江國香織 「十五歳の残像 」から。
そりゃあどんどん矛盾していくよね、と、甲斐さんは言った。… でも、と言って、甲斐さんは私の顔を見た。「でも、表現するということはそういうことでしょう?イメージをある程度限りある形で強く打ち出していく、というのが表現ななんだから」 あまりにも正しかったので、私はちょっと黙ってしまう。 「アンビヴァレンスのひと――――甲斐よしひろさん」