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2011-08-16[n年前へ]

2011年夏に、人々が眺める「送り火」を見る 

 8月16日の日暮れ過ぎ、時計の針が19時30分を回る頃、街の灯りと夜空を見渡すことができる場所に行きます。なぜかと言えば、20時過ぎから、(日本の古い街のひとつ)京都の街を囲み照らす「送り火」を眺めることができるからです。

 下の写真に映っているのは、左京区浄土寺の「大文字」に次いで、点灯された松ヶ崎西山・東山の「妙法」が京都の街を照らし始めた頃、朱色の送り火を見つめる人たちです。夜の地平線を眺めている人たちは、眼下に広がる街灯りや山肌に燃えさかる文字を眺めています。

 「送り火に込められた想い」を直接見ることはできません。…直接見ることができないからこそ、送り火を眺める人たちを見れば、「送り火を眺める人たち」通して送り火を間接的に眺めれば、「送り火に込められた想い」を実感する・感じることができるように思われます。

 直接見ることができないものは、たくさんあります。…実際のところ、私達が直接目にすることができるものを数え上げてみれば…それはとても数少ないような気もします。直接見ることができないものは、私達は間接的にしか眺めることができません。けれど、間接的に眺めるのだからこそ、「見えないけれど確かなもの」を感じることができるにも思われます。

 今日見た景色は、2011年の夏、「送り火」を見つめる人々です。

2011年夏の「送り火」






2011-08-18[n年前へ]

京町家模型で確かめる打ち水の科学 

水の力と風の力で暑さの夏を吹き飛ばせ!?

 暑い毎日が続いています。その暑さを和らげて、ほんの少しでも快適に過ごすために、打ち水をして涼をとりたくなります。地面に水を撒(ま)き、暑さを和らげたくなります。

 ところで、打ち水をするとなぜ涼しく感じられるのでしょうか? まず一番最初に思いつくメカニズムが「熱せられた地面の上で撒いた水が気化する際に、周囲などから熱を奪い(気化熱)温度を下げる」というものです。しかし、この説明だけでは不十分で・いかにも(限られた範囲のことだけを考え・結論を出してしまう)視野が狭い考え方・発想であるようだ…と感じさせられたのが、次の文章です。

 京町家では居室空間の両側に庭がある。そのことが打ち水には大切な要件だと、ご夫妻(西陣帯地「渡文」当主渡邉夫妻のこと)にお教え頂いた。
 まず、その片方の庭にたっぷりと水を打つ。そうすると、そちら側だけが冷やされ、もう片方は暑いままなので、暑い方に上昇気流が発生し、結果的に、水を打った冷やされた庭から、座敷を貫通して、暑い庭へと風が流れるのだそうである。
 しばらくして水が乾いたら、こんどは反対側の庭にだけ打ち水をする。するとさっきとは反対方向の風が家の中を通っていく…その風は、どちらから吹くにしても、つねに打ち水の気化熱で冷却された空気が風となって通るので、結果的に、堪え難い暑さが、いくらか涼しく感じられるということなのだそうである。
 これは、「ひととき 2011年8号」に掲載されていたリンボウ先生小旅行記「涼をたずねて、いざ京都へ」中に書かれていた一節です。  古くから続く京都の町家は、まさにウナギの寝床のようで、入り口から最奥部の坪庭まで部屋と通路が真っ直ぐ続きます。居住空間を囲む両側に、交互に水を撒くことで(水を撒いた側の)地面とその上にある空気を冷やすだけでなく、温度差を作り・空気の密度差を作り、結果として、家の中を心地良く吹く風の流れを作る…というのです。京都の夏は風がほとんど吹きませんから、ほんの少しでも空気の流れができるだけで、夏の暑さが大きく和らぐように思われます。
 (坪庭が)果たす役割は実に多く、たとえば玄関庭の場合はお客さまを迎える場としての趣きに加え、夏場には打ち水をすることで表通りとの温度差をつくり、屋内に風を呼び込む機能もあります。

