hirax.net::Keywords::「摩擦帯電」のブログ



2009-05-04[n年前へ]

道路上に記録された「靴裏との摩擦帯電跡」 

犯罪鑑識の科学―計測と情報 (ポピュラーサイエンス)  警察の鑑識課の人たちが捜査をしているようすを放送するテレビ番組を見た。その番組中で興味を惹かれたのが、ビル荒らし事件か何かの犯人の足跡をアスファルト道路上で捜す捜査員たちの作業過程だった。

 一体どのような作業をしていたかというと、

  1. アスファルト上に黒いシートを広げ、その上に白い微粒子粉末を振りかけ
  2. さらに透明な大きなテープを貼り付け
  3. 最後にテープをはがしている
のである。説明によると、アスファルト上を犯人が歩いた部分が帯電していて、こんな作業をすることで(付着した粉末によって)浮かび上がるのだという。

 つまり、アスファルトと靴裏がこすれた部分がプラス(あるいはマイナス)に摩擦帯電し、アスファルト上の帯電分布を帯電した粒子で可視化する、というのである。摩擦帯電した微粒子によって可視化された靴あとを透明テープに写し取ることで、アスファルト上に電荷分布として残された犯人の足跡を記録・解析することができるようになる、というわけだ。

 摩擦帯電をなるべく防ぐような、たとえば、カーボンなどをたソールに混入することで、摩擦帯電しにくいように電気抵抗を下げ(同時に磨耗性・形状なども上手く作られた)靴というのは、工場作業用などでよく見かける。もしかしたら、”足跡を残さない”ということでは天下一品のビル荒らし御用達の靴があったりするかもしれない。

 とはいえ、もしもそんな摩擦帯電防止靴があったとしたら、たとえば靴のソールゴム中にカーボンを入れたとしたならば、黒い靴裏が必須になる。すると、「黒い靴裏」を見た警察官は「この人は、ビル荒らしかもしれない」と思うかもしれない。

 そういえば、私はよく職務質問に会う。それが私が履いている靴がことごとく黒い靴裏のせいだと思うことができたなら、つまり、「黒い靴裏の人たちは職務質問に遭いやすい」ということがその背景にあるのなら、納得できるのだが…。

道路上に記録された「靴裏との摩擦帯電の跡」






2009-05-26[n年前へ]

「静電気体質」を「衣服生地と人体皮膚の摩擦帯電系列」から眺めてみよう 

 もうすぐ梅雨が始まります。私のような静電気体質の人は、湿気を感じる季節になると、ちょっと気楽になったりします。それは、湿度が高いと摩擦帯電しにくくなるからです。などと書くと、「静電気体質」って何だろう?という疑問が湧いてきます。

床や靴裏が摩擦され合うと、摩擦帯電が生じて、片方が+(プラス)にもう片方が-(マイナス)に帯電したりします(たとえば右上の写真は、そういったことを防止するための静電気帯電防止機能付きカジュアルシューズ です)。あるいは、来ている服と座っている椅子などの間でも摩擦帯電が起きたりします。「静電気体質」というのは、そういう靴や服選びによるものなのでしょうか?

 「新しい衣服衛生 」の頁をめくると、「衣服生地と人体皮膚の摩擦帯電系列」のデータがありました。そこに書かれていた内容を大雑把に図・グラフにしたものが、下図になります。

 たとえば、ナイロンはプラスに、カネカロンはマイナスになりやすいわけです。こういう、他の物質との相対比較として、どの程度プラスやマイナスになりやすいか、という順番を摩擦帯電系列と呼びます。ちなみに、摩擦帯電系列は湿度などによっても、順番が入れ替わります。

 意外なことに、人体皮膚は(人によっても違うようですが)およそ羊毛からテトロンの間に広く分布していることがわかります。それぞれの人の、その時の状態によるのかもしれませんが、ひとことで同じ「皮膚」といっても、帯電性には人それぞれ差があるようです。摩擦帯電系列上での、来ている服と皮膚との関係にもよりますが、服と皮膚間の摩擦帯電では、摩擦帯電しやすい人、しにくい人という「体質」がある、のかもしれません。

