hirax.net::inside out::2011年10月03日

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2011-10-03[n年前へ]

「ホットスポット」と「空間補間アルゴリズム」と「不確定性原理」 

 ホットスポット…それは周囲の値とかけ離れた値を持つ場所です。…そんな「ホットスポットという言葉」は、この2011年の3月以降の日本では、(残念ながら)念を押すまでも無い「当たり前の常識」となってしまいました。

 「情報」というものは限られているのが普通です。たとえば、すべての場所における情報すべてを知ることができることは希(まれ)で、通常はごく限られた場所における情報しか知ることはできません。だから、その限られた場所における情報から「すべての場所についての情報を推測する」といったことが必要になります。

 右の図は、犯罪発生密度の時空間分布図を示したものです。京都周辺で発生した「ひったくり犯罪」を”平面2軸=空間分布/高さ軸=時間分布”として表したものです。向かって左の辺りが「桂町周辺」で、右の辺りが「桃山周辺」です(さらに細かな京都ひったくり犯罪分布地図は「犯罪発生の時空間 3 次元地図― ひったくり犯罪の時空間集積の可視化 ―」を読むとわかります。京都の町に詳しい方は、この文献に収録されている”地図”を眺めてみると、その実にローカルな風景を脳裏に思い浮かべながら眺めてみれば、実に興味深いかと思います)。

 恒常的に犯罪発生が続くホットスポット領域は、積乱雲のように立ち現れますが、その一方で一時的に犯罪発生が特定の地区に集中する場合にはホットスポットは島状に浮かんでおり、2種類のホットスポットが容易に区別できます。

 こうした「ホットスポット=周りとは大きく異なる値を持つ場所」の存在と「周りの値から(値が未知の)注目する場所における値を推定するということ」はもちろん相容れません。「補間=周りの値から(値が未知の)注目する場所における値を推定するということ」は、(たいがいの場合)「周りの値と(注目点は)同じような値を持つ」という前提が置かれているわけですが、「ホットスポット」という存在は「周りとは大きく異なる値を持つ場所」であるからです。

 不確定性原理に従って、(関連する)複数のことを同時に正確に知ることはできなかったりします。「定常的な特性に関する情報」と「突発的・その瞬間の特性」の両方を共に精度高く知ることはできません。目的と手段、その両方に感度があるアンテナと技術を手にする…のが、私たち技術オタクなテクニカル・ジャンキーです。

 と、そんなことを「京都周辺のひったくり犯罪の時空間マップ」と「東日本の放射線量マップ」を見ながら、ふと考えました。…複雑なものです。

 

 「”大小”の刀を差した武士、その大小の刀をカラシニコフに置き換えれば、幕末は今のイラクでの状況と何も変わらない。それでも欧米人はビジネスチャンスを求めて幕末日本を訪れた。

 外へ外へと向かっていく、そういうエネルギーがなかったら、人類はいまだに洞窟の中で暮らしてたんだろうか。


イラクと幕末」から。

「ホットスポット」と「空間補間アルゴリズム」と「不確定性原理」