京都新聞「京都町家資料館」

 打ち水のメカニズム、水の気化熱で水を撒いた場所の冷却を行うだけでなく、打ち水を行わない場所との圧力差を作ることで風を吹かせる…という科学・工学的な仕組みは、とても素晴らしく魅力的です。というわけで、打ち水効果を実感するべく、100円ショップに行き、温度計を2個、A4サイズの透明プラスチックを2枚、セロハンテープを1個買い、総額500円ナリで「夏休みの実験工作」をしてみることにしました。「左右の”庭”に温度差を作ることで果たして風は流れるか!?」を実験し、打ち水のメカニズムを体感してみよう!というわけです。

 作ったのは、「透明な京町家模型」です。四角い筒状に透明プラスチックを組み立てて、その内部に温度計を貼り付け、さらに中を流れる風の動きがわかるように、中央部に(風鈴ならぬ)軽い発砲スチロール製の振り子をぶら下げてみました。この「透明な京町家模型」を、夕方過ぎの屋上に置いて、その片側にだけ水鉄砲で水を撒き、打ち水モデル実験をしてみたのです。

 35℃くらいに熱せられた屋上に水を蒔き観察すること10分あまり、…中に風が吹いているような気もしますが、「屋上を心地良く吹く(自然の)風」もあり、打ち水が作り出した風ではなくて、単なる実験ノイズ(自然の風)なのかもしれません(そんな屋上実験の過程を撮影したのが下に貼り付けたタイムラプス動画です)。



 そこで、実験の精度を高めるべく屋内に事件場所を移動しました。また、「透明な京町家模型」も、左右の”庭”部分に囲いを付け、周囲の風の影響を低減するように改造した上で(こうすると、まさに京町家のような構造になります)、おちょこに入れて「氷」と「沸騰させたお湯」を「左右の”庭”」に置いて、京町家模型の中に流れる風を観察してみました(下の写真)。

 実験をした結果、お湯を入れたおちょこが置かれた”庭”側からは湯気が上方に立ち上っていましたから、”庭”が(上部以外は)壁に囲まれていることを考えれば、もう片方の”庭”側から”町家内の部屋や通路”を通じて風が吹き込んでいるのだろうと判断されました(その他に風が吹き込む箇所はありませんから)。しかし、(風鈴モドキ)の発砲スチロール振り子を揺らすほどの”わかりやすく目に見える”風の動きは、残念ながら発生しませんでした*。


*『打ち水の「涼しい風」は床すれすれを這い流れると思われますので、振り子を床すれすれにおいて再挑戦してみるのはいかがでしょう?』というアドバイスを頂いています。

 もうすぐ8月が終わり、こどもたちの夏休みも終わります。けれど、残暑はまだまだ続くことでしょう。そんな残暑を気化熱で作り出した風の力で吹き飛ばす「京町家模型で確かめる打ち水の科学」を、こどもの「夏休みの実験工作」課題の題材にしてみるのはいかがでしょうか? 打ち水効果で吹く風を”目に見える”ようにする実験結果・研究結果が、将来の日本の夏を支えているかもしれません。

京町家模型で確かめる打ち水の科学京町家模型で確かめる打ち水の科学京町家模型で確かめる打ち水の科学京町家模型で確かめる打ち水の科学京町家模型で確かめる打ち水の科学






2011-10-03[n年前へ]

「ホットスポット」と「空間補間アルゴリズム」と「不確定性原理」 

 ホットスポット…それは周囲の値とかけ離れた値を持つ場所です。…そんな「ホットスポットという言葉」は、この2011年の3月以降の日本では、(残念ながら)念を押すまでも無い「当たり前の常識」となってしまいました。

 「情報」というものは限られているのが普通です。たとえば、すべての場所における情報すべてを知ることができることは希(まれ)で、通常はごく限られた場所における情報しか知ることはできません。だから、その限られた場所における情報から「すべての場所についての情報を推測する」といったことが必要になります。

