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2009-10-21[n年前へ]

「ジェームズ・ワット」のひとつの横顔 

 山田大隆「心にしみる天才の逸話20―天才科学者の人柄、生活、発想のエピソード (ブルーバックス) 」から。

 蒸気機関の改良と普及で、功なり名を遂げたワットだったが、やがて彼を追い抜く若者が出てきた。ウェールズの鉱山機械技師の息子、トレビシックである。(中略)ワットが本質的な恐怖を感じたトレビシックの着想は、高圧蒸気機関をつくろうというものだった。
 彼はトレビシックに対してさまざまな嫌がらせを開始する。(中略)「殺すぞ」と書かれた嫌がらせの手紙も数通におよび、用心棒がトレビシックに直接暴力をふるうこともあった。

 ワットのトレビシック潰しに見られる、競争者を徹底的に抹殺する陰湿なところは、一時代を実力で築いた実力者にしばしば散見される。
 ところで、ニューコメン、ワット、トレビシックと続く流れを見てつくづく思うのは、旧技術は後発の新技術に発展解消するのではなく、旧技術のまま朽ち果て、それを破壊する新技術がつぎの時代を築くということである。これが、技術の歴史において過酷なまでにつらぬかれている真実である。



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