2009-07-03[n年前へ]
■力は多くの場合、その人の思いを超えない。
北村薫の「秋の花 」から。
力は多くの場合、その人の思いを超えない。私などが老成したようにいうのはおかしいが、若いうちは尚更だと思う。力の無さからも思いの高さからでもある。
2009-08-24[n年前へ]
■評論を書いたような形をつける人
北村薫の「北村薫の創作表現講義―あなたを読む、わたしを書く (新潮選書) 」から。
前の誰かがいったことを引き、それにちょっとした常識的な反論をして、評論を書いたような形をつける人は嫌いだ。
2009-09-27[n年前へ]
■、私たちの日常にひそむささいだけれど不可思議な謎
北村薫のデビュー作、「空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書) 」の冒頭に宮部みゆきが書いた紹介文から。
ヒロインの「私」と探偵役の噺家 春桜亭円紫師匠とのやりとりを通して、私たちの日常にひそむささいだけれど不可思議な謎の中に、貴重な人生の輝きや生きてゆくことの哀しみが隠されていることを教えてくれる。そして、「解説」で引用される北村薫が単行本で書いた言葉が、次の一文。
”小説が書かれ読まれるのは、人生がただ一度であることへの抗議からだと思います”
2009-10-24[n年前へ]
■「愛は勝たない」ことが多いから「愛は勝つ」を聴く
児玉清が25人の作家にインタビューした児玉清の「あの作家に会いたい」 から北村薫の言葉。
ずいぶん前に「愛は勝つ」という歌が流行(はや)りましたが、この世の中は往々にして愛は勝たないということをみなが知っているから、あえてこの歌を聴く。
2009-11-04[n年前へ]
■きみが見つける物語
「京都市鴨川源流」を廻る「理系風デート」で紹介した何人かの作家による小話を集めた短編集である「きみが見つける物語 十代のための新名作 休日編 (角川文庫 あ 100-103) 」はシリーズになっていて何冊か出ています。、5人の作家、この「休日編」では、角田光代・恒川光太郎・万城目学・森絵都・米澤穂信という人たちが書いています。どの作家が描く世界も、切なさ・やるせなさ・楽しさ・・・あるいはたくさんの感情を与えてくれる素晴らしいものばかりです。
シリーズの一冊、「きみが見つける物語 十代のための新名作 スクール編 (角川文庫) 」では、あさのあつこ・恩田陸・加納朋子・北村薫・豊島ミホ・はやみねかおる・村上春樹というこれまた魅力的な作家たちの作品がまとめられています。先の「休日編」と同様に 藤田香織氏による紹介・解説と・各作家の作品が収められています。
「スクール」を舞台にした作品はどれも、自由さとよく自由の狭間で、はっきりとは見えない可能性の中を生きていく(生きてきた)主人公たちが描かれています。豊島ミホの「タンポポのわたげみたいだね」で始まり、村上春樹の「沈黙」を最後に置かれることで、全く別々の作家の別の作品なのに、まるで、一つのテーマを扱った短編集のようになっています。
「まだ時間は早いけれど、ビールでも飲みませんか」と少しあとで彼は言った。飲みましょう、と僕は言った。たしかにビールが飲みたいような気分だった。
村上春樹 「沈黙」
「休日編」「スクール編」ともに文庫本ですが、小さい割に、とても密度の高い本です。カバンに入れておくには、とても良い本だと思います。