 右の図は、犯罪発生密度の時空間分布図を示したものです。京都周辺で発生した「ひったくり犯罪」を”平面2軸=空間分布/高さ軸=時間分布”として表したものです。向かって左の辺りが「桂町周辺」で、右の辺りが「桃山周辺」です(さらに細かな京都ひったくり犯罪分布地図は「犯罪発生の時空間 3 次元地図― ひったくり犯罪の時空間集積の可視化 ―」を読むとわかります。京都の町に詳しい方は、この文献に収録されている”地図”を眺めてみると、その実にローカルな風景を脳裏に思い浮かべながら眺めてみれば、実に興味深いかと思います)。

 恒常的に犯罪発生が続くホットスポット領域は、積乱雲のように立ち現れますが、その一方で一時的に犯罪発生が特定の地区に集中する場合にはホットスポットは島状に浮かんでおり、2種類のホットスポットが容易に区別できます。

 こうした「ホットスポット=周りとは大きく異なる値を持つ場所」の存在と「周りの値から(値が未知の)注目する場所における値を推定するということ」はもちろん相容れません。「補間=周りの値から(値が未知の)注目する場所における値を推定するということ」は、(たいがいの場合)「周りの値と(注目点は)同じような値を持つ」という前提が置かれているわけですが、「ホットスポット」という存在は「周りとは大きく異なる値を持つ場所」であるからです。

 不確定性原理に従って、(関連する)複数のことを同時に正確に知ることはできなかったりします。「定常的な特性に関する情報」と「突発的・その瞬間の特性」の両方を共に精度高く知ることはできません。目的と手段、その両方に感度があるアンテナと技術を手にする…のが、私たち技術オタクなテクニカル・ジャンキーです。

 と、そんなことを「京都周辺のひったくり犯罪の時空間マップ」と「東日本の放射線量マップ」を見ながら、ふと考えました。…複雑なものです。

 

 「”大小”の刀を差した武士、その大小の刀をカラシニコフに置き換えれば、幕末は今のイラクでの状況と何も変わらない。それでも欧米人はビジネスチャンスを求めて幕末日本を訪れた。

 外へ外へと向かっていく、そういうエネルギーがなかったら、人類はいまだに洞窟の中で暮らしてたんだろうか。


イラクと幕末」から。

「ホットスポット」と「空間補間アルゴリズム」と「不確定性原理」






2011-12-08[n年前へ]

思い出の中のキタバチ 

 京都 北白川バッティングセンター(キタバチ)の閉店、そして、店内機材の売却などを見た方の言葉から。

 通りすがりの若いお客さんが、「キタバチがこんな賑わってるん、初めて見たわ」と呟いたのだ。僕が知っているキタバチは、いつでもお客さんが一杯だった。賑やかで楽しかった思い出しかないのだ。これが時代の流れなんだろうか。

さようなら、北白川バッティングセンター
 閉店したキタバチへ行ってきた。最終セールをやっている、という告知があったのだ。1日から4日まで、店内備品を売りつくしているらしい。今度こそ、最後のお別れだ。
 …結局僕は、ビリヤードの球を3つ買ってきた。傷だらけでタバコのヤニもついている、使い込まれた球だ。…事務所に戻ってから、ずっとこの球でカチカチ言わせて昔を思い出している。

キタバチの名残

2012-04-09[n年前へ]

「ありえない!?三条御池」や「春風にめくれるスカート」 

 『京都の街で「非ユークリッド幾何学」を体感しよう!?』や「風にめくれやすいスカート」や「ATOK用perl機能追加プラグイン」など。 from 「n年前へ

 烏丸御池から御池通りを「ひたすら真っ直ぐ」と西へ西へと進んでいくと、時代劇の撮影スタジオがあることでも有名な太秦近くに至ります。その太秦に辿り着く直前にある交差点が「三条御池」です。すなわち、東西に走る御池通りと三条通りが交差する交差点です。…何か「おかしくない?」「同じ方向に走るはずの”御池通りと三条通り”が交わることなんか不可能だよね?」と一瞬驚くわけです。
 一番、デンジャラス(スカートがめくれやすかった)のは、中学の学生服(冬服)でしたけれども(笑)。
 この学生服は、5cmくらいのプリーツで、ロング(ひざ下20cmほどはあったかしら?)でした。
 軽い・・・わけではなかったのですが、どーしてあんなに開くのか、とずっと思っていた。



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