2008-04-20[n年前へ]
■化粧品の科学
尾澤達也「化粧品の科学」から、「皮膚の老化」と「落ちない口紅のメカニズム」メモ。
「落ちない口紅のメカニズム」は、シリコーンオイル系の揮発性ライトオイルと(色材の凝集を防ぐための超微粒子シリカ粒子の)スパーミクロン粒子と(色材を包み光沢を与えつつ、口紅に密着させるための)クリアポリマーを使ったパーフェクトルージュの例。
- 口紅を唇につける
- ライトオイルが揮発
- 口紅成分中のオイルとワックスが色材に吸着
- スーパーミクロン粒子とクリアポリマーが色材をコーティングしカプセル化する
- コーティングカプセルが唇上に密着し、他のものには色が移らなくなる
2009-05-26[n年前へ]
■「静電気体質」を「衣服生地と人体皮膚の摩擦帯電系列」から眺めてみよう
もうすぐ梅雨が始まります。私のような静電気体質の人は、湿気を感じる季節になると、ちょっと気楽になったりします。それは、湿度が高いと摩擦帯電しにくくなるからです。などと書くと、「静電気体質」って何だろう?という疑問が湧いてきます。
床や靴裏が摩擦され合うと、摩擦帯電が生じて、片方が+(プラス)にもう片方が-(マイナス)に帯電したりします(たとえば右上の写真は、そういったことを防止するための静電気帯電防止機能付きカジュアルシューズ です)。あるいは、来ている服と座っている椅子などの間でも摩擦帯電が起きたりします。「静電気体質」というのは、そういう靴や服選びによるものなのでしょうか?
「新しい衣服衛生 」の頁をめくると、「衣服生地と人体皮膚の摩擦帯電系列」のデータがありました。そこに書かれていた内容を大雑把に図・グラフにしたものが、下図になります。
意外なことに、人体皮膚は(人によっても違うようですが)およそ羊毛からテトロンの間に広く分布していることがわかります。それぞれの人の、その時の状態によるのかもしれませんが、ひとことで同じ「皮膚」といっても、帯電性には人それぞれ差があるようです。摩擦帯電系列上での、来ている服と皮膚との関係にもよりますが、服と皮膚間の摩擦帯電では、摩擦帯電しやすい人、しにくい人という「体質」がある、のかもしれません。
さて、とりあえずは、皮膚と衣服の摩擦帯電をさせたくない、と思う「静電気体質」の人は、自分の皮膚と衣服生地の摩擦帯電序列を合わせてみるのはどうでしょうか。つまり、ビニロン・やレーヨンや羊毛あたりと皮膚を擦り合わせてみて、静電気が発生しない組み合わせを探し、それを(摩擦帯電的に)自分にあった生地・繊維と覚えておくのです。そして、服を買いに行った際には、その生地や繊維で作られた下着や服を買うようにすることで、「静電気体質の人に優しいファッション」ができる、というわけです。
もちろん、服と服、あるいは服と他の生地、あるは靴裏と床・・・といった他の摩擦帯電の方が、あの痛い「静電気のバチッ」を作り出している、のでしょう。けれど、自分の皮膚と他の人の皮膚を触れ合わせてみた時に、片方がプラスに、もう片方がマイナスに摩擦帯電する、なんて考えてみると、何だかとても面白いような気がします。
2011-06-27[n年前へ]
■肌の写真から皮膚癌の可能性を判断するiPhoneアプリSkin Scan
肌の写真から皮膚癌の可能性を判断するiPhoneアプリSkin Scan
このアプリはユーザの皮膚のシミの写真を撮り、特殊なアルゴリズムを使って、人間の皮膚にあるフラクタル状の形を探す(よく見ると、健康な肌なら小さな三角形がたくさん見えるはず)。それからアプリは、シミの発達の仕方が正常かどうかを計算する。もしかして、癌の可能性のあるメラノーマが発達中かもしれない。