 さて、とりあえずは、皮膚と衣服の摩擦帯電をさせたくない、と思う「静電気体質」の人は、自分の皮膚と衣服生地の摩擦帯電序列を合わせてみるのはどうでしょうか。つまり、ビニロン・やレーヨンや羊毛あたりと皮膚を擦り合わせてみて、静電気が発生しない組み合わせを探し、それを(摩擦帯電的に)自分にあった生地・繊維と覚えておくのです。そして、服を買いに行った際には、その生地や繊維で作られた下着や服を買うようにすることで、「静電気体質の人に優しいファッション」ができる、というわけです。

 もちろん、服と服、あるいは服と他の生地、あるは靴裏と床・・・といった他の摩擦帯電の方が、あの痛い「静電気のバチッ」を作り出している、のでしょう。けれど、自分の皮膚と他の人の皮膚を触れ合わせてみた時に、片方がプラスに、もう片方がマイナスに摩擦帯電する、なんて考えてみると、何だかとても面白いような気がします。

衣服生地と人体皮膚の摩擦帯電系列






2010-06-08[n年前へ]

「平行電極に挟まれた水」はどう動く!? 

 「やってみたい」と思っている実験があります。それは、水道の蛇口から落ちてくる水流に対して、平行電極を設置してみる、という実験です。平行電極に挟まれた水流が(平行電極の)中央辺りで、どんな動きをするかを眺めてみたいのです。あるいは、色んな形状の電荷を帯びた電極を近づけたときの水流の動き方を眺めてみたいな、と思うのです。

 「摩擦帯電されたプラスチック定規やストローを、水道の蛇口から落ちる水に近づけると、水が曲がる」というオモシロ実験があります。実際にやってみると、確かに面白いくらいに水が曲がります。そんな実験の手順書には、「水分子の分極により、水分子は静電気に引きつけられる」という言葉が書き添えられていることが多いように思います。

「なるほど」と考えると同時に、その説明だけでは、何だかきちんと納得することができないような気にもなるのです。なぜそのように感じてしまうかというと、たとえば、もしも、「電界がどの場所でも同じ向き・大きさだったとしたら」、水分子が向きを変えることはあったとしても、一方向に動くことはないように思えてしまうわけです。プラスを帯びた部分(分けられないものに対して部分ということは間違っているかもしれませんが)がある方向に動きたがるとすれば、マイナスを帯びた部分はその逆の方向に動きたくなり、全体としてはプラスマイナスゼロ・・・ということになってしまいそうに思えてしまうからです。

 しかし、「電界がどの場所でも同じ向き・大きさでない場合」には、プラスを帯びた部分とマイナスを帯びた部分でにおける電界が異なるので、全体に働く力は差し引きプラスマイナスゼロとはならずに、特定方向への力を受けるだろう、と思うのです。だから、たとえば、電荷を帯びたストローや定規がつくる電場は、そのストローや定規からの距離に応じて電界が弱まるようなものであり、つまり、「電界がどの場所でも同じ向き・大きさでない場合」に相当するために、電気双極子である水分子が力を受けるのではないか、とも想像してしまうのです。

 すると、平行電極に挟まれた水流の動きを眺めてみれば、平行電極に挟まれた中央部のような「電極間に電位差があるけれども、電界の場所ごとの違いがほとんどないような部分」では、水流があまり曲がることがないさまを見ることができるのではないだろうか、と思えます。…とはいえ、それは「思える」だけで、実際に実験をしてみれば、その想像が正しそうか・間違っていそうかの見当がつくことでしょう。

 というわけで、水道の蛇口から落ちてくる水流に対して、平行電極を設置してみる、という実験を、「やってみたい」と思っているのです。さてさて、一体水流は電極の中心部では曲がるのでしょうか、それとも曲がらないのでしょうか?

 感電しないように気をつけながら、こんな水道の蛇口の前でエレキテルな実験をいつかしてみたいのです。そして、想像が見当違いだとしても、頭の中に「スッキリ」をひとつ増やしてみたいのです。

「平行電極に挟まれた水」はどう動く!?








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