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2008-02-23[n年前へ]

「波天奈(はてな)の茶碗」と「ギャラリーフェイク」 

 NHKの朝の連続テレビ小説「ちりとてちん」が、あと一月で終わる。その一月の間に、「はてなの茶碗」が演目に上がるようだ。「はてな」という言葉、「?」という記号から連想するものといえば、その「連想物」の一番目は、地域性・場所柄・生き生きとした人の姿、そういったものが、とても鮮やかに浮かび上がる「波天奈(はてな)の茶碗」であると思う。そうであるといい、と思う。

わいも茶金さん知ってんねん。
茶金さんがひねくりまわしてる、値打もんに違いないぞ…

 芸術品の真贋を題材にしたマンガ、「ギャラリーフェイク」の中に「波天奈(はてな)の茶碗」という回がある。ギャラリーフェイクの「ニセモノ骨董品の茶碗」を題材にしたこの回「波天奈(はてな)の茶碗」は、こんな言葉・伝言で終わる。「ギャラリーフェイク」の中にあるいくつかの言葉の中でも、この言葉は、いつも心に刻み直さなければと思う一節の一つだ。

美を知るものは孤独なり。
徒党を組めば、やがて馴れ合い腐りゆくまで。
今の日本人はもう少し、胸のうちに己だけの美を
持つべきじゃないですか。

地蔵さんへの伝言さ。フジタからのな。

はてなの茶碗






2008-04-03[n年前へ]

「NHK連続テレビ小説」 と「11PM(EXテレビ)」 

 NHK連続テレビ小説「ちりとてちん」が終わった。こんなにNHK連続テレビ小説を楽しみに・待ち遠しく観たのは、「ふたりっ子」以来だ。

 NHK連続テレビ小説と言えば、東京制作と大阪制作が交互に行われているのが特徴の一つである。「ちりとてちん」は大阪制作の女性脚本家だったが、そういえば、「ふたりっ子」もやはり、大阪制作の女性脚本家という組み合わせだった。脚本が大石静だった「ふたりっ子」では、気の強い主人公と将棋の世界が魅力的だったし、脚本が藤本有紀の「ちりとてちん」は、いつでも弱気になりがちな主人公と、主人公を取り巻く人たち、そして落語の世界がとても魅力的だった。

 そういえば、交互に「東京制作と大阪制作が交互に行われる」というと、「11PM(EXテレビ)」を思い出す。11PMは大橋巨泉(東京制作)と藤本義一(大阪制作)が交互に司会をする(もちろん内容の傾向もかなり違う)番組で、その後継番組だったEXテレビは、三宅雄二(東京制作)と上岡龍太郎(大阪制作)が交互に司会をする番組だった。どちらも、比べようもないくらいに大阪制作の方に、私はとても惹かれた。番組に詰まっている荒削りなアイデア・勢い、一見テキトーにも見える、けれど見るからに「その背景」へのこだわりと情熱を感じる(見せる)真摯な雰囲気がとても面白かった。

 ひとつ、思うことがある。「ちりとてちん」にしろ、「ふたりっ子」でも、その結末をどこに置き、結末の先がどこに向かっているように見せるかは、脚本家自身が一番考えていることなのではないだろうか。

2018-09-30[n年前へ]

「和算小説のたのしみ(鳴海 風)」が面白い。 

 「和算小説のたのしみ(鳴海 風)」が面白かった。「和算小説」を専門と決めた著者が、さまざまな「和算を題材にした小説」の解説をしたのが本書である。これまでに書かれた和算小説の解説を通して、人(歴史)と和算(科学)が交差する「和算の歴史」も浮かび上がるし、何人もの作家たちが描いた物語を知ることができる。

 右下図は、本書冒頭に掲げられている「和算小説分類マップ」である。数学というX軸と人間・物語というY軸が形作る「和算小説平面」は、一見すると不可解に思われるかもしれないが、本書を読むと少し納得できると同時に、こういう散布図を冒頭頁に掲げる著者にとても興味を感じてしまう。

 読んで面白かったのが、初期の和算小説の素晴らしい代表作として挙げられていたのが、新田次郎の「算士秘伝」だったことだ。…そうか、新田次郎( 現在で言うと、電通大・東京電機大を出て、富士山気象レーダー建設責任者だった)の息子が、数学エッセイを書く藤原正彦だが、新田次郎は和算という数学についても昭和32年(1957年)に物語を描いていたのか!…つまりは、 藤原正彦はそういう環境で育ったのだな、と合点がいった。

 もうひとつ、医師である浅田晃彦(浅田光彦を連想させる)が書いた「乾坤独算民(けんこんどくさんみん)」は、1968年に第60回直木賞候補作にノミネートされた小説であるが、これはNHKの朝の連続テレビ小説にピッタリの気がする。江戸時代、数学に才能ある少女が、いけすかない数学に(だけ)才能ある年長の男性と出会い弟子入りするが…なんて、もう見事なくらいに朝ドラ趣向だと思う。

「和算小説のたのしみ(鳴海 風)」が面白い。








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