hirax.net::Keywords::「印刷技術」のブログ



2006-03-21[n年前へ]

「私の個人主義」「各種メディア」 

 from n年前へ.

 「西洋人」の方ばかり向いて、尻馬にばかり乗って空騒ぎをしているようでははなはだ心元ない事だから…..

夏目漱石「私の個人主義」
 「グーテンベルグ(印刷技術)は全ての人を読者に変えた」「ゼロックス(複写機)は全ての人を出版者に変えた」「PCは全ての人を作り手に変えようとしている」「そして、インターネットは人をコメンテーターにしてしまった」

2008-03-05[n年前へ]

「広重」と「ゴッホ」について書いたこと 

 いくつかのものを並べて眺めてみたり、あるいは、まとめて平均して眺めてみた時、ようやく浮かび上がり見えてくるものがある。たとえば、安藤広重の「名所江戸百景 大はし阿たけの夕立」とゴッホが描いた"Bridge in the Rain (after Hiroshige)"をを眺めてみれば、江戸とパリで時間と距離を隔てて描かれた、けれど不思議なくらい線が重なる景色が見えてくる。そう思う。

 広重とゴッホが描いた景色をモーフィングさせた時、その景色を眺めたとき、そのモーフィング画像の中に一体何が見えるだろうか。色の違いだろうか。それとも橋の設計の違いだろうか、それとも、歩く人の気配だろうか。顔料を通して見えてくる静謐感や躍動感だろうか。

 並べて眺めることで、初めて見えてくるものの一つが「立体感」だ。ゴッホ(など)の絵画などの絵画を並べて眺めることで、立体的にゴッホが眺めた景色を私たちも見ることができたり、する。不思議なくらい、立体的に見えてきたりする。

 広重「名所江戸百景」を3Dで再現しようという、"CG"名所江戸百景を眺めてみたり、114年前にゴッホが眺めた満月を眺めみるたび、とても不思議な気持ちになる。何しろ、空間や時間を、まるで透明人間のように、自由に行き来できるように(自分が眺めることができない、けれど、他の誰かが眺めている)景色を眺めることができるのだから。

 「左下」の画像は広重の東海道五十三次の中の「由井」で、「右下」が「由比」でいつの日かに見た景色だ。長い年月を隔ててはいるけれど、多分、ほとんど同じような場所で眺めた同じような景色だ。たぶん、コンピュータで相対的な色ヒストグラムで解析でもすれば、きっと同じような景色に見える。けれど、人が眺めたら、全然違う時代の景色に見える。地形は同じだけれど、自体は全然違う景色に見える、きっと、そんな写真だと思う。
東海道五十三次今日

 静岡県 由比にある「東海道広重美術館」の入り口には「版画体験コーナー」がある。「広重の東海道五十三次の「由比」を青・赤・黒の三色の版画で再現し、三色重ね刷りすることで、浮世絵の版画(世界初のカラー印刷技術)を体験しよう」というものだ。
 色毎の位置合わせは、手でやるにせよ、機械がやるにせよ、とても難しいことだから、(色あわせに祖失敗した)「見当違い」の版画になってしうことも多い。少なくとも、私はそんな見当違いの版画を作ってしまった。けれど、そんな風に版画を作る体験はとても楽しかった。

 カラープリンタが割に一般的になった現在、プリントゴッコで浮世絵を作ったりするのも新鮮で良いと思う。消しゴム版画で浮世絵を作ったりするのも、とても面白いと思う。
一色刷二色刷完成






2009-04-01[n年前へ]

アメコミの色彩と「技術品質」と「コスト」 

 「マンガ学―マンガによるマンガのためのマンガ理論 」を読んでいると、アメリカの新聞に連載されていたカラー・マンガでは、シアン・マジェンタ・イエローの3色の濃さを100,50,20パーセントの3種類に限り、輪郭線には黒線を入れていたという。新聞紙への印刷が不安定で、出力品質が決して良い状態ではなくても、色の識別がしやすいように、使う色種(インク量)を少なく限ったという。低コスト・低技術品質の中で、「わかりやすさ」を実現しようとしたわけである。

 その結果として、アメコミの「派手な原色」「力強い輪郭線」と数少ない色種の組み合わせによる「識別の記号としての配色」という特徴が生まれたという。確かに、「ハルクの配色」「スパイダーマンの配色」・・・どの配色も似たような色が使われているはずなのに、「どのマンガ・どのヒーロー・どの悪役」であるかが、その配色を見れば不思議なほどにすぐわかる。

 「技術品質」と「コスト」のバランスから生まれた文化、というのは意外に多いのではないだろうか。たとえば、吉野家の牛丼はだってそうだ。安い肉を大量に供給するために、吉野家の牛丼のあの調理法・味が生まれている。もしかしたら、「大量に売れる文化」というものは、ほとんどすべてが「技術品質」と「コスト」のバランスの上で立っているのかもしれない。





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