このアプリはユーザの位置を尋ねて、その地域の皮膚の健康度も地図入りで教えてくれる。このアプリが持つ意味は、なかなか興味深い。究極的には世界の各国各地の、皮膚癌の状況を教えてくれるかもしれないのだ。
2014-05-26[n年前へ]
■赤い血が流れているはずの血管が青く見える理由
「青筋を立てる」という言葉で表されるように、皮膚上から見た血管は(周りの色と比べると)青色に見えます。「皮膚部分はメラニンスペクトルを反映し、静脈部分は皮膚部分と血液スペクトルの掛け合わせになるとしたら、静脈部分は近傍より(近傍を基準としても)赤く見えそうなのに、なぜ相対的に青く見えるのか」というのは、少し不思議に思えるはずです。
この赤い血が流れているはずの血管が(血管の無い周囲部分よりも)青く見える理由を説明するために、以前書いたモンテカルロ光計算コードで、赤色光と青色光の軌跡例を計算してみました。下の図は、上から皮膚に差し込む光があると、青色光は皮膚内で(短波長の光は散乱しやすいので)すぐに散乱して・方向を変えまくり皮膚外部へ出て行ってしまうけれど、赤色光は皮膚内奥部まで侵入してから、皮膚の内部を長くさまよってから(ようやく)皮膚外へ出ていくという計算結果を表しています。
こんな風に、青色光は皮膚内部にはほとんど侵入しないので、皮膚奥にある太い血管部分までは、実はほとんど到達しません。だから、血管がある(下部に)部分からも、血管がない部分からも、同じくらいの強さの(青色の)光が返ってきます。
しかし、波長が長い赤色光は皮膚奥部まで侵入します。すると、皮膚下部に血管がある部分では、血管にまで到達し(血液が赤色をしているといっても、完全に透過するわけではないので)血管中で赤色光は減衰してしまいます。…そこで、皮膚下部に血管がある箇所では、青色光は他の部分と同じだけれど・赤色光は他の部分よりも暗い(少ない)というわけで、皮膚の上から見た血管部分は(近傍周囲と比較すると)青色がかって見えるわけです。
皮膚の上から見た血管の(相対的な)色を決めているのは、実は血液の色ではなくて、その上にある皮膚の光散乱の波長依存の具合なのです。
2014-05-27[n年前へ]
■エクセルでラプラス方程式を解いて「血管がある皮膚周りの光強度分布」を計算してみよう!?
赤い血が流れているはずの血管が青く見える理由で行った計算を大雑把に解けば、たとえば完全拡散体として扱うことができます。それはすなわち、任意の微小領域が周囲に発する光強度は周囲(の微小部分が発する光強度)の平均値になるということで、つまりはラプラス方程式で表される解になります。
…というわけで、ラプラス方程式を離散化して、お手軽なエクセルで「皮膚内部に血管がある時の、その周辺の皮膚内部・表面での光強度分布を(たとえば青色波長で)可視化してみたのが下図になります。エクセルの各セルは離散化された空間上の各領域を示していて、そこに示されている色と値が光強度を示しています。
画面真ん中辺りに(画面=シート鉛直方向に)血管が流れていて、画面=シート上側にあたるのが皮膚表面です(画面下側が皮膚最奥部です)。
さらに青色・赤色波長の「(光が散乱して方向を変えるまでの)平均自由行程」を踏まえて、表面での光強度分布の違いを描いてみると、限りなく大雑把な近似に基づいた計算をすると、下図のような感じです(縦軸はその波長における周辺近傍の平均強度を基準にした相対値です) 。
血管が下部にある部分を眺めると、青色波長では、その周囲の部分とさほど変わらない光を発しています。けれど、そこを赤色波長で眺めれば(表皮近くの毛細血管ではなく)皮膚下部に流れる血液に光が吸収されて、光強度が(近傍周囲より)減少していることがわかるかと思います。…だから、赤い血が流れているはずの血管が(周囲に対して相対的に)青く見える、というわけです。