは、カードに再入金をすることを「チャージ(ご入金)」と表現している。もっとも、この時代の日本では、入金=チャージという共通認識は確立されていなかったようで、「チャージ」には「チャージ:Suicaのイオカード部分に入金すること」という、注釈も付いている。今や「チャージ」という日本語に注釈が付くことは少ないが、この時代には注釈がまだ付いていた。ちなみに、イオカードというのは、SUICAカード以前に使われていた磁気式プリペイド乗車カード(に相当する機能)のことである。

 もうじき20年近く前になる21世紀の初頭の日本、JR東日本が「なぜ、再入金することを表すために、チャージという言葉を選んだ経緯・理由」をJR東日本に(もしその経緯などを示す資料などあれば?と)問い合わせてみた。そして、JR東日本から頂いた回答は次のようになる。

 明確な資料等はございませんが、Suicaにつきましては、従来の磁気式のイオカード等、使い切りの形ではなく、充電式の電池等のようにカードに再度入金をしていただくことで、1枚のカードを繰り返しご利用いただけることをお客さまにわかりやすくお伝えする趣旨で充電等を意味する「チャージ」の用語を用いております。なお、一部、わかりづらいというご意見がありましたので、宣伝物等のご案内については「入金(チャージ)」という表現を使用しております。

JR東日本

 CHARGEの語源は、ラテン語の「荷車(carrus)」から、「荷を積む(carricare)」という意味が、古フランス語を経て、英語で使われるようになったものだ。荷を積むことは、負荷を掛けることであって、それは支払いを求める(責任や仕事の分担を求める)ことにも繋がるし、充電された状態にするための「負荷」を掛けることも意味する。この車に積む「荷」をプラスの(足す)作用を持つ存在と捉えるかマイナスの(引く)ものと考えるかが、2017年の日本語のチャージと英語のChargeの違いに繋がっているように思われる。

 JR東日本が「チャージ」という言葉を選ぶに至った歴史の前ページ、そして、それ以外のエトセトラ…については、次にまたメモ書きしてみたいと思う。



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