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2008-05-21[n年前へ]

「言語の特徴」と「古池や蛙飛び込む水の音」 

 言語はそれぞれ個性を持っていて、それを学ぼうとする私たちは、それを新鮮に感じたり、それを面倒だなぁ、と感じたりする。たとえば、名詞ごとに性別があったり、複数形単数形で言葉が姿を変えたりする。あるいは、音の大きさでリズムが刻まれたり、あるいは、音の高低で言葉の意味が変わったりする。そんな特徴は、私たちを悩ませると同時に、不思議な面白さも感じさせる。

 今週号の週刊SPA!の坪内祐三×福田和也「これでいいのだ!」を読んでいて興味深く感じたのが、松尾芭蕉の「古池に飛び込んだ蛙は一匹か?100匹か?」という話題だ。自然な日本語では、複数形と単数形をほとんど区別しない。だから、「蛙」という言葉が書かれていても、その蛙が一匹なのか、それとも100匹なのかはわからない。そして、「水の音」と書いてあっても、それが「たくさんの水音」なのか、「ひとつ響き渡る水の音」なのかは、わからない。

古池や蛙飛び込む水の音
  松尾芭蕉

 この「蛙」をラフカディオ・ハーンは"frogs"と訳し、正岡子規やドナルド・キーンは、"a frog"と訳したという。古池の水面に一匹の蛙が飛び込み水音が静かに聞こえるのと、たくさんの蛙が次々と水中に飛び込んでいき、その音が次々と響き渡るのとでは、全く違う景色である。全く違う世界だ。「終わり」と「始まり」という言葉と同じくらい違う趣(おもむき)の景色だ。

 蛙が何匹であるのか、その水音はどんな響きなのか、それは読者の心が決める。その自由度が、曖昧であると同時にとても良い。

松尾芭蕉






2008-07-13[n年前へ]

Tech's all-time top 25 flops 

 英語力は全くないのにも関わらず思わず原文を読みたくなる「IT史に輝く「すべったテクノロジー」ベスト25

 フリップ・フロップ回路を思い起こすまでもなく、"flop"した後にまた"flop"することもある。そんなことが歴史上で繰り返されてきた、だから過去を振り返らないのはモッタイナイと暗に書くこの書き手の文章をネイティブに理解することができるようになりたいものだ。

2013-06-05[n年前へ]

明日は絶対ブラジャーするぞ!(インドネシア語で”勉強する”は"ブラジャー"という) 

 かつて、オウム真理教が「修行するぞ!修行するぞ!修行するぞ!」と唱えていたけれど、どこかの世界に「修行=ブラジャー」と発音する言語はないんだろうか?…もしも、そんな言語があったなら、24時間365日、日々「ブラジャーするぞ!」と唱える一派がいて・面白かったかもしれないのに…。

 「インドネシア語で”勉強する”は、ブラジャー」というtweetを見て、辞書を調べてみた。…ほんとだ、ブラジャーにしか聞こえない。いいぞ!インドネシア語!

@hirax 2:57 AM - 4 Jun 13
 インドネシア語で「勉強する」が「ブラジャー」だから、それを使えば、「今日の昼間はブラジャーするぞ!」って感じだ!

@hirax 4:44 AM - 4 Jun 13
 「ブラジャー」って 日本語 ですか ?

@zep_nurdiana 4:58 PM - 5 Jun 13
 ブラジャーは日本語じゃないでしょうか。英語ならブラで、フランス語ならブラデデュウゥ〜な感じで、日本語ならブラジャーという感じで!

@hirax 5:05 PM - 5 Jun 13

2017-01-21[n年前へ]

「入金」を意味する「チャージ」の歴史 第1話 

 現代の日本では、「入金する」ことを「チャージ」と表すことが多い。たとえば、何かを買ったり・使ったりすることができる権利や口座など、あるいは、そういう用途のカードに再入金を行うことを「チャージ」と表現することが多いように思う。

 ところが、それを英語で表現しようとすると、それは「チャージ」ではない、というワナがある。「再入金する」ということを表すために、top-upとかadd valueとは言うけれど、chargeと言ってしまうと「課金する」「支払いを(さらに)求める」といった意味になってしまう。つまり、意味が逆になってしまう。

 この「意味の逆転」が生じるに至った歴史・主要因として、まず一番疑いたくなるのがJR東日本が2001年から提供している乗車カード・電子マネーサービスであるSuica(スイカ)だ。それまでに、再入金できないプリペードカードはすでに広まっていたが、Suica(スイカ)は、再入金可能かつ広まったプリペードカードの先駆けだった。

 その「Suica(スイカ)サービス開始」のプレスリリース、2001年9月4日にJR東日本が出したプレスリリースでは、カードに再入金をすることを「チャージ(ご入金)」と表現している。もっとも、この時代の日本では、入金=チャージという共通認識は確立されていなかったようで、「チャージ」には「チャージ:Suicaのイオカード部分に入金すること」という、注釈も付いている。今や「チャージ」という日本語に注釈が付くことは少ないが、この時代には注釈がまだ付いていた。ちなみに、イオカードというのは、SUICAカード以前に使われていた磁気式プリペイド乗車カード(に相当する機能)のことである。

 もうじき20年近く前になる21世紀の初頭の日本、JR東日本が「なぜ、再入金することを表すために、チャージという言葉を選んだ経緯・理由」をJR東日本に(もしその経緯などを示す資料などあれば?と)問い合わせてみた。そして、JR東日本から頂いた回答は次のようになる。

 明確な資料等はございませんが、Suicaにつきましては、従来の磁気式のイオカード等、使い切りの形ではなく、充電式の電池等のようにカードに再度入金をしていただくことで、1枚のカードを繰り返しご利用いただけることをお客さまにわかりやすくお伝えする趣旨で充電等を意味する「チャージ」の用語を用いております。なお、一部、わかりづらいというご意見がありましたので、宣伝物等のご案内については「入金(チャージ)」という表現を使用しております。

JR東日本

 CHARGEの語源は、ラテン語の「荷車(carrus)」から、「荷を積む(carricare)」という意味が、古フランス語を経て、英語で使われるようになったものだ。荷を積むことは、負荷を掛けることであって、それは支払いを求める(責任や仕事の分担を求める)ことにも繋がるし、充電された状態にするための「負荷」を掛けることも意味する。この車に積む「荷」をプラスの(足す)作用を持つ存在と捉えるかマイナスの(引く)ものと考えるかが、2017年の日本語のチャージと英語のChargeの違いに繋がっているように思われる。

 JR東日本が「チャージ」という言葉を選ぶに至った歴史の前ページ、そして、それ以外のエトセトラ…については、次にまたメモ書きしてみたいと思う。



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