2013-09-01[n年前へ]
■赤外線で体中の血管を浮かび上がらせてみよう!
コーラや醤油を赤外線で眺めると、あらまビックリ!驚くほど透明な姿に変わります。可視光では真っ黒クログロと見えていたのに、赤外線で眺めると、いきなりドロン!と消えてしまいます(右の写真は、 グラスに透明な水が注がれているように見えますが、実は可視光で眺めると黒く不透明なコーラが入ったグラスです)。
それとは逆に、可視光では見えなかったものが、赤外線で見るとイキナリ浮かび上がってきたりします。たとえば、赤外線カメラを自分に向けてみると、肉眼では全然見えない血管が、そこらかしこに浮かび上がってくるのです。ヘモグロビンが近赤外線を強く吸収するために、赤外線で眺めると、こんな不思議な姿が見えてきたりします。
それにしても、こうして北斗の拳の「秘孔」丸見え状態な血管配置を眺めてみると、血管が描く模様が左右対称でないことに気づかされたりして、新鮮で面白く感じます。
2014-05-26[n年前へ]
■赤い血が流れているはずの血管が青く見える理由
「青筋を立てる」という言葉で表されるように、皮膚上から見た血管は(周りの色と比べると)青色に見えます。「皮膚部分はメラニンスペクトルを反映し、静脈部分は皮膚部分と血液スペクトルの掛け合わせになるとしたら、静脈部分は近傍より(近傍を基準としても)赤く見えそうなのに、なぜ相対的に青く見えるのか」というのは、少し不思議に思えるはずです。
この赤い血が流れているはずの血管が(血管の無い周囲部分よりも)青く見える理由を説明するために、以前書いたモンテカルロ光計算コードで、赤色光と青色光の軌跡例を計算してみました。下の図は、上から皮膚に差し込む光があると、青色光は皮膚内で(短波長の光は散乱しやすいので)すぐに散乱して・方向を変えまくり皮膚外部へ出て行ってしまうけれど、赤色光は皮膚内奥部まで侵入してから、皮膚の内部を長くさまよってから(ようやく)皮膚外へ出ていくという計算結果を表しています。
こんな風に、青色光は皮膚内部にはほとんど侵入しないので、皮膚奥にある太い血管部分までは、実はほとんど到達しません。だから、血管がある(下部に)部分からも、血管がない部分からも、同じくらいの強さの(青色の)光が返ってきます。
しかし、波長が長い赤色光は皮膚奥部まで侵入します。すると、皮膚下部に血管がある部分では、血管にまで到達し(血液が赤色をしているといっても、完全に透過するわけではないので)血管中で赤色光は減衰してしまいます。…そこで、皮膚下部に血管がある箇所では、青色光は他の部分と同じだけれど・赤色光は他の部分よりも暗い(少ない)というわけで、皮膚の上から見た血管部分は(近傍周囲と比較すると)青色がかって見えるわけです。
皮膚の上から見た血管の(相対的な)色を決めているのは、実は血液の色ではなくて、その上にある皮膚の光散乱の波長依存の具合なのです。
2014-05-27[n年前へ]
■エクセルでラプラス方程式を解いて「血管がある皮膚周りの光強度分布」を計算してみよう!?
赤い血が流れているはずの血管が青く見える理由で行った計算を大雑把に解けば、たとえば完全拡散体として扱うことができます。それはすなわち、任意の微小領域が周囲に発する光強度は周囲(の微小部分が発する光強度)の平均値になるということで、つまりはラプラス方程式で表される解になります。
…というわけで、ラプラス方程式を離散化して、お手軽なエクセルで「皮膚内部に血管がある時の、その周辺の皮膚内部・表面での光強度分布を(たとえば青色波長で)可視化してみたのが下図になります。エクセルの各セルは離散化された空間上の各領域を示していて、そこに示されている色と値が光強度を示しています。
画面真ん中辺りに(画面=シート鉛直方向に)血管が流れていて、画面=シート上側にあたるのが皮膚表面です(画面下側が皮膚最奥部です)。
さらに青色・赤色波長の「(光が散乱して方向を変えるまでの)平均自由行程」を踏まえて、表面での光強度分布の違いを描いてみると、限りなく大雑把な近似に基づいた計算をすると、下図のような感じです(縦軸はその波長における周辺近傍の平均強度を基準にした相対値です) 。
血管が下部にある部分を眺めると、青色波長では、その周囲の部分とさほど変わらない光を発しています。けれど、そこを赤色波長で眺めれば(表皮近くの毛細血管ではなく)皮膚下部に流れる血液に光が吸収されて、光強度が(近傍周囲より)減少していることがわかるかと思います。…だから、赤い血が流れているはずの血管が(周囲に対して相対的に)青く見える、というわけです。
2018-08-18[n年前へ]
■スマホで「血管年齢(動脈硬化)」を写し出せ!
今日(8月18日)発売のソフトウェアデザイン 2018年9月号に4ページ記事を書きました。題して『スマホで「血管年齢(動脈硬化)」を写し出せ!』です。前回・前々回に引き続き、実行に必要なPythonコード付きで説明図文も全部含めギュッとまとめた4ページ。水に浮かべようとしても沈むこと間違い無しの高密度です。
自分の体が老化していくようすを、手元にあるスマホとプログラミングで可視化してみたい方は、読んでみて頂ければ少し面白いかも、です。
今号で書いたような人体解析は、別対象に対して色んなパターンで応用してみたいと思います。