2008-03-26[n年前へ]
■「吉野家の公理」と「吉野家のパラドクス」
「吉野家の公理」というものがある。この「吉野家の公理」がはたして真実であるのかどうかは知らないけれど、少なくとも、とても自然に納得できる公理である。その内容はこのようなものだ。
次の三つの項目をすべて満たすものは、必ず売れる。「"Value""Cost""Speed"を兼ね備えていれば売れる」というのは、あまりに自明に思えるくらい、当然の話に見える。
- 旨い
- 安い
- 早い
しかし、この「吉野家の公理」は、同時にまた「吉野家のパラドクス」でもある。なぜなら、「"Value""Cost""Speed"」は、両立しないことが多いからだ。"Speed"を立てれば、"Value"が立たず、"Value"を立てれば"Cost"が立たず、あるいは……という具合に、それら3つを兼ね備えれば「必ず売れる」と言われても、そういったモノはそうそう作り出すことができないのである。だから、この「吉野家の公理」は、「必ず売れるものは、滅多にない」というようにも聞こえてしまうわけである。
とはいえ、時代や技術が何か変化したりすることで、(それ以前に比べれば)"Value""Cost""Speed"をすべて実現するブレイクスルーが生まれたりすることもあるのだろう。次に生まれくる「そんな新しい何か」はどんなものなのだろうか。
2008-03-27[n年前へ]
■「吉野家のパラドクス」と「営業の法則」
「吉野家の公理」と「吉野家のパラドクス」で書いたように、「旨い・安い・早い」を兼ね備えたものは必ず売れる。しかし、その3つをすべて持つものはほとんどない。だから、実際の商品は「旨い・安い・早い」のうち、少なくとも1つ、できれば2つを備えたものになる。
そんな実際の商品を売る作業が、営業だ。そんな営業の一面を表現する「営業の法則」を教えてもらったことがある。その「営業の法則」の1番目は、
営業の実績=訪問件数×質というものだ。訪問件数を高めれば、営業実績は上がるし、質を高めても、営業の実績は上がる、というものである。
「営業の法則」第1則
逆にいえば、質が低ければ訪問件数を多くすれば、営業実績も上がるし、訪問件数を多くできなければ、質を高めればよい、ということになる。
そして、さらに次の第2,3則がある。
営業実績が上がると「やる気」が増大する。
「営業の法則」第2則
「やる気」の増大は「件数・質」の増大を生む。面白いのは、これら第1,2,3則により、次の第4則が導かれることである。
「営業の法則」第3則
「件数or質」の増加は、乗数的な実績増加を生む訪問件数あるいは質の片方を上げると、営業実績が上がる。そのため「やる気」が増大し、「訪問件数・質」のもう片方も上がることが多い。その結果、営業実績がさらに増大する。というわけだ。「やる気」というパラメータが陰に介在していることで、「営業の実績・訪問件数・質」が互いに関わり合っていることが、意外のようで当たり前のようで、それが味わい深く面白い。この乗数効果は実はとても重要なことなのかもしれない。
「営業の法則」第4則
2009-03-27[n年前へ]
■数学好きの日本人を作り出した「塵劫記」
京都新聞のソフィアで、「誰が数学嫌いにしたのか 」の著者上野健爾の回、「江戸文化理解のために和算研究を」より。
江戸時代、多くの人たちが数学の難問を作りそれを解くことに夢中になっていた。津々浦々に数学の愛好者がいて、老若男女が身分を超えて数学を楽しんでいた。こうした現象を生んだ要因は1627年に初版が出た「塵劫記」によるところが大きい。
「塵劫記」は江戸時代を通してベストセラーとなった数学の教科書であり、美しい図と遊び心をくすぐる問題が多数含まれていた。
ソフィア 「京都新聞文化会議」 上野健璽氏 153