2010-01-30[n年前へ]
■よく知っている物事からスタートすれば…
リチャード ウィリアムズ「アニメーターズ・サバイバルキット 」の最後の頁から。
よく知っている物事からスタートすれば、知らなかった物事が明らかになってくるものだ。アニメーションを作る、アニメーター向けの本を読んでいると、私たちが認識する「世界」とはどういうものであるか、ということを少しだけわかるような気がする。言いかえれば、私たちにとっての世界というものが、一体どんな姿をしているのかを改めて認識することができるように感じる。
レンブラント、1606-1669年
本書は「教科書」というのはこういうものだ、「教科書」を作るというのはこういうことだ、ということを教えてくれる。
アカデミー賞をトリプル受賞した映画『ロジャー・ラビット(Who Framed Roger Rabbit)』のアニメーション監督が自ら解説する、実用的なアニメーション制作マニュアルの決定版。本書は、アメリカおよびヨーロッパ各国で、ウォルト・ディズニー社、PIXAR社、DreamWorks社、Blue Sky社、Warner Bros社のアニメーターたちが参加した「アニメーション・マスタークラス」に基づく内容だ。ウィリアムズは、初心者からエキスパートまで、あるいは古典的な手描きアニメーターからCGアニメの名手まで、すべてのアニメーターが必要とするアニメーションの基本原則を提供してくれる。
2012-02-26[n年前へ]
■レンブラントの「"平均"肖像画」やフェルメールの「"平均"室内画」
「美術室の黒板」は「夕日に照らされる向き」に作られる!?で書いたように、北半球にある日本では、美術室やアトリエの窓は北側に向けることが一般的です。そして、利き手が右手、つまり右利きの人は、そんな北向きの窓からの光を左に見つつ(そうしなければ、絵に利き手の影が落ちてしまいます)、絵を描くことが多いものです。
陰影を強く描いたオランダの画家、レンブラントが描いた人の顔を51枚(顔)集めて「平均画像」を作ってみました(左上)。レンブラントが描く肖像画は、左から光があたるものが多いので、左から光があてられた顔が浮かび上がっています。
西洋絵画で光が左からあてられていることが多いことには、いくつもの・そして曖昧な理由があるだろうと思います。そんな(確かとは言えないけれど)曖昧な理由の中のひとつは、画家たちのアトリエの窓が北側に面していて、そして多くの画家が右利きであった、ということだと言われています。レンブラントも、自画像のX線解析の結果から、右利きだった可能性が高いと考えられていますから、北側の窓から差し込む光を左に受けつつ絵を描いていたのでしょう。
レンブラントと同じくオランダの画家、フェルメールの絵画を思い浮かべてみても、思い出すのは左側にある窓から部屋に光が差してくる風景ばかりです(フェルメールが描いた絵の数は非常に少ないですが)。試しに、フェルメールが描いた室内風景の「平均画像」を作ってみると、それはたとえばこんな具合になります。やはり、「窓は左(北)向き」で、画家の利き手(右手)は「サウスポー(南向き)」になっています。
学校の美術室で悲しいほどに不器用な絵を描いていた私たちも、キャンバスに信じられないくらいリアルに世界を浮かび上がらせる巨匠たちも、同じく北側の窓からの光を受けつつ絵を描いていた…と考えると、何か少し面白いな、と思います。
参考:スライド・デザインにおける「上手と下手」
2014-10-04[n年前へ]
■画家の「代表色」を当てる目(色)利きゲームをしてみよう!?
4人の画家が描いた名画をGoogle画像検索で集め、画像を構成する「代表的な色」を算出して並べてみました。絵画中の画素を色度距離でクラスタリングすることで「数個」に絞る、ということを収拾した画像群にそれぞれ適用して、得られた「色」を並べた、という具合です。
画家が使う色には、その時代に使われていた絵の具の特徴や時代が好んだ色や、あるいは画家自身の好みなどを反映した特徴・個性があって、色を見れば一目瞭然に描いた画家を感じることができるに違いない…と思い並べてみましたが、一体どの時代のどんな4人が登場しているのかどうかわかるでしょうか?
ちなみに、登場している画家は、フェルメール・レンブラント・ゴッホ・ゴーギャンです。これを眺めてみると、ゴーギャンはやっぱりゴーギャンで、レンブラントもやはりレンブラント…そして、ゴッホの代表色は、変色しがちなクロムイエローがもしも変色していなかったら、どんな鮮やかな色だったろうか…とか色々想像したくなります。
2014-12-28[n年前へ]
■レンブラント・ライトをレンブラント「ユダヤの花嫁(イサクとリベカ)」に当てて3次元的に眺めてみよう!?
Raking light photography(測光線写真)と呼ばれる「側面から光を当て、美術品の凹凸を浮き上がらせるための写真」があります。そういった凹凸情報、あるいは凹凸情報を微分したような画像を使うことで、美術品の修復を行う際の参考情報にしたりします。ちょうど、17世紀の偉大な画家レンブラントが、「側面上方から光を当てる」レンブラント・ライトで被写体を描き出したのと同様に、絵画の微妙な形状や姿を映し出すのがRaking light photography(測光線写真)です。
そうした測光線写真は数多く公開されていて、たとえば、、そのレンブラントの「ユダヤの花嫁(イサクとリベカ)- "The Jewish Bride (Isaac and Rebecca)"」であれば、こんな風に公開されていたりします。
こうしたRaking light photography(測光線写真) を眺めると「私たちは3次元情報を感じる」…ということは、コンピュータにだって測光線写真から絵画の3次元情報を復元できるはず…ということで、2014年の終わり近くの今日…WebGLベースのレンブラントの「ユダヤの花嫁(イサクとリベカ)3次元風…を作ってみました。
2016-04-12[n年前へ]
■機械学習が作り出したレンブラント新作絵画を3D世界で眺めてみる!?
オランダ金融機関であるING グループとマイクロソフトが、「レンブラントの作風を表面の凹凸までコンピューターで再現する」新作品を機械学習で生成した上で、それ風のテクスチャ(3D形状)を作り出してUVインクジェットプリンタでプリントした…という”The Next Rembrandt”プロジェクトの成果が数日前に流れました。これは、レンブラントが1632年から1642年までに描いた、白い襟の黒い服を着た右向きの白人の顔の構図や配置(顔のパーツの位置関係比率)を機械学習で再現させて(色画像を眺めると”筆致を再現するスタイル行列的な処理はなされていないように見えます”)、生成された色画像の方向性(と高さ分布の対応)とレンブラントの時代の油絵において用いられていた色種毎の高さ(色重ね)ルールから作り出された画像のようです。
そこで、”The Next Rembrandt”サイトの説明用として使われている出力画像データから、レンブラントの新作を3D世界で眺めてみた例が上の画像です。こうして眺めてみると、レンブラントの新作というよりは、レンブラント風のレイアウトの画像に適当にテクスチャ(3次元形状)を付加したものにしか見えません。
しかし、それでは「そんなものはつまらない」かというと…そんなこともないような気がします。なぜならば、こういった処理は今や誰でも(多少のデータアクセスをして・少しのコードを書けば)作り出すことができるものであるからこそ、誰でも「レンブラント風の新作」を作り出すことができる(そして3D世界で”新作"絵画を眺めることもできる)…という面もあるからです。