2009-10-21[n年前へ]
■無料のMathematicaカーネルとIronRubyでP2Pグリッド数式処理システムを作ってみよう
少し前、「無料配布のMathematicaカーネルと(やはり同じく無料で使うことができる).NET Framework上で動作するRubyであるIronRuby」を使い、「無料配布MathematicaカーネルとNET Framework実装IronRubyでグリッド・Matheatica計算環境は5分で作れる」 という記事で、Mathematicaで並列計算を可能にするためのコード例を書きました。制御用マシンと計算用サーバ間の通信はhttpを使い、多数のサーバ群で高機能数式処理並列計算を実行することができるシステムを無料で構築しよう、というアイデア・実装です。
今日は、その時書いたコードをもう少し書きなおしてみました。書き直した点をひとことで言えば、それは「制御用マシン(用ソフト)」「計算用サーバソフト」といった区別をなくしたクラスを作ってみたということになります。また、それに加えてコマンドの投げ方を替えた&コマンドを投げる際にURLエンコードをかけるようにした、という変更を行いました。それが、下の(Iron)Rubyクラスです。
というわけで、まずはこんなコードを書いてみましょう。名前は、mathnode.rbとでもしておきます。
class Mathematica require 'Wolfram.NETLink' include Wolfram::NETLink PAR="-linkmode launch -linkname 'C:\\Program Files\\Wolfram Research\\ Mathematica Player\\7.0\\MathKernel.exe'" def initialize() end def open @kernelLink=MathLinkFactory.CreateKernelLink(PAR) @kernelLink.WaitAndDiscardAnswer() end def do(q) @kernelLink.EvaluateToInputForm(q, 0) end def close @kernelLink.EvaluateToInputForm('MVClose[]', 0) end end class Mathnode require 'webrick' include WEBrick require 'net/http' require 'uri' Net::HTTP.version_1_2 attr_reader :server def initialize() @m=Mathematica.new @m.open end def start(port) @server=Thread.new do @s=HTTPServer.new(:Port=>port, :DocumentRoot=>'', :RequestTimeout=>600, :MaxClients=>1) @s.mount_proc("/restart") {@m.close;@m.open} @s.mount_proc("/shutdown") {@s.shutdown} @s.mount_proc("/"){|req,res| res.body='use /evaluate/command' res.body=URI.encode(@m.do(URI.decode(req.query['q']) )) if req.query['q'] } trap("INT"){@m.close;@s.shutdown} @s.start end end def stop @server.shutdown end def sendCommand(host,port,q) result='' Net::HTTP.start(host,port){ |http| r=http.get('/evaluate?q='+URI.encode(q)) result=URI.decode( r.body ) } result end endこのクラスを使い、たとえば、こんなコードを書きます。
require 'mathnode.rb' mathnode=Mathnode.new mathnode.start(ARGV[0].to_i) mathnode.server.join名前は、node.rbとでもしておきましょうか。そして、コマンドラインから、こんな風に実行します。引数は、httpでコマンドを待ち受けるTCP/IPのポート番号です。
ir.exe node.rb 80これで、ポート番号80を用い、プロトコルはhttpで、コマンドを待ち受け続けるサーバが立ち上がります。
さて、同じmathnode.rbを使って、今度は計算をさせるための制御用コントローラを書いてみましょう。名前は、main.rbとでもしましょうか。
require 'mathnode.rb' mathnode=Mathnode.new puts mathnode.sendCommand( 'localhost',ARGV[0].to_i, 'Solve[x+y==3,x]')これで、先ほど立ち上げた「計算用サーバ」に対して、x+y==3という一次代数方程式をxについて解かさせるプログラムのできあがり、です。使い方は、
ir.exe main.rb 80です。これで、localhostの80番ポートでMathematicaコマンドを待ち受けるサーバに、x+y==3という一次代数方程式をxについて解かせるプログラムの出来上がりです。
重要なのは、「計算用サーバ」と「制御用コントローラ」は、主従関係にあるようなクラスではなく、完全に同一のクラスである、ということです。ですから、peer to peer でデータ・命令を投げ合うグリッド計算システムを書き上げることもできるわけです。
もちろん、前回「無料配布MathematicaカーネルとNET Framework実装IronRubyでグリッド・Matheatica計算環境は5分で作れる」で書いたようなプログラムとして、こんな風に書いても構いません。
require 'pp' require 'net/http' require 'uri' Net::HTTP.version_1_2 result=[] threads = [] command='Solve[x+y==3,x]' uri=['localhost'] port=[80] 2.times do |i| threads.push( Thread.new do Net::HTTP.start(uri[i],port[i]){ |http| r=http.get('/evaluate?q='+URI.encode(command)); result<<URI.decode( r.body );} end ) end threads.each do |t| t.join end pp resultこれでも、全く同じ計算結果を得ることができる、無料のMathematica並列計算環境ができあがります。
実際の使い勝手としては、「制御用マシン」「計算用サーバ群」という作りでも良いような気もしますが、それだけではつまらないので、今日はP2Pグリッド数式処理システムを作ってみた、というわけです。無料で使える道具だけで作ることができて、なおかつ、広い可能性が感じられるもの、ではないでしょうか。